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飲水量の増加と健康効果(2024年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
飲水量と健康への影響.jpg
JAMA Network Open誌に、
2024年11月25日付で掲載された、
飲水を増やすことの健康効果についての論文です。

水を多く飲むことが健康に良い、
というような言説は多く認められます。

勿論高度の脱水状態は、
熱中症などの事例を見ても分かるように、
時に命に関わるような事態を招きます。

しかしこれは、
敢くまで高度の脱水状態の話です。

普段普通に食事を摂り、
普通に咽喉が渇けば水を飲むことが出来る環境で、
より沢山の水を飲んだ方が健康に良いかどうか、
という点については科学的にも見解は分かれています。

日本では国土交通省が、
「健康のため水を飲もう」推進運動というのを提唱していて、
脱水が多くの病気に繋がることを啓蒙し、
もっと意識的に水を飲もう、
という運動をしています。

ただ、これは具体的な数値目標がある、
というようなものではなく、
1日に人間は食事などを含めて、
2.5リットルの水分が必要ですよ、
という説明があり、
入浴後や朝には、
コップ1杯の水を飲もう、
というスローガンなどが示されています。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/stf_seisakunitsuite_bunya_topics_bukyoku_kenkou_suido_nomou_index.html#01

全米医学アカデミーは生理学的データを元にして、
成人男性で1日3リットル強、
成人女性で1日2リットル強の、
水分を摂ることが身体には必要としています。
これは飲水のみではなく食事も含めたものです。
https://nap.nationalacademies.org/read/10925/chapter/6

より一般的には、
「1日1.5から2リットルの水を飲みましょう」
「寝る前には1杯の水を飲みましょう」
というような健康啓蒙的な指針が、
広く人口に膾炙しています。

しかし、実際にこうした習慣により、
どの程度の健康効果があるのでしょうか?

それはどの程度科学的に証明されているのでしょうか?

今回の研究では、
これまでに行われた、
飲水量変更の健康効果についての、
介入試験という精度の高い臨床研究のデータを、
トータルで検証するシステマティックレビューという方法で、
現時点で分かっていることのまとめを行っています。

これまでに施行された18の臨床試験データを検討したところ、
飲水量の増加により、
複数の研究で体重の減少効果と、
腎尿路結石の予防効果が認められました。
単独の研究のみで有効性が報告されているのは、
片頭痛予防、低血圧、糖尿病患者さんの血糖コントロール、
尿路感染症予防の4つの病態でした。

この場合の飲水量の増加というのは、
1日2リットル以上の飲水量の確保、
もしくは1から1.5リットルの水を、
普段の生活に追加で摂取する、
という条件で行われていることが多数でした。

総じて良く言われる心臓病や脳梗塞などの予防に、
水を多く飲むことの効果が、
精度の高い臨床試験で確認された、
ということはなく、
これは現時点では、
「脱水を予防しましょう」というのと、
同じくらいの根拠しかないと考えて良いようです。

水を飲むと体重が減る、
というのはやや奇異な感じもしますが、
実際に普段の生活で、
急に1リットルの水分を追加で飲むと、
胃に水が溜まって食欲が低下することは、
想定出来ることのようにも思います。

このように、
余分に水分を摂ることの健康効果については、
それほど科学的に証明されている、
という事項ではなく、
敢くまで脱水予防という観点で、
考えて頂くのが現状では良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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