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新型コロナ追加接種後の免疫抑制剤一時中止の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチンとメトトレキセート.jpg
The Lancet Respiratory Medicine誌に、
2022年6月27日ウェブ掲載された、
免疫抑制剤を使用している患者さんでの、
新型コロナワクチンの有効性を増加させるための、
新しい試みについての論文です。

新型コロナウイルスに限らず、
ワクチンの有効性というものは、
接種された側の身体の免疫に影響されます。
そこで問題となるのは免疫が生まれつき低下していたり、
治療のために免疫を抑制するような薬剤を、
使用している患者さんの場合です。

免疫が低下していると、
感染症も重症化しやすいのですが、
ワクチンの効果もそれだけ出にくい、
というジレンマがあるのです。

そこで、勿論薬剤や事例にもよりますが、
ワクチン接種の前後で一時的に薬剤を中止することで、
ワクチンの効果を高めるという方法が検討されています。

メトトレキセートは歴史の長い免疫抑制剤の1つで、
主に関節リウマチの治療や、
尋常性乾癬という皮膚疾患の治療などに使用されています。
抗癌剤の1つとして使用されることもあります。

しかし、メトトレキセートを使用している患者さんでは、
新型コロナワクチン接種後の抗体価の上昇が低く、
その有効性も低いことが報告されています。

そこでワクチン接種前後の短期間のみ、
メトトレキセートを中止し、その後再開することで、
ワクチンの有効性を確保することが出来ないか、
という考え方が生まれ、検証が行われています。

この研究に先行して韓国において、
ワクチン接種前の4週間薬剤を中止する、
という臨床研究が行われましたが、
その結果では明確な抗体価の上昇は確認されませんでした。

今回の研究はイギリスの複数施設において、
主に関節リウマチや尋常性乾癬の治療に対し、
週に25㎎以下のメトトレキセートを、
少なくとも3か月以上継続的に使用していて、
これまでにいずれかの新型コロナワクチンを2回接種している、
トータル340名の患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
3回目のワクチン接種時に、
一方はそのままメトトレキセートの使用を継続し、
もう一方はワクチン接種と同時にメトトレキセートを中止し、
その後2週間中止の上再開して、
接種後4週間の時点での抗体価を比較しています。
これは患者さんにも薬が中止されたかどうかを、
伝えて行っている試験です。

その結果、
メトトレキセートを継続した場合と比較して、
接種後2週間のみ中止することにより、
GMRという指標で評価された抗体価は、
2.19倍(95%CI:1.57から3.04)有意に上昇していました。

つまり、接種後2週間のみの中断によって、
ワクチンによる抗体上昇反応を、
2倍以上に増加させることが出来たのです。

これはまだ少数例での検証で、
偽薬を使用したような厳密な方法ではなく、
中断により元の病気が悪化するリスクが高いようなケースでは、
使用は出来ませんが、
2週間という短期間のみの中止により、
これだけ明確な抗体上昇が認められたという意義は大きく、
今後使用薬剤と病状に合わせた、
ワクチン接種時の対処法について、
より個別的かつ厳密な検証が重ねられ、
免疫抑制剤を使用中の患者さんへの、
新型コロナワクチン接種の効果を最大限にするための、
化学的な方法が確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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