「花嫁はどこへ?」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
大晦日ですね。
クリニックは12月29日から、
2025年1月5日まで年末年始のお休みを頂いています。
今日は軽い話題でお届けます。
今日はこちら。

2024年製作のインド映画です。
評判は聞いていたのですが、
なかなか観に行けず、
漸く年末に間に合って観ることが出来ました。
これは控え目に言って最高でした。
この映画は1980年代くらいまでは、
ハリウッド製の良く出来た映画として、
量産されていたタイプの作品なんですね。
でも、今はハリウッドは勿論、
他の国でもあまりこうした映画を作らなくなっている、
という気がするのです。
正直「オッペンハイマー」や「憐れみの3章」、
「関心領域」などを観ても、
勿論詰まらなくはないし、
技術的にも藝術的にも優れてはいることは理解出来るのですが、
昔映画を観た時の楽しさや満足感、
ワクワクするような気分を、
全く感じることは出来ません。
別に映画なんて、
こんな風に進歩なんかしなくて、
良かったのではないかしら、
というように思ってしまうのです。
この映画は20年前くらいのインドを舞台に、
その地域特有の風習から、
2人の花嫁が取り違えられてしまい、
再び互いの夫に「発見」されるまでの悲喜劇が、
とても暖かく、ワクワクもするタッチで描かれている物語です。
しかも、再び発見された花嫁は、
元の花嫁とは違う人間へと成長しているのです。
かつてのハリウッド製娯楽映画と同じように、
物語は極めて緻密に精緻に組み立てられていて、
要所要所で意外な人物が、
物語の鍵を握る展開もあざとく感じるくらい鮮やかです。
それでいて、あまり鼻に付くような感じがないのは、
映像の空気感が非常にノスタルジックで牧歌的で、
「昔観たな」というような懐かしさを感じさせるからなのですね。
こういう映画を観ると、
「そうだよね。映画はこれで充分だよ」
という気持ちにさせてくれます。
今普通に作られて上映されている映画は、
もっと技術レベルが高くて、
もっと高尚なテーマを持ち、
社会的な意義も持っているかと思うのですが、
おそらく今映画が好きな多くの人にとって、
そんなものはあまり意味はなく、
単なる好き嫌い程度の問題なのではないでしょうか?
今の多くの映画はそうしたものの代わりに、
素朴な映画の楽しさを失っているからです。
そんな訳で今年一番と言って良い、
映画の楽しさを再認識出来る映画で、
是非是非お勧めしたいと思います。
最高ですよ。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
大晦日ですね。
クリニックは12月29日から、
2025年1月5日まで年末年始のお休みを頂いています。
今日は軽い話題でお届けます。
今日はこちら。

2024年製作のインド映画です。
評判は聞いていたのですが、
なかなか観に行けず、
漸く年末に間に合って観ることが出来ました。
これは控え目に言って最高でした。
この映画は1980年代くらいまでは、
ハリウッド製の良く出来た映画として、
量産されていたタイプの作品なんですね。
でも、今はハリウッドは勿論、
他の国でもあまりこうした映画を作らなくなっている、
という気がするのです。
正直「オッペンハイマー」や「憐れみの3章」、
「関心領域」などを観ても、
勿論詰まらなくはないし、
技術的にも藝術的にも優れてはいることは理解出来るのですが、
昔映画を観た時の楽しさや満足感、
ワクワクするような気分を、
全く感じることは出来ません。
別に映画なんて、
こんな風に進歩なんかしなくて、
良かったのではないかしら、
というように思ってしまうのです。
この映画は20年前くらいのインドを舞台に、
その地域特有の風習から、
2人の花嫁が取り違えられてしまい、
再び互いの夫に「発見」されるまでの悲喜劇が、
とても暖かく、ワクワクもするタッチで描かれている物語です。
しかも、再び発見された花嫁は、
元の花嫁とは違う人間へと成長しているのです。
かつてのハリウッド製娯楽映画と同じように、
物語は極めて緻密に精緻に組み立てられていて、
要所要所で意外な人物が、
物語の鍵を握る展開もあざとく感じるくらい鮮やかです。
それでいて、あまり鼻に付くような感じがないのは、
映像の空気感が非常にノスタルジックで牧歌的で、
「昔観たな」というような懐かしさを感じさせるからなのですね。
こういう映画を観ると、
「そうだよね。映画はこれで充分だよ」
という気持ちにさせてくれます。
今普通に作られて上映されている映画は、
もっと技術レベルが高くて、
もっと高尚なテーマを持ち、
社会的な意義も持っているかと思うのですが、
おそらく今映画が好きな多くの人にとって、
そんなものはあまり意味はなく、
単なる好き嫌い程度の問題なのではないでしょうか?
今の多くの映画はそうしたものの代わりに、
素朴な映画の楽しさを失っているからです。
そんな訳で今年一番と言って良い、
映画の楽しさを再認識出来る映画で、
是非是非お勧めしたいと思います。
最高ですよ。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
アルコールの種類と健康習慣(2024年アメリカの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Nutrients誌に2024年11月13日付でウェブ掲載された、
アルコールの種類と他の生活習慣との関連についての論文です。
過度な飲酒が健康を害するというのは、
殊更科学的なデータが示されなくても、
多くの方が心の中では事実と感じていることだと思います。
科学的なデータとしては、
概ねアルコール量で20グラム(日本酒1合、ビール中瓶1本くらい)
までのアルコールは、
大きな健康影響はないと考えられています。
その一方で、
多量の飲酒を続けることにより、
アルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎が生じ、
それが進行することで肝硬変になったり、
肝臓癌の原因となり、
命に関わることがあります。
概ね1日60グラム(日本酒3合目安)以上のアルコールを、
5年以上常用することで,
そうした肝障害のリスクが高まると想定されています。
しかし、同じように多量の飲酒を続けていても、
そのうち重症のアルコール性肝炎や肝硬変になる人は、
全体の10から20%と報告されています。
つまり、アルコール性肝障害が重症化するかどうかは、
必ずしも飲酒量のみで決まっている訳ではないのです。
それでは、他にどのような因子が、
そのリスクに影響をしているのでしょうか?
1つ想定されるのは、食事などの他の健康習慣との関連です。
以前当ブログでもご紹介したネイチャー関連の論文では、
飲酒量の多い人が、
辛いものや加工肉を多く食べるような食生活をしていると、
肝臓病悪化のリスクがより高まる、
という結果が報告されていました。
https://www.nature.com/articles/s41467-024-51314-9
今回の研究はアメリカにおいて、
飲酒習慣のある1917名の飲酒パターンと生活習慣を解析し、
その関連を検証しているものです。
対象者の38.9%はビールのみを飲み、
21.8%はワインのみを、18.2%は蒸留酒やカクテルのみを、
21.0%は複数の種類のアルコールを飲んでいました。
アルコールを常用する人の生活は、
トータルに不健康な傾向が認められました。
またビールのみを飲む人は、
他のお酒を飲む人と比較して、
経済的に貧困している人が多く、
食事パターンは不健康で、
運動不足で、喫煙者が多い傾向が認められました。
このように今回のアメリカの検証では、
同じ飲酒でもビールと他の酒類との間で違いがあり、
ビールがより健康リスクが高いと判断されました。
これはアメリカの1つの疫学データに過ぎないものなので、
これをもってビールが不健康なお酒だ、
ということにはならない点には注意が必要です。
問題はお酒の酒類ではなく、
それに結び付いた不健康な生活パターンにあります。
どんなお酒を飲んでいるかには関わらず、
食事を健康に保ち、
運動習慣を持つなど、
生活を健康に保つことこそが、
正しいお酒との付き合い方であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Nutrients誌に2024年11月13日付でウェブ掲載された、
アルコールの種類と他の生活習慣との関連についての論文です。
過度な飲酒が健康を害するというのは、
殊更科学的なデータが示されなくても、
多くの方が心の中では事実と感じていることだと思います。
科学的なデータとしては、
概ねアルコール量で20グラム(日本酒1合、ビール中瓶1本くらい)
までのアルコールは、
大きな健康影響はないと考えられています。
その一方で、
多量の飲酒を続けることにより、
アルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎が生じ、
それが進行することで肝硬変になったり、
肝臓癌の原因となり、
命に関わることがあります。
概ね1日60グラム(日本酒3合目安)以上のアルコールを、
5年以上常用することで,
そうした肝障害のリスクが高まると想定されています。
しかし、同じように多量の飲酒を続けていても、
そのうち重症のアルコール性肝炎や肝硬変になる人は、
全体の10から20%と報告されています。
つまり、アルコール性肝障害が重症化するかどうかは、
必ずしも飲酒量のみで決まっている訳ではないのです。
それでは、他にどのような因子が、
そのリスクに影響をしているのでしょうか?
1つ想定されるのは、食事などの他の健康習慣との関連です。
以前当ブログでもご紹介したネイチャー関連の論文では、
飲酒量の多い人が、
辛いものや加工肉を多く食べるような食生活をしていると、
肝臓病悪化のリスクがより高まる、
という結果が報告されていました。
https://www.nature.com/articles/s41467-024-51314-9
今回の研究はアメリカにおいて、
飲酒習慣のある1917名の飲酒パターンと生活習慣を解析し、
その関連を検証しているものです。
対象者の38.9%はビールのみを飲み、
21.8%はワインのみを、18.2%は蒸留酒やカクテルのみを、
21.0%は複数の種類のアルコールを飲んでいました。
アルコールを常用する人の生活は、
トータルに不健康な傾向が認められました。
またビールのみを飲む人は、
他のお酒を飲む人と比較して、
経済的に貧困している人が多く、
食事パターンは不健康で、
運動不足で、喫煙者が多い傾向が認められました。
このように今回のアメリカの検証では、
同じ飲酒でもビールと他の酒類との間で違いがあり、
ビールがより健康リスクが高いと判断されました。
これはアメリカの1つの疫学データに過ぎないものなので、
これをもってビールが不健康なお酒だ、
ということにはならない点には注意が必要です。
問題はお酒の酒類ではなく、
それに結び付いた不健康な生活パターンにあります。
どんなお酒を飲んでいるかには関わらず、
食事を健康に保ち、
運動習慣を持つなど、
生活を健康に保つことこそが、
正しいお酒との付き合い方であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
城山羊の会「平和によるうしろめたさの為の」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

大好きな城山羊の会の新作公演が、
今下北沢の小劇場B1で上演されています。
この会場はかつて傑作「自己紹介読本」が上演された劇場で、
その強烈な印象は今でも脳裏に焼き付いています。
今はすっかり全国区となった岡部たかしさんの、
ファンになったのもあのお芝居でした。
城山羊の会は多くの劇場で公演を行っていますが、
個人的にはその淫靡で密やかなニュアンスが、
最も的確に発揮されるのは、
小劇場B1のような小空間ではないかと思います。
今回のお芝居は岩谷健司さんが出演されないのだけが、
少し残念ではありますが、
岡部たかしさんや岩本えりさんのお馴染み組に、
こちらも今をときめく中村歩さん、
ベテランの古館寛治さん、
隠し玉的ヒロインの笠島智さん、福井夏さん、
という充実した布陣です。
内容は複雑に人間関係が絡み合う、
城山羊の会ならではの艶笑譚ですが、
基本的には「自己紹介読本」を、
より分かり易くして、
最後にはそこから一ひねりしている、
という趣向の作品になっていました。
このところシュールで非現実的な趣向を持った作品が多かったのですが、
今回の作品にはそうした要素はなく、
リアルな世界の話がリアルなままに着地しています。
血縁や愛情で複雑に関係のもつれあった6人の男女が、
おそらくは「自己紹介読本」と同じ都会の公園で、
「出会ってしまう」という物語で、
観客は神様視点でその物語を、
舞台を取り囲んで鑑賞するのですが、
舞台上の役者陣の持つ「うしろめたさ」が、
次第に観客にも伝染して来る、
という辺りに作者の企みがありそうです。
リアルな現代の物語という体裁ですが、
もっと根源的な、ギリシャ悲劇に近い味わいがあります。
ラストに感情を剥き出しにした人物が、
顔に紙袋を被せられてベンチに縛り上げられる光景には、
初めに言い訳のように語られていた、
遠い国の虐殺や戦争の悲劇が、
ふいに身近に引き寄せられたような恐怖が感じられます。
人間の愚かさは根源的で、
見掛け上大きく見えても小さく見えても、
1つの平面上に存在している、
ということなのではないかと思います。
ただ、この作者としてはやや真面目に踏み込んだ感じがあって、
勿論愚かしさ全開の男どもの大暴れや愚行の数々、
シンプルでストレートな性的表現など、
遊びの要素もふんだんにはあるのですが、
基調音はかなり重いな、
という印象を受けました。
基本観客神様視点で描かれていて、
愚かな登場人物の右往左往を、
「ああ、そんなことをしなければいいのに」
とハラハラしながら見守る、という感じの展開です。
そのため「自己紹介読本」にあった、
秘められていた意外な感情が暴露される、
というような、観客が驚くような部分はありません。
それはもうこうした作品なので仕方がないことなのですが、
個人的には少し残念ではありました。
いずれにしても城山羊の会のファンの方には、
文句なくお勧め出来る逸品であることは確かで、
貴重な機会を是非お見逃しないようにして下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。

大好きな城山羊の会の新作公演が、
今下北沢の小劇場B1で上演されています。
この会場はかつて傑作「自己紹介読本」が上演された劇場で、
その強烈な印象は今でも脳裏に焼き付いています。
今はすっかり全国区となった岡部たかしさんの、
ファンになったのもあのお芝居でした。
城山羊の会は多くの劇場で公演を行っていますが、
個人的にはその淫靡で密やかなニュアンスが、
最も的確に発揮されるのは、
小劇場B1のような小空間ではないかと思います。
今回のお芝居は岩谷健司さんが出演されないのだけが、
少し残念ではありますが、
岡部たかしさんや岩本えりさんのお馴染み組に、
こちらも今をときめく中村歩さん、
ベテランの古館寛治さん、
隠し玉的ヒロインの笠島智さん、福井夏さん、
という充実した布陣です。
内容は複雑に人間関係が絡み合う、
城山羊の会ならではの艶笑譚ですが、
基本的には「自己紹介読本」を、
より分かり易くして、
最後にはそこから一ひねりしている、
という趣向の作品になっていました。
このところシュールで非現実的な趣向を持った作品が多かったのですが、
今回の作品にはそうした要素はなく、
リアルな世界の話がリアルなままに着地しています。
血縁や愛情で複雑に関係のもつれあった6人の男女が、
おそらくは「自己紹介読本」と同じ都会の公園で、
「出会ってしまう」という物語で、
観客は神様視点でその物語を、
舞台を取り囲んで鑑賞するのですが、
舞台上の役者陣の持つ「うしろめたさ」が、
次第に観客にも伝染して来る、
という辺りに作者の企みがありそうです。
リアルな現代の物語という体裁ですが、
もっと根源的な、ギリシャ悲劇に近い味わいがあります。
ラストに感情を剥き出しにした人物が、
顔に紙袋を被せられてベンチに縛り上げられる光景には、
初めに言い訳のように語られていた、
遠い国の虐殺や戦争の悲劇が、
ふいに身近に引き寄せられたような恐怖が感じられます。
人間の愚かさは根源的で、
見掛け上大きく見えても小さく見えても、
1つの平面上に存在している、
ということなのではないかと思います。
ただ、この作者としてはやや真面目に踏み込んだ感じがあって、
勿論愚かしさ全開の男どもの大暴れや愚行の数々、
シンプルでストレートな性的表現など、
遊びの要素もふんだんにはあるのですが、
基調音はかなり重いな、
という印象を受けました。
基本観客神様視点で描かれていて、
愚かな登場人物の右往左往を、
「ああ、そんなことをしなければいいのに」
とハラハラしながら見守る、という感じの展開です。
そのため「自己紹介読本」にあった、
秘められていた意外な感情が暴露される、
というような、観客が驚くような部分はありません。
それはもうこうした作品なので仕方がないことなのですが、
個人的には少し残念ではありました。
いずれにしても城山羊の会のファンの方には、
文句なくお勧め出来る逸品であることは確かで、
貴重な機会を是非お見逃しないようにして下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
ダークチョコレートの糖尿病予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
色々忙しくはしています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

British Medical Journal誌に、
2024年12月4日付で掲載された、
チョコレートの種類と健康効果についての論文です。
チョコレートやココアには、
カカオ由来の生理活性物質(フラボノイド)が多く含まれていて、
代謝改善作用や抗酸化作用、認知症予防など、
多くの健康効果が指摘されています。
糖尿病のような生活習慣病に対しても、
カカオフラボノイドは有効と考えられますが、
その加工品であるチョコレートやココアは、
通常牛乳など多くの動物性脂肪を含む形で作られていて、
カロリーも高く脂質も多い、
という点がむしろ糖尿病などの悪化要因になる、
というジレンマがあります。
最近従来のチョコレートをミルクチョコレートとすると、
色々な名称がありますが、
よりカロリーを減らして、カカオの含量を増やした、
ダークチョコレート(これは上記論文の名称です)が登場し、
各メーカーはその健康効果を競って宣伝しています。
ただ、これまでチョコレートの健康効果についての研究は多くありますが、
従来のミルクチョコレートとダークチョコレートの健康効果を、
比較したような研究データは限られています。
そこで今回の研究では、
アメリカで看護師と医療従事者を対象とした、
大規模な疫学研究のデータを活用して、
チョコレートの種類と糖尿病への影響を比較検証しています。
登録の時点で糖尿病などのない、
トータル192208名が解析対象となっています。
その結果、
チョコレートを週に5回以上食べている人は、
殆ど食べていない人と比較して、
その後糖尿病になるリスクが、
10%(95%CI:2から17)有意に低下していていました。
ここでチョコレートの種類毎にみてみると、
ダークチョコレートのみの解析では、
週5回以上食べている人は食べていない人と比較して、
その後糖尿病になるリスクが、
21%(95%CI:5から34%)有意に低下していた一方で、
ミルクチョコレートのみの解析では、
糖尿病リスクの有意な低下は認められませんでした。
またミルクチョコレートの摂取は、
その後の体重増加と関連していましたが、
ダークチョコレートの摂取では、
そうした関連は認められませんでした。
このように、チョコレートの糖尿病予防効果は、
カカオ含量が多くてカロリーの少ない、
ダークチョコレートのみで認められていて、
こうしたデータを踏まえて、
今後より科学的な、
チョコレートの健康効果が確認されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
色々忙しくはしています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

British Medical Journal誌に、
2024年12月4日付で掲載された、
チョコレートの種類と健康効果についての論文です。
チョコレートやココアには、
カカオ由来の生理活性物質(フラボノイド)が多く含まれていて、
代謝改善作用や抗酸化作用、認知症予防など、
多くの健康効果が指摘されています。
糖尿病のような生活習慣病に対しても、
カカオフラボノイドは有効と考えられますが、
その加工品であるチョコレートやココアは、
通常牛乳など多くの動物性脂肪を含む形で作られていて、
カロリーも高く脂質も多い、
という点がむしろ糖尿病などの悪化要因になる、
というジレンマがあります。
最近従来のチョコレートをミルクチョコレートとすると、
色々な名称がありますが、
よりカロリーを減らして、カカオの含量を増やした、
ダークチョコレート(これは上記論文の名称です)が登場し、
各メーカーはその健康効果を競って宣伝しています。
ただ、これまでチョコレートの健康効果についての研究は多くありますが、
従来のミルクチョコレートとダークチョコレートの健康効果を、
比較したような研究データは限られています。
そこで今回の研究では、
アメリカで看護師と医療従事者を対象とした、
大規模な疫学研究のデータを活用して、
チョコレートの種類と糖尿病への影響を比較検証しています。
登録の時点で糖尿病などのない、
トータル192208名が解析対象となっています。
その結果、
チョコレートを週に5回以上食べている人は、
殆ど食べていない人と比較して、
その後糖尿病になるリスクが、
10%(95%CI:2から17)有意に低下していていました。
ここでチョコレートの種類毎にみてみると、
ダークチョコレートのみの解析では、
週5回以上食べている人は食べていない人と比較して、
その後糖尿病になるリスクが、
21%(95%CI:5から34%)有意に低下していた一方で、
ミルクチョコレートのみの解析では、
糖尿病リスクの有意な低下は認められませんでした。
またミルクチョコレートの摂取は、
その後の体重増加と関連していましたが、
ダークチョコレートの摂取では、
そうした関連は認められませんでした。
このように、チョコレートの糖尿病予防効果は、
カカオ含量が多くてカロリーの少ない、
ダークチョコレートのみで認められていて、
こうしたデータを踏まえて、
今後より科学的な、
チョコレートの健康効果が確認されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
認知症を疑う最も初期症状は何か? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Neurology誌に2024年11月6日付で掲載された、
認知症の初期症状についての論文です。
認知症には抗体製剤などの新薬も導入され、
その治療はなるべく早期に開始することが、
その予後の改善に結び付く、
という知見が積み重ねられています。
そのためには、
なるべく早く初期の認知症を診断する必要があります。
ただ、加齢とともに、
脳の働きが低下すること自体は生理的な現象で、
病気ではありませんから、
生理的な脳の機能の低下と、
病的な認知症とを、
どのように鑑別するのかが、
大きな問題となります。
アルツハイマー病などについては、
初期診断のための検査などが開発はされていますが、
非常に高額で特殊な検査であったり、
背中に針を刺すなど、
患者さんへの負担も大きい検査であったりと、
現時点で全ての認知症疑いの患者さんに、
そうした検査を施行することは現実的ではありません。
認知症の初期症状として、
必ず言われることのあるのは「物忘れ」ですが、
それ自体は生理的な加齢現象でも生じる性質のもので、
その初期の段階で、
加齢による生理的な物忘れと、
認知症に伴う進行性の物忘れとを、
症状のみから見分けることは簡単ではありません。
それでは、
何か物忘れ以外に、
認知症の初期を疑う症状はないのでしょうか?
最近注目されている考え方の1つに、
運動認知リスク症候群(Motoric Cognitive Risk Syndrome)があります。
これは物忘れなどの軽度の認知機能低下と、
歩行速度の低下が見られた時に、
その後認知機能低下が進行して、
認知症に移行しやすい、
という考え方です。
2014年のNeurology誌に掲載された論文によると、
運動認知リスク症候群では、
その後の認知症リスクが2倍に高まると報告されています。
https://www.neurology.org/doi/abs/10.1212/WNL.0000000000000717
つまり、
運動認知リスク症候群は、
認知症の前兆というようにも考えられるのです。
歩行速度以外に、
認知症の随伴症状として指摘されることが多いのは、
睡眠の質などの眠りの異常です。
ただ、運動認知リスク症候群と睡眠の質とが、
認知症の初期の兆候として、
互いにどのような関連を持っているのかについては、
あまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
65歳以上で認知症のない445名と登録し、
睡眠の状態と運動認知リスク症候群が、
その後の認知症の進行と、
どのような関連を持っているのかを検証しています。
その結果、中央値で2.9年の観察期間において、
睡眠の質のうち、
昼間の眠気と意欲の低下があると、
その後に運動認知リスク症候群と診断されるリスクが、
関連する因子を補正した結果として、
3.3倍(95%CI:1.5から7.4)有意に増加していることが確認されました。
一方で登録の時点で運動認知リスク症候群の状態にあると、
昼間の眠気と意欲低下は、
運動認知リスク症候群と明確な関連を示しませんでした。
運動認知リスク症候群と睡眠の質との間に、
どのような関係があるのかはまだ不明ですが、
両者には一定の関連があり、
特に昼間の眠気や意欲低下などの症状があって、
その後に物忘れや歩行速度の低下が見られた時には、
認知症へと進行する可能性が高いと考えて、
適切な対応を取る必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

Neurology誌に2024年11月6日付で掲載された、
認知症の初期症状についての論文です。
認知症には抗体製剤などの新薬も導入され、
その治療はなるべく早期に開始することが、
その予後の改善に結び付く、
という知見が積み重ねられています。
そのためには、
なるべく早く初期の認知症を診断する必要があります。
ただ、加齢とともに、
脳の働きが低下すること自体は生理的な現象で、
病気ではありませんから、
生理的な脳の機能の低下と、
病的な認知症とを、
どのように鑑別するのかが、
大きな問題となります。
アルツハイマー病などについては、
初期診断のための検査などが開発はされていますが、
非常に高額で特殊な検査であったり、
背中に針を刺すなど、
患者さんへの負担も大きい検査であったりと、
現時点で全ての認知症疑いの患者さんに、
そうした検査を施行することは現実的ではありません。
認知症の初期症状として、
必ず言われることのあるのは「物忘れ」ですが、
それ自体は生理的な加齢現象でも生じる性質のもので、
その初期の段階で、
加齢による生理的な物忘れと、
認知症に伴う進行性の物忘れとを、
症状のみから見分けることは簡単ではありません。
それでは、
何か物忘れ以外に、
認知症の初期を疑う症状はないのでしょうか?
最近注目されている考え方の1つに、
運動認知リスク症候群(Motoric Cognitive Risk Syndrome)があります。
これは物忘れなどの軽度の認知機能低下と、
歩行速度の低下が見られた時に、
その後認知機能低下が進行して、
認知症に移行しやすい、
という考え方です。
2014年のNeurology誌に掲載された論文によると、
運動認知リスク症候群では、
その後の認知症リスクが2倍に高まると報告されています。
https://www.neurology.org/doi/abs/10.1212/WNL.0000000000000717
つまり、
運動認知リスク症候群は、
認知症の前兆というようにも考えられるのです。
歩行速度以外に、
認知症の随伴症状として指摘されることが多いのは、
睡眠の質などの眠りの異常です。
ただ、運動認知リスク症候群と睡眠の質とが、
認知症の初期の兆候として、
互いにどのような関連を持っているのかについては、
あまり明確なことが分かっていません。
そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
65歳以上で認知症のない445名と登録し、
睡眠の状態と運動認知リスク症候群が、
その後の認知症の進行と、
どのような関連を持っているのかを検証しています。
その結果、中央値で2.9年の観察期間において、
睡眠の質のうち、
昼間の眠気と意欲の低下があると、
その後に運動認知リスク症候群と診断されるリスクが、
関連する因子を補正した結果として、
3.3倍(95%CI:1.5から7.4)有意に増加していることが確認されました。
一方で登録の時点で運動認知リスク症候群の状態にあると、
昼間の眠気と意欲低下は、
運動認知リスク症候群と明確な関連を示しませんでした。
運動認知リスク症候群と睡眠の質との間に、
どのような関係があるのかはまだ不明ですが、
両者には一定の関連があり、
特に昼間の眠気や意欲低下などの症状があって、
その後に物忘れや歩行速度の低下が見られた時には、
認知症へと進行する可能性が高いと考えて、
適切な対応を取る必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
がんが診断されてからの禁煙の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Oncology誌に、
2024年10月31日付で掲載された、
がんが診断されてから禁煙することの意義についての論文です。
喫煙が多くのがんのリスクとなることは、
広く認識されている事実です。
肺癌や喉頭癌などはその代表です。
早期に禁煙をすることで、
その後のがんのリスクが低減することも、
ほぼ実証されている事実です。
この場合の禁煙の有効性というのは、
がんが診断される前の禁煙の実行が想定されています。
それでは、
喫煙をしている人にがんが見つかった場合、
それから禁煙をしても、
がんの予後に影響はあるのでしょうか?
がんの治療をする場合には、
「禁煙はして頂かないと、治療をすることは出来ません」
と言われることが多いかとは思います。
ただ、それを真面目に守る患者さんがいる一方で、
「どうせもう、がんになってしまったのだから、今から禁煙をしても意味がない」
と考える人もいるように思います。
実際にがんになってから禁煙することには、
どの程度の意味があるのでしょうか?
今回の研究はアメリカの単一施設において、
がんと診断をされて以降に、
その施設での禁煙治療を受けた4526名の患者を対象として、
禁煙の開始時期とその継続期間が、
その患者さんの生命予後に与える影響を比較検証しています。
その結果、診断から15年以内に死亡するリスクは、
禁煙失敗群と比較して、
診断から3か月以内に禁煙した場合には25%(95%CI:0.67から0.83)、
6か月以内に禁煙した場合には21%(95%CI:0.71から0.88)、
9か月以内に禁煙した場合には15%(95%CI:0.76から0.95)、
とそれぞれ有意に低下していました。
つまり、がんと診断された以降においても、
早期に禁煙すればするほど、
その後の生命予後には改善が見られた、
という結果です。
勿論健康のためには早く禁煙するに越したことはありませんが、
仮にがんが診断されてからにおいても、
数か月以内に禁煙を実行することは、
長生きに結び付く有効性があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

JAMA Oncology誌に、
2024年10月31日付で掲載された、
がんが診断されてから禁煙することの意義についての論文です。
喫煙が多くのがんのリスクとなることは、
広く認識されている事実です。
肺癌や喉頭癌などはその代表です。
早期に禁煙をすることで、
その後のがんのリスクが低減することも、
ほぼ実証されている事実です。
この場合の禁煙の有効性というのは、
がんが診断される前の禁煙の実行が想定されています。
それでは、
喫煙をしている人にがんが見つかった場合、
それから禁煙をしても、
がんの予後に影響はあるのでしょうか?
がんの治療をする場合には、
「禁煙はして頂かないと、治療をすることは出来ません」
と言われることが多いかとは思います。
ただ、それを真面目に守る患者さんがいる一方で、
「どうせもう、がんになってしまったのだから、今から禁煙をしても意味がない」
と考える人もいるように思います。
実際にがんになってから禁煙することには、
どの程度の意味があるのでしょうか?
今回の研究はアメリカの単一施設において、
がんと診断をされて以降に、
その施設での禁煙治療を受けた4526名の患者を対象として、
禁煙の開始時期とその継続期間が、
その患者さんの生命予後に与える影響を比較検証しています。
その結果、診断から15年以内に死亡するリスクは、
禁煙失敗群と比較して、
診断から3か月以内に禁煙した場合には25%(95%CI:0.67から0.83)、
6か月以内に禁煙した場合には21%(95%CI:0.71から0.88)、
9か月以内に禁煙した場合には15%(95%CI:0.76から0.95)、
とそれぞれ有意に低下していました。
つまり、がんと診断された以降においても、
早期に禁煙すればするほど、
その後の生命予後には改善が見られた、
という結果です。
勿論健康のためには早く禁煙するに越したことはありませんが、
仮にがんが診断されてからにおいても、
数か月以内に禁煙を実行することは、
長生きに結び付く有効性があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
SGLT2阻害剤の腎(尿路)結石症再発に対する有効性(2024年カナダの疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

British Medical Journal誌に、
2024年10月30日付で掲載された、
糖尿病の飲み薬の、
再発性の腎(尿路)結石症に対する有効性を検証した論文です。
SGLT2阻害剤は最近最も注目されている、
2型糖尿病の治療薬です。
この薬は尿へのブドウ糖の排泄を増加させる作用の薬です。
それにより確かに血糖値は低下しますが、
尿糖が増加することは尿路や陰部の感染のリスクを高めますし、
尿量が増加して脱水のリスクも高めますから、
使用開始当初は、
あまり良い薬のようには思えませんでした。
この薬が注目されたのは、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクを、
有意に30%以上低下させるという画期的なデータが、
エンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
報告されたからです。
その後この心血管疾患の生命予後改善効果の多くは、
心不全の予後改善による部分が大きいことが解析され、
SGLT2阻害剤は心不全の治療薬としても、
有効な可能性が開かれたのです。
最近ではそれ以外に、
慢性腎臓病に対する進行予防効果も、
複数の臨床データで実証されています。
さて、2型糖尿病では腎結石や尿路結石のリスクが、
増加することも知られています。
そして最近SGLT2阻害剤の使用が、
糖尿病の患者さんにおける腎結石のリスクを、
低下させるのではないかというデータが報告されて、
注目を集めています。
その代表的なものの1つはこちらですが、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35290464/
これまでの臨床試験のデータを解析した結果として、
エンパグリフロジンの使用により、
腎結石の発症は40%有意に低下していました。
また、2024年の1月に発表された、
アメリカの健康保険データを解析した論文では、
2型糖尿病で新規にSGLT2阻害剤を開始した患者さんの、
その後の腎結石罹患率を、
GLP-1アナログもしくはDPP4阻害剤という、
いずれも広く使用されている糖尿病治療薬を開始した患者さんと、
比較検証しています。
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2814491#:~:text=Sodium%2Dglucose%20cotransporter%202%20inhibitors%20(SGLT2is)%2C%20a%20newer,14%20and%20increasing%20urine%20volume.
358203名のSGLT2阻害剤新規使用者を、
年齢などをマッチングさせた、
同数のGLP-1アナログ新規使用者と比較し、
更に331028名のSGLT2阻害剤新規使用者を、
こちらも同数のDPP4阻害剤の新規使用者と、
腎結石のリスクについて比較検証したところ、
観察期間の中間値は192日で、
SGLT2阻害剤使用者は、
GLP-1アナログ使用者と比較して31%(95%CI:0.67から0.72)、
DPP4阻害剤使用者と比較して26%(95%CI:0.71から0.77)、
腎結石のリスクがそれぞれ有意に低下していました。
この大規模な疫学データにおいても、
他のインクレチン関連の治療薬と比較して、
SGLT2阻害剤の使用は、
比較的短期で腎結石のリスクを明確に低下させていました。
ただ、腎(尿路)結石は再発の多い病気として知られていますが、
SGLT2阻害剤が腎結石の再発のリスクを低下させるか、
という点についてはまだ明らかではありません。
また、尿量の増加や尿のPHの変化が、
腎結石予防効果のメカニズムとして推測されていますが、
これは痛風発作にも影響を与える可能性があります。
ただ、糖尿病に合併することの多い痛風に対する、
SGLT2阻害剤の影響についてもまだ明らかではありません。
そこで今回の研究ではカナダにおいて、
健康統計のデータを活用することで、
この問題の検証を行っています。
対象は腎結石と2型糖尿病を合併している20146名で、
そこには痛風を合併している患者さんも含まれています。
関連する因子を補正して解析した結果、
GLP1アナログを使用した場合と比較して、
SGLT2阻害剤を使用している患者さんは、
腎結石の再発のリスクが33%(95%CI:0.57から0.79)、
有意に低下していました。
また痛風発作のリスクについても、
GLP1アナログを使用した場合と比較して、
SGLT2阻害剤を使用している患者さんは、
発作のリスクが28%(95%CI:0.54から0.95)、
有意に低下していました。
そのメカニズムはまだ不明の点もありますが、
今回の大規模な検証においても、
SGLT2阻害剤の腎結石症予防効果は明確で、
今回更にその再発の予防効果と、
合併する痛風発作の予防効果も確認されました。
今後は糖尿病の患者さん以外にも、
その有効性が認められるかどうかを含めて、
より視点を広げた検証に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

British Medical Journal誌に、
2024年10月30日付で掲載された、
糖尿病の飲み薬の、
再発性の腎(尿路)結石症に対する有効性を検証した論文です。
SGLT2阻害剤は最近最も注目されている、
2型糖尿病の治療薬です。
この薬は尿へのブドウ糖の排泄を増加させる作用の薬です。
それにより確かに血糖値は低下しますが、
尿糖が増加することは尿路や陰部の感染のリスクを高めますし、
尿量が増加して脱水のリスクも高めますから、
使用開始当初は、
あまり良い薬のようには思えませんでした。
この薬が注目されたのは、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクを、
有意に30%以上低下させるという画期的なデータが、
エンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
報告されたからです。
その後この心血管疾患の生命予後改善効果の多くは、
心不全の予後改善による部分が大きいことが解析され、
SGLT2阻害剤は心不全の治療薬としても、
有効な可能性が開かれたのです。
最近ではそれ以外に、
慢性腎臓病に対する進行予防効果も、
複数の臨床データで実証されています。
さて、2型糖尿病では腎結石や尿路結石のリスクが、
増加することも知られています。
そして最近SGLT2阻害剤の使用が、
糖尿病の患者さんにおける腎結石のリスクを、
低下させるのではないかというデータが報告されて、
注目を集めています。
その代表的なものの1つはこちらですが、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35290464/
これまでの臨床試験のデータを解析した結果として、
エンパグリフロジンの使用により、
腎結石の発症は40%有意に低下していました。
また、2024年の1月に発表された、
アメリカの健康保険データを解析した論文では、
2型糖尿病で新規にSGLT2阻害剤を開始した患者さんの、
その後の腎結石罹患率を、
GLP-1アナログもしくはDPP4阻害剤という、
いずれも広く使用されている糖尿病治療薬を開始した患者さんと、
比較検証しています。
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2814491#:~:text=Sodium%2Dglucose%20cotransporter%202%20inhibitors%20(SGLT2is)%2C%20a%20newer,14%20and%20increasing%20urine%20volume.
358203名のSGLT2阻害剤新規使用者を、
年齢などをマッチングさせた、
同数のGLP-1アナログ新規使用者と比較し、
更に331028名のSGLT2阻害剤新規使用者を、
こちらも同数のDPP4阻害剤の新規使用者と、
腎結石のリスクについて比較検証したところ、
観察期間の中間値は192日で、
SGLT2阻害剤使用者は、
GLP-1アナログ使用者と比較して31%(95%CI:0.67から0.72)、
DPP4阻害剤使用者と比較して26%(95%CI:0.71から0.77)、
腎結石のリスクがそれぞれ有意に低下していました。
この大規模な疫学データにおいても、
他のインクレチン関連の治療薬と比較して、
SGLT2阻害剤の使用は、
比較的短期で腎結石のリスクを明確に低下させていました。
ただ、腎(尿路)結石は再発の多い病気として知られていますが、
SGLT2阻害剤が腎結石の再発のリスクを低下させるか、
という点についてはまだ明らかではありません。
また、尿量の増加や尿のPHの変化が、
腎結石予防効果のメカニズムとして推測されていますが、
これは痛風発作にも影響を与える可能性があります。
ただ、糖尿病に合併することの多い痛風に対する、
SGLT2阻害剤の影響についてもまだ明らかではありません。
そこで今回の研究ではカナダにおいて、
健康統計のデータを活用することで、
この問題の検証を行っています。
対象は腎結石と2型糖尿病を合併している20146名で、
そこには痛風を合併している患者さんも含まれています。
関連する因子を補正して解析した結果、
GLP1アナログを使用した場合と比較して、
SGLT2阻害剤を使用している患者さんは、
腎結石の再発のリスクが33%(95%CI:0.57から0.79)、
有意に低下していました。
また痛風発作のリスクについても、
GLP1アナログを使用した場合と比較して、
SGLT2阻害剤を使用している患者さんは、
発作のリスクが28%(95%CI:0.54から0.95)、
有意に低下していました。
そのメカニズムはまだ不明の点もありますが、
今回の大規模な検証においても、
SGLT2阻害剤の腎結石症予防効果は明確で、
今回更にその再発の予防効果と、
合併する痛風発作の予防効果も確認されました。
今後は糖尿病の患者さん以外にも、
その有効性が認められるかどうかを含めて、
より視点を広げた検証に期待をしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
餅イレウスの事例 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2024年のClinical Case Reports誌に掲載された、
餅によって腸閉塞を来した事例の報告です。
正月の前後に救急受診の原因となる病気の1つが、
餅による窒息や腸閉塞です。
窒息は粘り気のある餅が咽喉に張り付いて、
呼吸が出来なくなってしまうことですが、
それに比べて比較的知られていない腸閉塞(イレウス)は、
噛まずに飲み込んだ餅が、
咽喉はそのまま通過したものの、
硬くなって腸に詰まってしまうことです。
この餅イレウスの報告は、
調べた範囲では日本での報告があるだけです。
上記文献はその中では新しいもので、
香川大学の研究者によるものです。
事例は2度お腹の手術の手術歴のある、
61歳の男性で、
餅の入ったお雑煮のような煮物を食べてから9時間後に、
吐き気を訴えて救急医療機関を受診しました。
腹痛は右上腹部で比較的軽度のもので、
診察上は明確なイレウス所見は認めませんでしたが、
レントゲン検査を施行したところ、
ニボーという典型的なイレウスの所見を認めました。
こちらをご覧ください。

こちらは上記論文のものではありませんが、
クリニックで診断された同様のイレウスのレントゲン所見です。
診断のためCT検査を施行したところ、
餅イレウスに典型的な所見が見つかりました。
それがこちらです。(画像は上記論文よりの引用です)

白い矢印の先の部分に、
白い4センチほどの長細い構造が見えます。
これが硬くなった餅で、
それにより腸の流れが悪くなって、
餅イレウスと呼ばれる状態が生じていたのです。
稀に手術の必要となる重症例もありますが、
殆どの餅イレウスは、
絶食と安静のみで改善します。
報告された事例も鼻からチューブを挿入し、
3日間絶食することにより改善しました。
一旦詰まった餅の塊も、
徐々に肛門の方への移動し、
便と一緒に排泄されることが多いようです。
これとは別個に2011年には長岡赤十字病院において、
2003年から2010年に経験した、
14例の餅イレウスをまとめた論文が掲載されていて、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22082884/
そのうちの10例は12月から1月に集中していました。
その全例が手術は要さず改善しています。
それでは今日のまとめです。
餅をあまり噛まずに丸飲みすることにより、
腸に一時的に詰まってイレウスの原因となることがあります。
特にお腹の手術をしている高齢者に多いので、
お餅は極力細かく切って、
ゆっくりと食べて頂くことが安全です。
お餅を食べてから数時間後に吐き気や腹痛が見られた時には、
この病気を疑って、CT検査の可能な医療機関を受診する必要があります。
これからの時期、
皆さんもご注意下さい。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。

2024年のClinical Case Reports誌に掲載された、
餅によって腸閉塞を来した事例の報告です。
正月の前後に救急受診の原因となる病気の1つが、
餅による窒息や腸閉塞です。
窒息は粘り気のある餅が咽喉に張り付いて、
呼吸が出来なくなってしまうことですが、
それに比べて比較的知られていない腸閉塞(イレウス)は、
噛まずに飲み込んだ餅が、
咽喉はそのまま通過したものの、
硬くなって腸に詰まってしまうことです。
この餅イレウスの報告は、
調べた範囲では日本での報告があるだけです。
上記文献はその中では新しいもので、
香川大学の研究者によるものです。
事例は2度お腹の手術の手術歴のある、
61歳の男性で、
餅の入ったお雑煮のような煮物を食べてから9時間後に、
吐き気を訴えて救急医療機関を受診しました。
腹痛は右上腹部で比較的軽度のもので、
診察上は明確なイレウス所見は認めませんでしたが、
レントゲン検査を施行したところ、
ニボーという典型的なイレウスの所見を認めました。
こちらをご覧ください。

こちらは上記論文のものではありませんが、
クリニックで診断された同様のイレウスのレントゲン所見です。
診断のためCT検査を施行したところ、
餅イレウスに典型的な所見が見つかりました。
それがこちらです。(画像は上記論文よりの引用です)

白い矢印の先の部分に、
白い4センチほどの長細い構造が見えます。
これが硬くなった餅で、
それにより腸の流れが悪くなって、
餅イレウスと呼ばれる状態が生じていたのです。
稀に手術の必要となる重症例もありますが、
殆どの餅イレウスは、
絶食と安静のみで改善します。
報告された事例も鼻からチューブを挿入し、
3日間絶食することにより改善しました。
一旦詰まった餅の塊も、
徐々に肛門の方への移動し、
便と一緒に排泄されることが多いようです。
これとは別個に2011年には長岡赤十字病院において、
2003年から2010年に経験した、
14例の餅イレウスをまとめた論文が掲載されていて、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22082884/
そのうちの10例は12月から1月に集中していました。
その全例が手術は要さず改善しています。
それでは今日のまとめです。
餅をあまり噛まずに丸飲みすることにより、
腸に一時的に詰まってイレウスの原因となることがあります。
特にお腹の手術をしている高齢者に多いので、
お餅は極力細かく切って、
ゆっくりと食べて頂くことが安全です。
お餅を食べてから数時間後に吐き気や腹痛が見られた時には、
この病気を疑って、CT検査の可能な医療機関を受診する必要があります。
これからの時期、
皆さんもご注意下さい。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。