NODA・MAP第25回公演 『Q』:A Night At The Kabuki(2022年再演版) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2019年に初演され、
クイーンの「ボヘミアンラプソディー」を使用して、
話題となった舞台が、
今回イギリス公演が決まったことより、
初演と同じメンバーで再演されました。
海外ツアーのため再演というのは、
蜷川幸雄さんの演出作品で良く行われていたことで、
海外への発信という意味では、
野田さんが蜷川さんの衣鉢を継いだ、
という感じがあります。
松たか子さん、広瀬すずさんを初めとして、
非常に豪華なメンバーで、
初演と同じ10人がそのまま集まったというだけで、
勿論仮押さえはあったのでしょうが、
野田さんの影響力の強さを感じさせる座組です。
初演は勿論観ているのですが、
正直あまり感心しませんでした。
次の「フェイクスピア」が野田さんの芝居の中でも、
屈指の傑作でしたから、
余計その思いは強くなります。
ただ、題名に「KABUKI」と入れたり、
クイーンの楽曲を使用したりと、
両方ともそれほど内容に強い関連のあるものではないので、
こうして再演も海外ツアーも決定したところを見れば、
野田さんの企画の勝利と言って良いようには思います。
再演のタイミングも結果的には良くて、
源平合戦を一応の「世界」として作られているので、
大河ドラマの「鎌倉殿の13人」とリンクする部分がありますし、
何より戦争で引き裂かれた恋人たちというテーマが、
今のウクライナの状況ともリンクしているのが、
さすがの予見性と見識だなあと、
感心する思いもありました。
演出は最近の作品はかなり遊眠社時代に寄せていて、
少年と少女とおもちゃという、
初期遊眠社のギミックがそのまま登場しますし、
ワルキューレが登場したり、
親子のトラウマが核になって、
違う親子を同じ役者が演じたりする趣向も、
以前から観ていた身としては懐かしい思いがします。
ただ、内容はNODA・MAP以降の、
時間が一方向に流れる年代記的なドラマになっていて、
前半は舞台は源平盛衰記に寄せながら、
ロミオとジュリエットをほぼそのままに再現し、
後半は原作とは違って生き残ってしまった2人が、
今度は戦争に翻弄されて死を迎えるまでが描かれるので、
野田さんの作品の中でも、
かなり長いなあ、という印象を持ちます。
初演の感想でも書いたのですが、
主役2人の青年期と中年期を、
それぞれ2人の役者さんに演じさせるのですね。
それがどうも中途半端な印象があって、
少なくとも松たか子さんに関しては、
青年期と中年期の両方を普通に演じられると思うのですね。
それが出来るのが映像ならぬ演劇の妙味であると思うのに、
役柄を2つに割ってしまっているので、
とても勿体ない感じがして仕方がありません。
若い2人はいつまでも若いままですし、
中年の2人はいつまでも中年もままなので、
時間軸が常に一方向にしか流れておらず、
野田さんの芝居に特徴的な時空を無視した跳躍感のようなものが、
結果として封印されてしまった感じが否めません。
そんな訳で個人的には失敗作だと感じる本作ですが、
舞台面は常に華やかで、華のある役者の競演も楽しく、
野田さんもかつての当たり役の1つであった「おばさん役」を、
楽しそうに演じていましたから、
まずは楽しく元は取った、
という気分で劇場を後にすることが出来ました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2019年に初演され、
クイーンの「ボヘミアンラプソディー」を使用して、
話題となった舞台が、
今回イギリス公演が決まったことより、
初演と同じメンバーで再演されました。
海外ツアーのため再演というのは、
蜷川幸雄さんの演出作品で良く行われていたことで、
海外への発信という意味では、
野田さんが蜷川さんの衣鉢を継いだ、
という感じがあります。
松たか子さん、広瀬すずさんを初めとして、
非常に豪華なメンバーで、
初演と同じ10人がそのまま集まったというだけで、
勿論仮押さえはあったのでしょうが、
野田さんの影響力の強さを感じさせる座組です。
初演は勿論観ているのですが、
正直あまり感心しませんでした。
次の「フェイクスピア」が野田さんの芝居の中でも、
屈指の傑作でしたから、
余計その思いは強くなります。
ただ、題名に「KABUKI」と入れたり、
クイーンの楽曲を使用したりと、
両方ともそれほど内容に強い関連のあるものではないので、
こうして再演も海外ツアーも決定したところを見れば、
野田さんの企画の勝利と言って良いようには思います。
再演のタイミングも結果的には良くて、
源平合戦を一応の「世界」として作られているので、
大河ドラマの「鎌倉殿の13人」とリンクする部分がありますし、
何より戦争で引き裂かれた恋人たちというテーマが、
今のウクライナの状況ともリンクしているのが、
さすがの予見性と見識だなあと、
感心する思いもありました。
演出は最近の作品はかなり遊眠社時代に寄せていて、
少年と少女とおもちゃという、
初期遊眠社のギミックがそのまま登場しますし、
ワルキューレが登場したり、
親子のトラウマが核になって、
違う親子を同じ役者が演じたりする趣向も、
以前から観ていた身としては懐かしい思いがします。
ただ、内容はNODA・MAP以降の、
時間が一方向に流れる年代記的なドラマになっていて、
前半は舞台は源平盛衰記に寄せながら、
ロミオとジュリエットをほぼそのままに再現し、
後半は原作とは違って生き残ってしまった2人が、
今度は戦争に翻弄されて死を迎えるまでが描かれるので、
野田さんの作品の中でも、
かなり長いなあ、という印象を持ちます。
初演の感想でも書いたのですが、
主役2人の青年期と中年期を、
それぞれ2人の役者さんに演じさせるのですね。
それがどうも中途半端な印象があって、
少なくとも松たか子さんに関しては、
青年期と中年期の両方を普通に演じられると思うのですね。
それが出来るのが映像ならぬ演劇の妙味であると思うのに、
役柄を2つに割ってしまっているので、
とても勿体ない感じがして仕方がありません。
若い2人はいつまでも若いままですし、
中年の2人はいつまでも中年もままなので、
時間軸が常に一方向にしか流れておらず、
野田さんの芝居に特徴的な時空を無視した跳躍感のようなものが、
結果として封印されてしまった感じが否めません。
そんな訳で個人的には失敗作だと感じる本作ですが、
舞台面は常に華やかで、華のある役者の競演も楽しく、
野田さんもかつての当たり役の1つであった「おばさん役」を、
楽しそうに演じていましたから、
まずは楽しく元は取った、
という気分で劇場を後にすることが出来ました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。