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ケラリーノ・サンドロヴィッチ「世界は笑う」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
世界は笑う.jpg
ケラさんの新作が今シアターコクーンで上演されています。

千葉雄大さんと瀬戸康史さんが主役を演じ、
伊藤沙莉さん、勝地涼さんと人気者が顔を揃えます。
勿論、大倉孝二さんや犬山イヌコさん、山内圭哉さん、マギーさんなど、
ケラ芝居お馴染みの面々も脇を支えています。

舞台は昭和30年代初頭に設定され、
高度成長に差し掛かる日本において、
テレビの時代が始まり、
舞台の喜劇人が次第に没落する中、
天才肌の喜劇役者で作家の千葉さんが、
理想の笑いを求めて葛藤し自滅する姿を描きます。

ケラさんが自分の父親くらいの世代を中心に据えた群像劇で、
喜劇とは何か、笑いに人生を懸けるとはどういうことかを、
真摯に追及した力作です。

舞台装置はちょっと蜷川さんを思わせるような大規模なもので、
特に2幕の長野の旅館から、
東京の飲み屋街に舞台が移るところは、
そのまま舞台上で大規模な転換を見せるという、
もろ蜷川演出という感じでした。

例によって上演時間は休憩20分を含めて3時間45分という、
非常に長大なもので、
特に前半はそれだけで2時間を超えるという、
観客がその集中力を試されるような設定です。
ただ、今回は集団劇としての設定も分かり易く、
ケラさんとしては、
たとえば演舞場などで上演される新派の芸道ものに、
かなり寄せた内容になっているので、
それほどの苦痛なくお芝居の時間に身を委ねることが出来ました。

前半で喜劇の劇団の、
それなりに元気が良かった時代を描き、
後半は長野の旅館に舞台を移して、
登場人物達がそれぞれに苦悩して自滅する姿を、
非常に冷徹なタッチで描いて行きます。
この後半が非常に優れていて、
テネシー・ウィリアムスを彷彿とさせるような部分もあり、
大倉孝二さん演じる双子の兄弟の不気味な造形など、
その人物造形にも魅力的な部分が多くありました。

役者は主役2人がやや弱いという感じがあって、
特に千葉さんの役は、
ケラさんの筆があて書きを離れて、
走ったしまったという感じがありました。
千葉さん自身は非常に頑張っていたと思うのですが、
正直別のキャストでもう一度観たいな、
という思いはありました。
伊藤沙莉さんの舞台は何度か見ましたが、
どうもまだ舞台で本領発揮とはいかないようです。

脇役陣の芝居は重厚かつ軽妙で見どころが多く、
特に笑いを封印して不気味な兄弟二役を、
ムードたっぷりに演じた大倉孝二さんが良かったと思います。

非常に多彩な活動を続けるケラさんですが、
今回の大作はその1つの流れとして、
「日本の喜劇人と笑いの本質を描く」という作品群の、
現時点での集大成として、
ケラさんの作品群の中でも、
特に印象的なものの1つになっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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