新型コロナと他疾患の予後比較(2022年から24年アメリカの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年1月27日付で掲載された、
同時期に流行した新型コロナと季節性インフルエンザ、RSウイルス感染症の、
重症度を比較した論文です。
今は所謂風邪症状を呈するウイルス感染症の流行期で、
多くの種類のウイルス感染症が流行しています。
その中には簡単に検査で診断が可能なものもあり、
健康保険の診療では、
検査などの診断は困難なものもあります。
季節性インフルエンザウイルスによる感染症と、
COVID-19ウイルスによる新型コロナ感染症、
小児や高齢者に呼吸器症状を起こすRSウイルス感染症は、
抗原検査である程度診断が可能な、
冬に流行するウイルス感染症の代表です。
それでは、実際に今この3種類のウイルス感染症に罹患した場合、
最も重症化し易いのがどのウイルスでしょうか?
新型コロナウイルス感染症は、
確かに2020年から21年くらいの時期には、
季節性インフルエンザやRSウイルス感染症よりも、
重症化のリスクが高い感染症でした。
ただ、その後徐々に症状は軽症化し、
実際の診療での印象としては、
インフルエンザ感染よりも、
患者さんの症状は軽いことが多いと思います。
これは新型インフルエンザによる感染症など、
他のウイルス感染症でも同じですが、
人間の側に免疫のない状態で、
新種のウイルス感染が流行すると、
感染自体も爆発的に広がりますし、
その重症度も高く、予後も悪いことが通常です。
しかし、それから数年が過ぎて、
ほぼ全員が一度は感染を経験するかワクチンによる免疫を得て、
感染拡大も爆発的なものではなくなると、
流行自体は定期的に起こるものの、
その重症度は軽いものとなることが多いのです。
今回の研究はアメリカにおいて、
退役軍人の医療保険のデータを活用することで、
2022年の秋から2023年の春のシーズンと、
2023年の秋から2024年の春のシーズンの、
2つの時期に流行した、
新型コロナウイルス感染症、季節性インフルエンザ感染症、
RSウイルス感染症の、
3種類の感染罹患者の重症度の比較を行っています。
その結果は以下のようになっています。
まず2022年から2023年のシーズンでは、
3種類のウイルス感染の罹患者は68581名が同定されていて、
内訳は9.1%の6239名がRSウイルス感染症、
24.7%の16947名が季節性インフルエンザ感染症、
66.2%の45395名が新型コロナウイルス感染症でした。
2023年から2024年のシーズでは、
全体で72939名の患者が同定されていて、
13.4%の9748名がRSウイルス感染症、
26.4%の19242名が季節性インフルエンザ感染症、
60.3%の43949名が新型コロナウイルス感染症でした。
対象者の性質上、
年齢の中央値は66歳で、男性が87.0%でした。
重症化の指標として、
30日以内の入院のリスクを比較してみると、
2023年から24年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症では16.2%、
季節性インフルエンザ感染症では16.3%とほぼ同一であった一方、
RSウイルス感染症は14.3%と入院リスクは低い傾向が認められました。
30日以内の死亡リスクの比較では、
2022年から23年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が1.0%、
季節性インフルエンザが0.7%、RSウイルス感染症が0.7%と、
その差は僅かではあるものの、
新型コロナウイルス感染症で生命予後が悪い傾向があり、
2023から2024年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が0.9%、
季節性インフルエンザが0.7%、RSウイルス感染症が0.7%と、
これも微妙ですが、
新型コロナウイルス感染症がより軽症化していることが示唆されました。
ただ、180日以内の死亡リスクを指標とすると、
2022年から23年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が3.1%、
季節性インフルエンザが2.1%、RSウイルス感染症が2.1%と、
こちらもその差は僅かではあるものの、
新型コロナウイルス感染症で生命予後が悪い傾向があり、
2023から2024年のシーズンでも、
新型コロナウイルス感染症が2.9%、
季節性インフルエンザが2.3%、RSウイルス感染症が2.1%と、
その傾向は変わっておらず、
より長期の生命予後では、
他の2種の感染症と比較して、
新型コロナウイルス感染症の生命予後が悪いことが、
明確になっている傾向は認められました。
このように、
トータルには軽症化をしているものの、
冬に流行する風邪症候群のウイルスの中で、
生命予後において最も注意が必要であるのは、
2023から24年の時期においても、
新型コロナウイルス感染症であることは間違いがなく、
その診断や治療方針について判断する上で、
こうした検証が定期的に行われることは、
非常に重要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年1月27日付で掲載された、
同時期に流行した新型コロナと季節性インフルエンザ、RSウイルス感染症の、
重症度を比較した論文です。
今は所謂風邪症状を呈するウイルス感染症の流行期で、
多くの種類のウイルス感染症が流行しています。
その中には簡単に検査で診断が可能なものもあり、
健康保険の診療では、
検査などの診断は困難なものもあります。
季節性インフルエンザウイルスによる感染症と、
COVID-19ウイルスによる新型コロナ感染症、
小児や高齢者に呼吸器症状を起こすRSウイルス感染症は、
抗原検査である程度診断が可能な、
冬に流行するウイルス感染症の代表です。
それでは、実際に今この3種類のウイルス感染症に罹患した場合、
最も重症化し易いのがどのウイルスでしょうか?
新型コロナウイルス感染症は、
確かに2020年から21年くらいの時期には、
季節性インフルエンザやRSウイルス感染症よりも、
重症化のリスクが高い感染症でした。
ただ、その後徐々に症状は軽症化し、
実際の診療での印象としては、
インフルエンザ感染よりも、
患者さんの症状は軽いことが多いと思います。
これは新型インフルエンザによる感染症など、
他のウイルス感染症でも同じですが、
人間の側に免疫のない状態で、
新種のウイルス感染が流行すると、
感染自体も爆発的に広がりますし、
その重症度も高く、予後も悪いことが通常です。
しかし、それから数年が過ぎて、
ほぼ全員が一度は感染を経験するかワクチンによる免疫を得て、
感染拡大も爆発的なものではなくなると、
流行自体は定期的に起こるものの、
その重症度は軽いものとなることが多いのです。
今回の研究はアメリカにおいて、
退役軍人の医療保険のデータを活用することで、
2022年の秋から2023年の春のシーズンと、
2023年の秋から2024年の春のシーズンの、
2つの時期に流行した、
新型コロナウイルス感染症、季節性インフルエンザ感染症、
RSウイルス感染症の、
3種類の感染罹患者の重症度の比較を行っています。
その結果は以下のようになっています。
まず2022年から2023年のシーズンでは、
3種類のウイルス感染の罹患者は68581名が同定されていて、
内訳は9.1%の6239名がRSウイルス感染症、
24.7%の16947名が季節性インフルエンザ感染症、
66.2%の45395名が新型コロナウイルス感染症でした。
2023年から2024年のシーズでは、
全体で72939名の患者が同定されていて、
13.4%の9748名がRSウイルス感染症、
26.4%の19242名が季節性インフルエンザ感染症、
60.3%の43949名が新型コロナウイルス感染症でした。
対象者の性質上、
年齢の中央値は66歳で、男性が87.0%でした。
重症化の指標として、
30日以内の入院のリスクを比較してみると、
2023年から24年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症では16.2%、
季節性インフルエンザ感染症では16.3%とほぼ同一であった一方、
RSウイルス感染症は14.3%と入院リスクは低い傾向が認められました。
30日以内の死亡リスクの比較では、
2022年から23年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が1.0%、
季節性インフルエンザが0.7%、RSウイルス感染症が0.7%と、
その差は僅かではあるものの、
新型コロナウイルス感染症で生命予後が悪い傾向があり、
2023から2024年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が0.9%、
季節性インフルエンザが0.7%、RSウイルス感染症が0.7%と、
これも微妙ですが、
新型コロナウイルス感染症がより軽症化していることが示唆されました。
ただ、180日以内の死亡リスクを指標とすると、
2022年から23年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が3.1%、
季節性インフルエンザが2.1%、RSウイルス感染症が2.1%と、
こちらもその差は僅かではあるものの、
新型コロナウイルス感染症で生命予後が悪い傾向があり、
2023から2024年のシーズンでも、
新型コロナウイルス感染症が2.9%、
季節性インフルエンザが2.3%、RSウイルス感染症が2.1%と、
その傾向は変わっておらず、
より長期の生命予後では、
他の2種の感染症と比較して、
新型コロナウイルス感染症の生命予後が悪いことが、
明確になっている傾向は認められました。
このように、
トータルには軽症化をしているものの、
冬に流行する風邪症候群のウイルスの中で、
生命予後において最も注意が必要であるのは、
2023から24年の時期においても、
新型コロナウイルス感染症であることは間違いがなく、
その診断や治療方針について判断する上で、
こうした検証が定期的に行われることは、
非常に重要であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
毎日の歩数とうつ病リスク(2024年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Network Open誌に、
2024年12月2日付で掲載された、
毎日の歩数とうつ病のリスクとの関係についての論文です。
毎日の歩数と健康との間には関連があり、
1日5000歩から8000歩くらいの歩行習慣により、
心血管疾患の予防効果や、
総死亡リスクの低下が確認されることは、
国内外の精度の高い疫学データにより、
ほぼ実証されている事項です。
ただ、うつ病などの精神疾患においても、
運動療法に一定の有効性のあることは分かっていますが、
毎日の歩数とうつ病リスクとの関係については、
まだあまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究では、
これまでの臨床研究のデータをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析の手法により、
毎日の歩数とうつ病リスクとの関係を検証しています。
複数の研究のデータを比較するため、
うつ病の症状を、
標準化平均差(SMD)という指標で数値化し、
SMDの変化が大きいほど改善度が大きいと判断しています。
効果量は-0.20が少、-0.50が中、-0.80が大、
というのが大まかな目安です。
これまでの33の観察研究に含まれる、
トータルで96173名の患者データをまとめて解析したところ、
1日5000歩未満しか歩いていない場合と比較して、
1日5000から7499歩歩いている人は-0.17(95%CI:-0.30から-0.04)、
1日7500から9999歩歩いている人は-0.27(95%CI:-0.43から-0.11)、
1日10000歩以上歩いている人は-0.26(95%CI:-0.38から-0.14)、
それぞれSMDが有意に低下していました。
つまり1日5000歩以上歩いている人は、
うつ病の症状が軽く、
その変化は1日7500歩以上でより明確化している、
という言い方が可能です。
また前向きコホート研究という、
今回抽出した研究の中では精度の高いデータでの推計では、
1日7000歩未満しか歩いていない場合と比較して、
7000歩以上歩いている人では、
うつ病のリスクが31%(95%CI:0.62 から0.77)低下していて、
1日1000歩歩数を増やすと、
うつ病のリスクは9%(95%CI:0.87から0.94)低下すると推算されました。
このように、
1日の歩数が5000から7000歩以上と、
増加するにつれてうつ病のリスク低下が認められていて、
その影響は軽微なものではありますが、
決して無視すべきものではなく、
特に軽症のうつ状態を悪化させないために、
ウォーキングを含めた運動での対応は、
重要な選択肢となるような気がします。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Network Open誌に、
2024年12月2日付で掲載された、
毎日の歩数とうつ病のリスクとの関係についての論文です。
毎日の歩数と健康との間には関連があり、
1日5000歩から8000歩くらいの歩行習慣により、
心血管疾患の予防効果や、
総死亡リスクの低下が確認されることは、
国内外の精度の高い疫学データにより、
ほぼ実証されている事項です。
ただ、うつ病などの精神疾患においても、
運動療法に一定の有効性のあることは分かっていますが、
毎日の歩数とうつ病リスクとの関係については、
まだあまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究では、
これまでの臨床研究のデータをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析の手法により、
毎日の歩数とうつ病リスクとの関係を検証しています。
複数の研究のデータを比較するため、
うつ病の症状を、
標準化平均差(SMD)という指標で数値化し、
SMDの変化が大きいほど改善度が大きいと判断しています。
効果量は-0.20が少、-0.50が中、-0.80が大、
というのが大まかな目安です。
これまでの33の観察研究に含まれる、
トータルで96173名の患者データをまとめて解析したところ、
1日5000歩未満しか歩いていない場合と比較して、
1日5000から7499歩歩いている人は-0.17(95%CI:-0.30から-0.04)、
1日7500から9999歩歩いている人は-0.27(95%CI:-0.43から-0.11)、
1日10000歩以上歩いている人は-0.26(95%CI:-0.38から-0.14)、
それぞれSMDが有意に低下していました。
つまり1日5000歩以上歩いている人は、
うつ病の症状が軽く、
その変化は1日7500歩以上でより明確化している、
という言い方が可能です。
また前向きコホート研究という、
今回抽出した研究の中では精度の高いデータでの推計では、
1日7000歩未満しか歩いていない場合と比較して、
7000歩以上歩いている人では、
うつ病のリスクが31%(95%CI:0.62 から0.77)低下していて、
1日1000歩歩数を増やすと、
うつ病のリスクは9%(95%CI:0.87から0.94)低下すると推算されました。
このように、
1日の歩数が5000から7000歩以上と、
増加するにつれてうつ病のリスク低下が認められていて、
その影響は軽微なものではありますが、
決して無視すべきものではなく、
特に軽症のうつ状態を悪化させないために、
ウォーキングを含めた運動での対応は、
重要な選択肢となるような気がします。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
薬と認知症との関連(2025年システマティックレビュー) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions 誌に、
2025年1月付で掲載された、
認知症のリスクと薬剤との関連についての論文です。
認知症の治療薬は、
最近新薬の抗体製剤なども導入され、
一定の進歩を続けていますが、
まだまだ根治へのハードルは高いのが実際です。
また新規に開発される新薬は、
非常に高価なものになるという問題もあります。
そこでこうした難治性の病気の場合に注目されるのが、
現時点で使用されている薬剤や、
ワクチンなどの医療行為と、
認知症リスクとの関連です。
従来の他の疾患に対する治療が、
認知症の予防や治療にも有効であるとすれば、
経済的な側面からも、
意義のある治療となる可能性があるからです。
今回の論文では、
これまでの薬物やその他の医学的治療と、
認知症リスクとの関連を調べたデータを、
まとめて俯瞰的に検証する、
システマティックレビューという手法を用いて、
この問題の現時点での検証を行っています。
対象となっているのは、
従来の治療と認知症リスクとの関連を検証した14の臨床研究に含まれる、
トータルで1億3000万人を超えるビックデータです。
解析の結果、
まず認知症リスクを低下させていたのは、
抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬、一部の降圧剤の使用と、ワクチン接種で、
このことは認知症の進行が、
細菌やウイルスの感染と、それに伴う組織に炎症に、
関連している可能性を示唆するものです。
一方で抗精神病薬や抗うつ薬、一部の降圧剤や糖尿病治療薬の使用と、
認知症リスクの増加との間に関連がある、
とするデータも複数報告されていました。
ただ、慢性疾患の病態自体が、
認知症リスクと関連していた可能性も否定は出来ず、
本当に薬がリスク増加に繋がっているのか、
という点についてはまだ検証が必要と考えられました。
今回のようなデータを精査した上で、
法外な新薬に頼ることなく、
認知症の予防と治療が可能となるような、
診療の進歩が得られることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions 誌に、
2025年1月付で掲載された、
認知症のリスクと薬剤との関連についての論文です。
認知症の治療薬は、
最近新薬の抗体製剤なども導入され、
一定の進歩を続けていますが、
まだまだ根治へのハードルは高いのが実際です。
また新規に開発される新薬は、
非常に高価なものになるという問題もあります。
そこでこうした難治性の病気の場合に注目されるのが、
現時点で使用されている薬剤や、
ワクチンなどの医療行為と、
認知症リスクとの関連です。
従来の他の疾患に対する治療が、
認知症の予防や治療にも有効であるとすれば、
経済的な側面からも、
意義のある治療となる可能性があるからです。
今回の論文では、
これまでの薬物やその他の医学的治療と、
認知症リスクとの関連を調べたデータを、
まとめて俯瞰的に検証する、
システマティックレビューという手法を用いて、
この問題の現時点での検証を行っています。
対象となっているのは、
従来の治療と認知症リスクとの関連を検証した14の臨床研究に含まれる、
トータルで1億3000万人を超えるビックデータです。
解析の結果、
まず認知症リスクを低下させていたのは、
抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬、一部の降圧剤の使用と、ワクチン接種で、
このことは認知症の進行が、
細菌やウイルスの感染と、それに伴う組織に炎症に、
関連している可能性を示唆するものです。
一方で抗精神病薬や抗うつ薬、一部の降圧剤や糖尿病治療薬の使用と、
認知症リスクの増加との間に関連がある、
とするデータも複数報告されていました。
ただ、慢性疾患の病態自体が、
認知症リスクと関連していた可能性も否定は出来ず、
本当に薬がリスク増加に繋がっているのか、
という点についてはまだ検証が必要と考えられました。
今回のようなデータを精査した上で、
法外な新薬に頼ることなく、
認知症の予防と治療が可能となるような、
診療の進歩が得られることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「敵」(吉田大八監督 映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

筒井康隆さんが64歳の時に執筆した原作を、
吉田大八監督が脚本演出し、
長塚京三さんを初めとして、
理想的なキャストが揃った映画版を観ました。
これはなかなかの傑作で、
吉田大八監督の代表作の1つであることは間違いありません。
昔の勅使河原宏監督やブニュエルみたいな感じ。
不条理な悪夢の世界は懐かしさを感じますが、
きちんと現代にリニューアルされていて、
今製作した意味も感じさせる力作でした。
ただ、クライマックスは少し弱いかな、という感じ。
スケール感というよりも、
もっと強烈な場面というか、
この映画を代表するようなカットが、
そこにあると良かったのではないか、
という思いはありました。
先に筒井さんの原作は読んでいたのですが、
読んだのは比較的最近です。
筒井さんの作品には、
リアルタイムで本当に影響を受け、
こんなに面白い小説があるのかと思ったものですが、
文学に傾斜して物語を破壊するようになってから、
オヤオヤという感じになり、
例の断筆宣言から復活以降は、
殆ど作品を読んでいませんでした。
「敵」は随所に懐かしい雰囲気があり、
1人暮らしの老人の緻密な生活描写はさすが、
という感じがあったのですが、
後半は漱石の「夢十夜」のような、
妄想や幻想に彩られた夢の断片が、
そのまま提示されるという感じで、
「敵」という題名ですし、
もっと「敵」という存在が大きくなるのかと、
やや期待して読み進むと、
肩透かしを感じる読後感でした。
吉田大八監督は、
三島さんの「美しい星」にしても、
「騙し絵の牙」にしても、
その作者の作品としては、
失礼ながらあまり上出来とは言えない作品を選択して、
それを自由自在に改変し、
原作とは別物の、
吉田イズムの横溢した作品にするのが得意です。
今回の「敵」もその例に漏れず、
筒井さんの作品としてはやや散漫でボンヤリした印象の原作を、
老人が老いらくの恋から人生に転落する、
という原作には欠片もない要素を付加して、
古典的なお話としての筋を通し、
後は自由自在に妄想と悪夢の世界に遊んでいます。
それでいて、
ラストの「春になれば…」という台詞は、
原作そのままのテイストで残して、
原作へもきちんと仁義を切っているのがさすがです。
「美しい星」はトンデモ要素もあって微妙ですが、
「騙し絵の牙」と今回の「敵」は、
明らかに原作より面白く
優れた映画になっている点が凄いのです。
これが作者の自信作や代表作であれば、
反発が予想されるところですが、
吉田監督はその点がとてもクレヴァーで、
その作家の微妙な作品を巧みにチョイスしているのです。
「愛読書」のような言い方をしているのは、
明らかな社交辞令だと個人的には思っています。
今回の作品が見事なのは、
原作の改変が全て上手く機能している点にあって、
連載が打ち切られる話も、
バーの女の子からお金をせびられる話も、
亡くなった奥さんがパリに行きたがっていたり、
納屋に潜んでいる戦争の記憶であるとか、
空井戸に男の死体を落とす話とか、
プルーストの作品にある鴨料理の再現など、
印象的なパートの全ては原作にないものなのに、
お話の雰囲気を壊すことなく、
一種の機能美を確立している点が凄いと思います。
原作の「敵」はパソコン通信で登場するのですが、
それをメールにして、
途中でうっかりリンクを踏んだことで、
パソコンが動かなくなってしまい、
遺書が手書きになる、
という趣向が鮮やかですし、
食事の場面を丁寧に描写しているので、
後半それがカップ麺になる、
という辺りも残酷さを感じさせるのです。
こうした趣向も勿論映画のオリジナルです。
この映画の成功の第一は、
何といってもキャストにあって、
主人公の長塚さんは、
まさにこの役のために生まれて来た、
と観ている間は思えてしまうくらいの絶妙さですし、
その演技もまた格別でした。
それを取り囲む女優陣3人がまた凄くて、
その役以外考えられないくらいの嵌まりぶりでした。
美しいモノクロ映像の魅惑を含めて、
映画の魅力に心から浸ることの出来る逸品でした。
お勧めです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

筒井康隆さんが64歳の時に執筆した原作を、
吉田大八監督が脚本演出し、
長塚京三さんを初めとして、
理想的なキャストが揃った映画版を観ました。
これはなかなかの傑作で、
吉田大八監督の代表作の1つであることは間違いありません。
昔の勅使河原宏監督やブニュエルみたいな感じ。
不条理な悪夢の世界は懐かしさを感じますが、
きちんと現代にリニューアルされていて、
今製作した意味も感じさせる力作でした。
ただ、クライマックスは少し弱いかな、という感じ。
スケール感というよりも、
もっと強烈な場面というか、
この映画を代表するようなカットが、
そこにあると良かったのではないか、
という思いはありました。
先に筒井さんの原作は読んでいたのですが、
読んだのは比較的最近です。
筒井さんの作品には、
リアルタイムで本当に影響を受け、
こんなに面白い小説があるのかと思ったものですが、
文学に傾斜して物語を破壊するようになってから、
オヤオヤという感じになり、
例の断筆宣言から復活以降は、
殆ど作品を読んでいませんでした。
「敵」は随所に懐かしい雰囲気があり、
1人暮らしの老人の緻密な生活描写はさすが、
という感じがあったのですが、
後半は漱石の「夢十夜」のような、
妄想や幻想に彩られた夢の断片が、
そのまま提示されるという感じで、
「敵」という題名ですし、
もっと「敵」という存在が大きくなるのかと、
やや期待して読み進むと、
肩透かしを感じる読後感でした。
吉田大八監督は、
三島さんの「美しい星」にしても、
「騙し絵の牙」にしても、
その作者の作品としては、
失礼ながらあまり上出来とは言えない作品を選択して、
それを自由自在に改変し、
原作とは別物の、
吉田イズムの横溢した作品にするのが得意です。
今回の「敵」もその例に漏れず、
筒井さんの作品としてはやや散漫でボンヤリした印象の原作を、
老人が老いらくの恋から人生に転落する、
という原作には欠片もない要素を付加して、
古典的なお話としての筋を通し、
後は自由自在に妄想と悪夢の世界に遊んでいます。
それでいて、
ラストの「春になれば…」という台詞は、
原作そのままのテイストで残して、
原作へもきちんと仁義を切っているのがさすがです。
「美しい星」はトンデモ要素もあって微妙ですが、
「騙し絵の牙」と今回の「敵」は、
明らかに原作より面白く
優れた映画になっている点が凄いのです。
これが作者の自信作や代表作であれば、
反発が予想されるところですが、
吉田監督はその点がとてもクレヴァーで、
その作家の微妙な作品を巧みにチョイスしているのです。
「愛読書」のような言い方をしているのは、
明らかな社交辞令だと個人的には思っています。
今回の作品が見事なのは、
原作の改変が全て上手く機能している点にあって、
連載が打ち切られる話も、
バーの女の子からお金をせびられる話も、
亡くなった奥さんがパリに行きたがっていたり、
納屋に潜んでいる戦争の記憶であるとか、
空井戸に男の死体を落とす話とか、
プルーストの作品にある鴨料理の再現など、
印象的なパートの全ては原作にないものなのに、
お話の雰囲気を壊すことなく、
一種の機能美を確立している点が凄いと思います。
原作の「敵」はパソコン通信で登場するのですが、
それをメールにして、
途中でうっかりリンクを踏んだことで、
パソコンが動かなくなってしまい、
遺書が手書きになる、
という趣向が鮮やかですし、
食事の場面を丁寧に描写しているので、
後半それがカップ麺になる、
という辺りも残酷さを感じさせるのです。
こうした趣向も勿論映画のオリジナルです。
この映画の成功の第一は、
何といってもキャストにあって、
主人公の長塚さんは、
まさにこの役のために生まれて来た、
と観ている間は思えてしまうくらいの絶妙さですし、
その演技もまた格別でした。
それを取り囲む女優陣3人がまた凄くて、
その役以外考えられないくらいの嵌まりぶりでした。
美しいモノクロ映像の魅惑を含めて、
映画の魅力に心から浸ることの出来る逸品でした。
お勧めです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
コーヒーとお茶の頭頚部がんリスクとの関連 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Cancer誌に2024年12月23日付で掲載された、
コーヒーとお茶を飲む習慣と、
頭頚部がんのリスクとの関連についての論文です。
頭頚部がんというのは、
口腔、咽頭、喉頭など、
口から咽喉周辺のがんの総称で、
色々な定義がありますが、
今回の論文では、
口腔、中咽頭、下咽頭、喉頭のがんの総称として、
その言葉が使用されています。
頭頚部がんはアルコールや喫煙が、
その発症リスクとなることが知られています。
つまり、その部位に接触する飲み物や煙などの影響を、
大きく受ける可能性がある訳です。
コーヒーやお茶(今回の場合は主に紅茶)には、
多くの生理活性物質が含有され、
一部のがんに対する予防効果の報告もあります。
ただ、飲み物の影響が大きいと想定される頭頚部がんについて、
コーヒーとお茶の影響についてはあまり明確なことが分かっていません。
今回の研究は世界規模で調査されている、
頭頚部がんの疫学研究のデータを活用して、
コーヒーやお茶を飲む習慣と、
頭頚部がんリスクとの関連を検証しているものです。
これは同様の研究結果が2010年にも論文化されていて、
一定の予防効果が確認されていたのですが、
その後のデータを含めて再度検証しているものです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20570908/
これまでの14の疫学研究に含まれる、
9548例の頭頚部がんの事例を、
15783名のコントロールと比較して検証したところ、
コーヒーを飲まない人と比較して、
毎日カフェインを含むコーヒーを4杯以上飲んでいる人は、
頭頚部がんのリスクが17%(95%CI: 0.69から1.00)低下している傾向があり、
個別の部位のがん毎の解析では、
口腔がんのリスクが30%(95%CI:0.55から0.89)、
中咽頭がんのリスクが22%(95%CI: 0.61から0.99)、
それぞれ有意に低下していました。
同様に毎日カフェインを含むコーヒーを、
1日3から4杯飲んでいる人は、飲まない人と比較して、
下咽頭がんのリスクが41%(95%CI:0.39から0.91)、
有意に低下していました。
また、口腔がんのリスクは、
カフェインを含まないコーヒーを飲まない人と比較して飲む人では、
25%(95%CI: 0.64から0.87)有意に低下していました。
ただ、1日0から1杯飲む人ではリスク低下があった一方で、
1杯以上飲む人では有意なリスク低下はなく、
データの解釈はかなり微妙です。
一方でお茶についての解析では、
お茶を飲む人は飲まない人と比較して、
下咽頭がんのリスクが29%(95%CI:0.59から0.87)、
有意に低下していました。
ただ、1日に0から1杯飲む人では、
頭頚部がんのリスクが9%(95%CI:0.84から0.98)、
下咽頭がんのリスクが27%(95%CI:0.59から0.91)、
有意に低下していた一方で、
1日にお茶を1杯を超えて飲む人では、
喉頭がんのリスクが38%(95%CI:1.09から1.74)、
有意に増加していました。
このようにデータは解釈が難しい面があるのですが、
概ねコーヒーを飲むことは、
頭頚部がんのリスクを下げる可能性が高く、
特にカフェインを含むコーヒーで、
その傾向は明確でした。
一方でお茶と頭頚部がんとの関連については、
一部のがんでリスクが増加しているなど、
現時点での判断は困難と考えられました。
こうしたデータは単独では判断の困難なものが多いので、
コーヒーもお茶も適度に飲む分には、
頭頚部がんのリスクとあまり関係がないと思って頂くのが、
現時点では妥当な判断であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Cancer誌に2024年12月23日付で掲載された、
コーヒーとお茶を飲む習慣と、
頭頚部がんのリスクとの関連についての論文です。
頭頚部がんというのは、
口腔、咽頭、喉頭など、
口から咽喉周辺のがんの総称で、
色々な定義がありますが、
今回の論文では、
口腔、中咽頭、下咽頭、喉頭のがんの総称として、
その言葉が使用されています。
頭頚部がんはアルコールや喫煙が、
その発症リスクとなることが知られています。
つまり、その部位に接触する飲み物や煙などの影響を、
大きく受ける可能性がある訳です。
コーヒーやお茶(今回の場合は主に紅茶)には、
多くの生理活性物質が含有され、
一部のがんに対する予防効果の報告もあります。
ただ、飲み物の影響が大きいと想定される頭頚部がんについて、
コーヒーとお茶の影響についてはあまり明確なことが分かっていません。
今回の研究は世界規模で調査されている、
頭頚部がんの疫学研究のデータを活用して、
コーヒーやお茶を飲む習慣と、
頭頚部がんリスクとの関連を検証しているものです。
これは同様の研究結果が2010年にも論文化されていて、
一定の予防効果が確認されていたのですが、
その後のデータを含めて再度検証しているものです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20570908/
これまでの14の疫学研究に含まれる、
9548例の頭頚部がんの事例を、
15783名のコントロールと比較して検証したところ、
コーヒーを飲まない人と比較して、
毎日カフェインを含むコーヒーを4杯以上飲んでいる人は、
頭頚部がんのリスクが17%(95%CI: 0.69から1.00)低下している傾向があり、
個別の部位のがん毎の解析では、
口腔がんのリスクが30%(95%CI:0.55から0.89)、
中咽頭がんのリスクが22%(95%CI: 0.61から0.99)、
それぞれ有意に低下していました。
同様に毎日カフェインを含むコーヒーを、
1日3から4杯飲んでいる人は、飲まない人と比較して、
下咽頭がんのリスクが41%(95%CI:0.39から0.91)、
有意に低下していました。
また、口腔がんのリスクは、
カフェインを含まないコーヒーを飲まない人と比較して飲む人では、
25%(95%CI: 0.64から0.87)有意に低下していました。
ただ、1日0から1杯飲む人ではリスク低下があった一方で、
1杯以上飲む人では有意なリスク低下はなく、
データの解釈はかなり微妙です。
一方でお茶についての解析では、
お茶を飲む人は飲まない人と比較して、
下咽頭がんのリスクが29%(95%CI:0.59から0.87)、
有意に低下していました。
ただ、1日に0から1杯飲む人では、
頭頚部がんのリスクが9%(95%CI:0.84から0.98)、
下咽頭がんのリスクが27%(95%CI:0.59から0.91)、
有意に低下していた一方で、
1日にお茶を1杯を超えて飲む人では、
喉頭がんのリスクが38%(95%CI:1.09から1.74)、
有意に増加していました。
このようにデータは解釈が難しい面があるのですが、
概ねコーヒーを飲むことは、
頭頚部がんのリスクを下げる可能性が高く、
特にカフェインを含むコーヒーで、
その傾向は明確でした。
一方でお茶と頭頚部がんとの関連については、
一部のがんでリスクが増加しているなど、
現時点での判断は困難と考えられました。
こうしたデータは単独では判断の困難なものが多いので、
コーヒーもお茶も適度に飲む分には、
頭頚部がんのリスクとあまり関係がないと思って頂くのが、
現時点では妥当な判断であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
PTSDの新しい薬物治療の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Psychiatry誌に2024年12月18日付で掲載された、
PTSDの新しい薬物治療の有効性についての論文です。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)というのは、
命に関わるような深刻なストレスを受けた後で、
それに伴って生じる精神症状のことです。
その特徴は、
侵入症状:ストレス時の体験がフラッシュバックされる
回避症状:ストレスに関わるものを遠ざけようとする
認知と気分の陰性変化:人生に過剰に否定的になり、気分が沈む
過覚醒症状:常に緊張し過敏になる
の4つとされています。
PTSDの治療は認知行動療法などの心理療法と共に、
抗うつ剤の一種であるSSRIによる薬物療法が有効とされています。
しかし、その薬物療法の有効性はあまり高いものではなく、
アメリカにおいてはセルトラリンとパロキセチンの、
2種類のSSRIがPTSDの治療に認可され使用されていますが、
メタ解析の論文によると、
42%の患者さんでは薬物治療に反応が見られなかった、
と報告されています。
特に過覚醒症状への有効性は低いようです。
最近抗精神病薬の一種であるブレクスピプラゾール(レキサルティ)に、
PTSDへの有効性があることが、
臨床試験において報告されています。
そこで、今回の第3相臨床試験では、
このブレクスピプラゾールとセルトラリンとを、
PTSDに対して併用した場合の有効性と安全性とが検証されています。
アメリカの86か所の専門医療機関において、
PTSDの患者さんトータル416例を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はブレクスピプラゾール(1日2から3㎎)と、
セルトラリン(1日150㎎)を併用し、
もう一方は同量のセルトラリンに偽薬を併用して、
10週間の経過観察を行っています。
その結果、
セルトラリン単独群に対してブレクスピプラゾール併用群では、
PTSDの症状の有意な改善が認められ、
有害事象の増加も認められませんでした。
トータルな症状への有効率は、
セルトラリン単独群が48.2%に対して、
ブレクスピプラゾール併用群では68.5%でした。
このように、
今回の臨床試験においては、
2種類の薬剤の併用により、
PTSDへの治療効果が高まることが確認されていて、
今後その長期の有効性や安全性についても、
検証の進むことを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Psychiatry誌に2024年12月18日付で掲載された、
PTSDの新しい薬物治療の有効性についての論文です。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)というのは、
命に関わるような深刻なストレスを受けた後で、
それに伴って生じる精神症状のことです。
その特徴は、
侵入症状:ストレス時の体験がフラッシュバックされる
回避症状:ストレスに関わるものを遠ざけようとする
認知と気分の陰性変化:人生に過剰に否定的になり、気分が沈む
過覚醒症状:常に緊張し過敏になる
の4つとされています。
PTSDの治療は認知行動療法などの心理療法と共に、
抗うつ剤の一種であるSSRIによる薬物療法が有効とされています。
しかし、その薬物療法の有効性はあまり高いものではなく、
アメリカにおいてはセルトラリンとパロキセチンの、
2種類のSSRIがPTSDの治療に認可され使用されていますが、
メタ解析の論文によると、
42%の患者さんでは薬物治療に反応が見られなかった、
と報告されています。
特に過覚醒症状への有効性は低いようです。
最近抗精神病薬の一種であるブレクスピプラゾール(レキサルティ)に、
PTSDへの有効性があることが、
臨床試験において報告されています。
そこで、今回の第3相臨床試験では、
このブレクスピプラゾールとセルトラリンとを、
PTSDに対して併用した場合の有効性と安全性とが検証されています。
アメリカの86か所の専門医療機関において、
PTSDの患者さんトータル416例を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はブレクスピプラゾール(1日2から3㎎)と、
セルトラリン(1日150㎎)を併用し、
もう一方は同量のセルトラリンに偽薬を併用して、
10週間の経過観察を行っています。
その結果、
セルトラリン単独群に対してブレクスピプラゾール併用群では、
PTSDの症状の有意な改善が認められ、
有害事象の増加も認められませんでした。
トータルな症状への有効率は、
セルトラリン単独群が48.2%に対して、
ブレクスピプラゾール併用群では68.5%でした。
このように、
今回の臨床試験においては、
2種類の薬剤の併用により、
PTSDへの治療効果が高まることが確認されていて、
今後その長期の有効性や安全性についても、
検証の進むことを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
飲水量の増加と健康効果(2024年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Network Open誌に、
2024年11月25日付で掲載された、
飲水を増やすことの健康効果についての論文です。
水を多く飲むことが健康に良い、
というような言説は多く認められます。
勿論高度の脱水状態は、
熱中症などの事例を見ても分かるように、
時に命に関わるような事態を招きます。
しかしこれは、
敢くまで高度の脱水状態の話です。
普段普通に食事を摂り、
普通に咽喉が渇けば水を飲むことが出来る環境で、
より沢山の水を飲んだ方が健康に良いかどうか、
という点については科学的にも見解は分かれています。
日本では国土交通省が、
「健康のため水を飲もう」推進運動というのを提唱していて、
脱水が多くの病気に繋がることを啓蒙し、
もっと意識的に水を飲もう、
という運動をしています。
ただ、これは具体的な数値目標がある、
というようなものではなく、
1日に人間は食事などを含めて、
2.5リットルの水分が必要ですよ、
という説明があり、
入浴後や朝には、
コップ1杯の水を飲もう、
というスローガンなどが示されています。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/stf_seisakunitsuite_bunya_topics_bukyoku_kenkou_suido_nomou_index.html#01
全米医学アカデミーは生理学的データを元にして、
成人男性で1日3リットル強、
成人女性で1日2リットル強の、
水分を摂ることが身体には必要としています。
これは飲水のみではなく食事も含めたものです。
https://nap.nationalacademies.org/read/10925/chapter/6
より一般的には、
「1日1.5から2リットルの水を飲みましょう」
「寝る前には1杯の水を飲みましょう」
というような健康啓蒙的な指針が、
広く人口に膾炙しています。
しかし、実際にこうした習慣により、
どの程度の健康効果があるのでしょうか?
それはどの程度科学的に証明されているのでしょうか?
今回の研究では、
これまでに行われた、
飲水量変更の健康効果についての、
介入試験という精度の高い臨床研究のデータを、
トータルで検証するシステマティックレビューという方法で、
現時点で分かっていることのまとめを行っています。
これまでに施行された18の臨床試験データを検討したところ、
飲水量の増加により、
複数の研究で体重の減少効果と、
腎尿路結石の予防効果が認められました。
単独の研究のみで有効性が報告されているのは、
片頭痛予防、低血圧、糖尿病患者さんの血糖コントロール、
尿路感染症予防の4つの病態でした。
この場合の飲水量の増加というのは、
1日2リットル以上の飲水量の確保、
もしくは1から1.5リットルの水を、
普段の生活に追加で摂取する、
という条件で行われていることが多数でした。
総じて良く言われる心臓病や脳梗塞などの予防に、
水を多く飲むことの効果が、
精度の高い臨床試験で確認された、
ということはなく、
これは現時点では、
「脱水を予防しましょう」というのと、
同じくらいの根拠しかないと考えて良いようです。
水を飲むと体重が減る、
というのはやや奇異な感じもしますが、
実際に普段の生活で、
急に1リットルの水分を追加で飲むと、
胃に水が溜まって食欲が低下することは、
想定出来ることのようにも思います。
このように、
余分に水分を摂ることの健康効果については、
それほど科学的に証明されている、
という事項ではなく、
敢くまで脱水予防という観点で、
考えて頂くのが現状では良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Network Open誌に、
2024年11月25日付で掲載された、
飲水を増やすことの健康効果についての論文です。
水を多く飲むことが健康に良い、
というような言説は多く認められます。
勿論高度の脱水状態は、
熱中症などの事例を見ても分かるように、
時に命に関わるような事態を招きます。
しかしこれは、
敢くまで高度の脱水状態の話です。
普段普通に食事を摂り、
普通に咽喉が渇けば水を飲むことが出来る環境で、
より沢山の水を飲んだ方が健康に良いかどうか、
という点については科学的にも見解は分かれています。
日本では国土交通省が、
「健康のため水を飲もう」推進運動というのを提唱していて、
脱水が多くの病気に繋がることを啓蒙し、
もっと意識的に水を飲もう、
という運動をしています。
ただ、これは具体的な数値目標がある、
というようなものではなく、
1日に人間は食事などを含めて、
2.5リットルの水分が必要ですよ、
という説明があり、
入浴後や朝には、
コップ1杯の水を飲もう、
というスローガンなどが示されています。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/stf_seisakunitsuite_bunya_topics_bukyoku_kenkou_suido_nomou_index.html#01
全米医学アカデミーは生理学的データを元にして、
成人男性で1日3リットル強、
成人女性で1日2リットル強の、
水分を摂ることが身体には必要としています。
これは飲水のみではなく食事も含めたものです。
https://nap.nationalacademies.org/read/10925/chapter/6
より一般的には、
「1日1.5から2リットルの水を飲みましょう」
「寝る前には1杯の水を飲みましょう」
というような健康啓蒙的な指針が、
広く人口に膾炙しています。
しかし、実際にこうした習慣により、
どの程度の健康効果があるのでしょうか?
それはどの程度科学的に証明されているのでしょうか?
今回の研究では、
これまでに行われた、
飲水量変更の健康効果についての、
介入試験という精度の高い臨床研究のデータを、
トータルで検証するシステマティックレビューという方法で、
現時点で分かっていることのまとめを行っています。
これまでに施行された18の臨床試験データを検討したところ、
飲水量の増加により、
複数の研究で体重の減少効果と、
腎尿路結石の予防効果が認められました。
単独の研究のみで有効性が報告されているのは、
片頭痛予防、低血圧、糖尿病患者さんの血糖コントロール、
尿路感染症予防の4つの病態でした。
この場合の飲水量の増加というのは、
1日2リットル以上の飲水量の確保、
もしくは1から1.5リットルの水を、
普段の生活に追加で摂取する、
という条件で行われていることが多数でした。
総じて良く言われる心臓病や脳梗塞などの予防に、
水を多く飲むことの効果が、
精度の高い臨床試験で確認された、
ということはなく、
これは現時点では、
「脱水を予防しましょう」というのと、
同じくらいの根拠しかないと考えて良いようです。
水を飲むと体重が減る、
というのはやや奇異な感じもしますが、
実際に普段の生活で、
急に1リットルの水分を追加で飲むと、
胃に水が溜まって食欲が低下することは、
想定出来ることのようにも思います。
このように、
余分に水分を摂ることの健康効果については、
それほど科学的に証明されている、
という事項ではなく、
敢くまで脱水予防という観点で、
考えて頂くのが現状では良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
インフルエンザ治療薬の有効性比較(2025年メタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年1月13日付で掲載された、
インフルエンザ治療薬の有効性を比較してメタ解析の論文です。
インフルエンザウイルスによる、
インフルエンザ感染症の治療薬としては、
オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、
ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル)、
ファビピラビル(アビガン)、バロキサビル(ゾフルーザ)、
アマンタジンがあり、
世界的にはオセルタミビルが、
最も広く使用されています。
ただ、その有効性については、
それほど明確なデータがある訳ではありません。
たとえば2023年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
メタ解析の論文では、
オセルタミビルを使用しても、
病状の悪化による入院のリスクは明確には低下しなかった、
という結論になっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37306992/
勿論個別のデータでは、
症状期間の短縮や重症化予防など、
一定の有効性が確認されているものはあるのですが、
一般化出来るほどではないのです。
今回の研究は更に新しいデータを加えた、
再診のネットワークメタ解析です。
これまでの73の精度の高い臨床試験に含まれる、
34332名の患者データをまとめて解析したところ、
インフルエンザに罹患した患者さんの生命予後については、
どの治療薬を使用しても、
明確な改善は認められませんでした。
持病など重症化リスクのある、
治療の時点では重症ではない患者のインフルエンザ感染に対して、
オセルタミビル(タミフル)を使用しても、
入院の予防効果は確認はされませんでした。
対象となった全ての抗ウイルス薬のうち、
バロキセビル(ゾフルーザ)は、
入院のリスクを低下させる可能性が示唆されましたが有意ではなく、
それ以外の抗ウイルス剤では予防効果は確認されませんでした。
また、症状が消失するまでの期間を、
バロキセビルは1日程度短縮する効果が、
中等度の確実性で認められましたが、
オセルタミビルなど他の抗ウイルス薬では、
そうした効果は確認されませんでした。
主な有害事象や副作用についても、
バロキセビルはオセルタミビルより、
安全に使用可能な薬剤であることが示唆されました。
このように今回のメタ解析においては、
抗ウイルス剤の中でバロキセビル(ゾフルーザ)の有効性と安全性とが
他の同種の薬剤と比較して優れているという結果が得られました。
ただ、既存の薬の中では、
オセルタミビルが圧倒的にデータが多いことは間違いがなく、
もう少しバロキセビルの臨床データが蓄積されないと、
実証的な結論は得られないように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Internal Medicine誌に、
2025年1月13日付で掲載された、
インフルエンザ治療薬の有効性を比較してメタ解析の論文です。
インフルエンザウイルスによる、
インフルエンザ感染症の治療薬としては、
オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、
ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル)、
ファビピラビル(アビガン)、バロキサビル(ゾフルーザ)、
アマンタジンがあり、
世界的にはオセルタミビルが、
最も広く使用されています。
ただ、その有効性については、
それほど明確なデータがある訳ではありません。
たとえば2023年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
メタ解析の論文では、
オセルタミビルを使用しても、
病状の悪化による入院のリスクは明確には低下しなかった、
という結論になっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37306992/
勿論個別のデータでは、
症状期間の短縮や重症化予防など、
一定の有効性が確認されているものはあるのですが、
一般化出来るほどではないのです。
今回の研究は更に新しいデータを加えた、
再診のネットワークメタ解析です。
これまでの73の精度の高い臨床試験に含まれる、
34332名の患者データをまとめて解析したところ、
インフルエンザに罹患した患者さんの生命予後については、
どの治療薬を使用しても、
明確な改善は認められませんでした。
持病など重症化リスクのある、
治療の時点では重症ではない患者のインフルエンザ感染に対して、
オセルタミビル(タミフル)を使用しても、
入院の予防効果は確認はされませんでした。
対象となった全ての抗ウイルス薬のうち、
バロキセビル(ゾフルーザ)は、
入院のリスクを低下させる可能性が示唆されましたが有意ではなく、
それ以外の抗ウイルス剤では予防効果は確認されませんでした。
また、症状が消失するまでの期間を、
バロキセビルは1日程度短縮する効果が、
中等度の確実性で認められましたが、
オセルタミビルなど他の抗ウイルス薬では、
そうした効果は確認されませんでした。
主な有害事象や副作用についても、
バロキセビルはオセルタミビルより、
安全に使用可能な薬剤であることが示唆されました。
このように今回のメタ解析においては、
抗ウイルス剤の中でバロキセビル(ゾフルーザ)の有効性と安全性とが
他の同種の薬剤と比較して優れているという結果が得られました。
ただ、既存の薬の中では、
オセルタミビルが圧倒的にデータが多いことは間違いがなく、
もう少しバロキセビルの臨床データが蓄積されないと、
実証的な結論は得られないように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
朝食のメタボ改善効果(2024年スペインの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

the Journal of nutrition, health and aging 誌に、
2024年12月1日付で掲載された、
朝食を摂ることのメタボへの効果についての論文です。
食事をどのようなタイミングで、
どのような回数で摂るべきか、
というのは、
まだ明確な結論の出ていない問題です。
朝食、昼食、夕食と、
活動している時間に3回に分けて摂取することが、
長く一般的な習慣とされ、
糖尿病などの生活習慣病の指導においても、
その3食を過不足なく摂ることが、
最も健康的であるとして推奨されています。
ただ、実際には1日1食や2食、4食以上など、
国や地域によっては1日3食以外の食習慣が、
文化的に維持されている地域もあり、
それを健康のために無理に1日3食にすることで、
より健康面でのメリットが大きいとする根拠は、
それほど明確ではありません。
一番健康的な食習慣であるとされることの多い、
朝食を摂ることの健康影響についても、
まだ見解は一致しているとは言えません。
朝食を抜くと太る、というのは、
以前から比較的よく語られている説ですが、
そうしたデータがある一方で、
明確な変化はなかった、とするデータもあります。
朝食の健康効果についても、
まだ不明の点が多いのです。
今回の研究はスペインにおいて、
ダイエットに関わる臨床試験のデータを解析する手法で、
朝食のカロリー及びその質と、
メタボの経過との関連を検証しています。
対象は、血圧高値や腹囲高値など、
メタボのリスク因子を複数持った、
55から75歳の383名で、
3年間の経過観察を施行しています。
朝食のカロリーは1日の摂取カロリーの20から30%を標準として、
20%未満を朝食低カロリー群、30%を超えるものを朝食高カロリー群として、
その比較を行っています。
またこの臨床研究では、
地中海食を基本とした食事指導を施行しているので、
果物や雑穀、ナッツ、ヨーグルトなどを多く含む朝食を、
品質の高い朝食として規定しています。
その結果、
朝食のカロリーが1日の20から30%であった場合と比較して、
カロリーが高くても低くても、
いずれも3年間で腹囲は増加し、
中性脂肪も増加し、
善玉とされるHDLコレステロールは低下し、
腎機能の指標である推計糸球体濾過量は低下していました。
また朝食の品質が低いことも、
同様のメタボの指標の悪化と関連していました。
これは中高年のメタボの傾向のある人に限ったデータですが、
朝食を1日総カロリーの20から30%とすることが、
朝食を摂らないよりもメタボの指標を改善するとする、
今回のデータは非常に興味深く、
今後より観察期間を長くした検証にも期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

the Journal of nutrition, health and aging 誌に、
2024年12月1日付で掲載された、
朝食を摂ることのメタボへの効果についての論文です。
食事をどのようなタイミングで、
どのような回数で摂るべきか、
というのは、
まだ明確な結論の出ていない問題です。
朝食、昼食、夕食と、
活動している時間に3回に分けて摂取することが、
長く一般的な習慣とされ、
糖尿病などの生活習慣病の指導においても、
その3食を過不足なく摂ることが、
最も健康的であるとして推奨されています。
ただ、実際には1日1食や2食、4食以上など、
国や地域によっては1日3食以外の食習慣が、
文化的に維持されている地域もあり、
それを健康のために無理に1日3食にすることで、
より健康面でのメリットが大きいとする根拠は、
それほど明確ではありません。
一番健康的な食習慣であるとされることの多い、
朝食を摂ることの健康影響についても、
まだ見解は一致しているとは言えません。
朝食を抜くと太る、というのは、
以前から比較的よく語られている説ですが、
そうしたデータがある一方で、
明確な変化はなかった、とするデータもあります。
朝食の健康効果についても、
まだ不明の点が多いのです。
今回の研究はスペインにおいて、
ダイエットに関わる臨床試験のデータを解析する手法で、
朝食のカロリー及びその質と、
メタボの経過との関連を検証しています。
対象は、血圧高値や腹囲高値など、
メタボのリスク因子を複数持った、
55から75歳の383名で、
3年間の経過観察を施行しています。
朝食のカロリーは1日の摂取カロリーの20から30%を標準として、
20%未満を朝食低カロリー群、30%を超えるものを朝食高カロリー群として、
その比較を行っています。
またこの臨床研究では、
地中海食を基本とした食事指導を施行しているので、
果物や雑穀、ナッツ、ヨーグルトなどを多く含む朝食を、
品質の高い朝食として規定しています。
その結果、
朝食のカロリーが1日の20から30%であった場合と比較して、
カロリーが高くても低くても、
いずれも3年間で腹囲は増加し、
中性脂肪も増加し、
善玉とされるHDLコレステロールは低下し、
腎機能の指標である推計糸球体濾過量は低下していました。
また朝食の品質が低いことも、
同様のメタボの指標の悪化と関連していました。
これは中高年のメタボの傾向のある人に限ったデータですが、
朝食を1日総カロリーの20から30%とすることが、
朝食を摂らないよりもメタボの指標を改善するとする、
今回のデータは非常に興味深く、
今後より観察期間を長くした検証にも期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
アセトアミノフェンの有害事象リスク [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
クリニックは本日まで、
年末年始の休診期間となります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Arthritis Care & Research誌に、
2024年11月24日付で掲載された、
臨床において最も広く使用されている、
鎮痛剤の安全性についての論文です。
関節痛や腰痛などの疼痛の治療薬として、
最も広く使用されている薬剤はアセトアミノフェンです。
商品名ではカロナールやアンヒバなどがそれに当たります。
この薬は鎮痛剤の中では、
使用による有害事象やリスクの少ない薬剤として知られています。
アセトアミノフェン以外の鎮痛剤は、その使用に伴い、
消化性潰瘍や腎障害、心血管疾患やライ症候群など、
多くの有害事象が知られていますが、
アセトアミノフェンはそうした有害事象は、
肝障害以外は稀だと考えられています。
そのため特に内臓機能が低下している高齢者では、
安全性の高いアセトアミノフェンが、
第一選択の薬として選ばれることが多いと思います。
しかし、アセトアミノフェンの使用においても、
他の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用時と同様に、
消化管出血や心血管疾患のリスクが、
少なからず存在する、
という報告も認められています。
実際はどうなのでしょうか?
今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの臨床データを活用して、
65歳以上の年齢で、
関節痛などの症状に対して、
アセトアミノフェンを使用した場合の、
出血などのリスク増加を、
未使用の場合と比較検証しています。
対象は半年以内に2回以上アセトアミノフェンを使用した180483名と、
未使用の402478名です。
その結果、
アセトアミノフェンの使用により、
胃潰瘍などの出血のリスクが24%(95%CI:1.16から1.34)、
下部消化管出血のリスクが36%(95%CI:1.29から1.46)、
心不全のリスクが9%(95%CI:1.06から1.13)、
高血圧のリスクが7%(95%CI:1.04から1.11)、
慢性腎障害のリスクが19%(95%CI:1.13から1.24)、
それぞれ有意に増加していました。
このように、
今回の実地臨床での大規模なデータにおいては、
安全とされていたアセトアミノフェンの使用においても、
65歳以上の年齢層において、
消化管出血や心血管疾患などの有害事象のリスクが、
少なからず認められていました。
これは関節痛の治療に限った話ですが、
痛み止めとしての有効性が見劣りがする、
という点も加味して考えると、
これまでの高齢者の痛み止めにはアセトアミノフェンが第一選択、
という考え方は、
臨床的には再考する必要があるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
クリニックは本日まで、
年末年始の休診期間となります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Arthritis Care & Research誌に、
2024年11月24日付で掲載された、
臨床において最も広く使用されている、
鎮痛剤の安全性についての論文です。
関節痛や腰痛などの疼痛の治療薬として、
最も広く使用されている薬剤はアセトアミノフェンです。
商品名ではカロナールやアンヒバなどがそれに当たります。
この薬は鎮痛剤の中では、
使用による有害事象やリスクの少ない薬剤として知られています。
アセトアミノフェン以外の鎮痛剤は、その使用に伴い、
消化性潰瘍や腎障害、心血管疾患やライ症候群など、
多くの有害事象が知られていますが、
アセトアミノフェンはそうした有害事象は、
肝障害以外は稀だと考えられています。
そのため特に内臓機能が低下している高齢者では、
安全性の高いアセトアミノフェンが、
第一選択の薬として選ばれることが多いと思います。
しかし、アセトアミノフェンの使用においても、
他の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用時と同様に、
消化管出血や心血管疾患のリスクが、
少なからず存在する、
という報告も認められています。
実際はどうなのでしょうか?
今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの臨床データを活用して、
65歳以上の年齢で、
関節痛などの症状に対して、
アセトアミノフェンを使用した場合の、
出血などのリスク増加を、
未使用の場合と比較検証しています。
対象は半年以内に2回以上アセトアミノフェンを使用した180483名と、
未使用の402478名です。
その結果、
アセトアミノフェンの使用により、
胃潰瘍などの出血のリスクが24%(95%CI:1.16から1.34)、
下部消化管出血のリスクが36%(95%CI:1.29から1.46)、
心不全のリスクが9%(95%CI:1.06から1.13)、
高血圧のリスクが7%(95%CI:1.04から1.11)、
慢性腎障害のリスクが19%(95%CI:1.13から1.24)、
それぞれ有意に増加していました。
このように、
今回の実地臨床での大規模なデータにおいては、
安全とされていたアセトアミノフェンの使用においても、
65歳以上の年齢層において、
消化管出血や心血管疾患などの有害事象のリスクが、
少なからず認められていました。
これは関節痛の治療に限った話ですが、
痛み止めとしての有効性が見劣りがする、
という点も加味して考えると、
これまでの高齢者の痛み止めにはアセトアミノフェンが第一選択、
という考え方は、
臨床的には再考する必要があるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。