SSブログ

タバコとコーヒーの不思議な関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ニコチンとコーヒーの不思議な関係.jpg
Neuropharmacology誌に、
2022年6月27日ウェブ掲載された、
タバコとコーヒーとの関連を示唆する、
基礎研究の論文です。

タバコとコーヒーは以前は嗜好品の代表で、
徹夜でコーヒーをじゃんじゃん飲み、
タバコを多量に吸って仕事をする、
というのが、ハードな仕事をしているサラリーマンの、
典型的な姿でもありました。

タバコに含まれるニコチンも、
コーヒーに含まれるカフェインも、
共に脳を刺激して集中力を高め、
眠気を抑制するような効果があるので、
それを共に摂取することは、
徹夜の仕事などには効果的であったのです。

しかし、タバコは身体に有害な多くの作用を持っていて、
それが明らかになるにつれ、
喫煙は科学的には止めるべき習慣であることが、
今では常識となっています。

一方でコーヒーについては2012年のNew Englannd…の論文発表以降、
健康に良い多くの効果があることが確認されています。

つまり、以前は共通に語られることの多かったコーヒーとタバコは、
健康への効果という面では、
大きく明暗を分けることになったのです。

ところで…

コーヒーとタバコの相性の良さは、
単純に習慣的なものなのでしょうか?

たとえば、朝起きて一服目のタバコは、
コーヒーと一緒でないと美味しくない、
というような意見があります。

こうした喫煙者の感想からは、
タバコとコーヒーの脳への影響の間に、
何らかの科学的な関連があることが想定されます。

それは一体何なのでしょうか?

タバコに含まれるニコチンの依存性は、
ニコチンが脳で結合するα4β2というニコン受容体の働きによる、
ということが分かっています。
この受容体にニコチンが結合すると、
ドーパミンという一種の脳内麻薬が放出されて、
それが喫煙に伴うある種の快感を生み出しているのです。

今回の研究では培養細胞にこのタイプの受容体を発現させ、
そこにコーヒー由来の抽出物を反応させて、
その効果をみる実験が行われています。

その結果、コーヒー由来の抽出物により、
高感受性のα4β2ニコチン受容体は抑制される一方で、
低感受性のα4β2ニコチン受容体は刺激される、
ということが分かりました。

ここからは論文筆者の推論になります。

喫煙によるニコチンの依存のある喫煙者では、
高感受性のニコチン受容体がより多く発現し、
ニコチンに非常に敏感な状態となっています。
そこでコーヒーを飲むと、
高感受性のニコチン受容体が抑制されるので、
喫煙への渇望が和らげられ、
精神的に安定した状態で、
喫煙が可能となる状態が想定されるのです。

つまり、朝コーヒーと一緒にタバコを吸うと心地良いのは、
過剰なニコチン感受性が抑えられることにより、
脳のバランスが安定するためと考えられる訳です。

この知見は現状ではそこまでのものですが、
このメカニズムは禁煙治療にも有効と考えられますから、
コーヒーの抽出物を上手く利用することで、
より効果的な禁煙治療の可能性が、
開けることになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)