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ゴキブリコンビナート「こえだめアンダンテ」(ネタバレ注意) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
昨日遺伝子検査を受けた方の結果説明と届け出などの対応は、
結果が出次第行う予定です。
今日は実家の秦野に少し帰ります。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
こえだめアンダンテ.jpg
診療と発熱外来で疲弊していて、
殆ど予定はキャンセルしていたのですが、
日本に残る最後のアングラ、ゴキブリコンビナートが、
久しぶりの「順路演劇」を上演すると聞き、
「これだけは何があっても駆けつけねば」
と思って、予定をやりくりして、
下北沢のライブハウスに足を運びました。

「順路演劇」というのは、
迷路のような中に観客が入り、
そこで演劇を体験するという、
お化け屋敷のようなリアル脱出ゲームのようなスタイルのお芝居で、
その昔寺山修司の天井桟敷が、
日本では限定的にその要素を持ったお芝居を上演し、
海外では本格的な迷路演劇が上演された、
というように記録されています。
ただ、実際にはどのようなものであったのか、
あまり定かではありません。

2015年の2月に今は無きタイニーアリスという小劇場で、
「ゴキブリハートカクテル」という順路演劇が上演され、
それが僕にとってのゴキブリコンビナートとの初対面でしたが、
非常に素晴らしくワクワクする体験で感銘を受けました。

その後はしばらくこうした順路演劇の公演はなかったので、
内心残念に思っていたのですが、
今回久しぶりに復活すると聞いて、
居ても立ってもいられない気分になったのです。

今回もとても良かったですよ。

スケール感からすると、
「ゴキブリハートカクテル」の方が上かな、
というようには思うのですが、
少し段取りの悪さはあったものの、
いつもの出演者の皆さんが、
ミニマルな迷宮世界の中で本当に生き生きと躍動していました。
キャストの全てが人間ならざる異形を演じ、
その世界の中に入り込んで、
目の前でその世界を体感するという喜び。
これこそが演劇の原体験であると感じました。

以下少しネタバレがあります。
この作品は絶対に予備知識なく体験した方が良いので、
鑑賞(体験)予定の方は体験後にお読み下さい。

よろしいでしょうか?

今回は2人一組で10分おきに入場する、
という形式です。

「ゴキブリハートカクテル」の時は、
妻と2人で体験したのですが、
妻は危うく怪我をしそうになってしまったので、
今回は僕1人で参戦しました。
おひとり様の若い女性の方がいて、
2人でペアを組んで中に入りました。

村を襲う鬼を退治するというミッションに挑むのですが、
途中で2人ははぐれてしまい、
1人ずつの冒険の旅の後で、
再会して最後のミッションに挑戦する、
という筋立てになっています。
まあいろんなものを掛けられたりするのだろうな、
という覚悟はしていて、
ポンチョも持参はしていたのですが、
裸足で入れと指示され、
ずぶずぶの沼を這いまわるのはかなり過酷で、
想像していたよりグチョグチョになりました。
ただ、最後に休憩場所が用意されているなど、
配慮はなかなかきめ細やかです。

戦う武器として巨大な男性シンボルを渡されるのですが、
それを最後に次の客に手渡すという段取りになっていて、
その武器が循環して観客の冒険のバトンになっている、
という点が巧緻な仕掛けです。
ミッションをクリアする毎にカードを集めて、
それが揃うと鬼を退治する切り札になるという趣向は、
脱出ゲームのパターンですが、
登場する怪物たちや異形との掛け合いが楽しく、
メインは水の貯められた沼の部屋で、
膝まで水につかり、途中から雨も降る中、
本当にずぶ濡れになりながらアイテムを探す羽目になります。

ラストには怪物の独白があって、
そこで哀愁漂う音効がラジカセから流れます。
前回も感じたのですが、
こうしたところの旅の終わりの哀愁のようなものが、
この作品を単なる脱出ゲームを超えた、
「体感演劇」にしているのですね。
アングラ演劇の神髄に触れた思いがしました。

控え目に言って、最高です。

今のゴキブリコンビナートは、
こうしたお芝居が合っていると思うのですね。

大空間のお芝居も確かに良いのですが、
全方向に大声を上げて、という感じになるので、
役者さんもかなりしんどそうですし、
お客のこちら側も、
遠巻きに見るような感じになって、
それほどの臨場感を感じないのですね。

その点今回のような順路演劇は、
本当に目の前で自分を相手に役者さんが芝居をしてくれるので、
真の意味で体感的ですし、
とても贅沢な感じがします。
演技も声を張り上げたりする必要がないので、
台詞も自然で無理がないのですね。
観客も役者さんも自然体で向き合えるというのが、
順路演劇の本当の魅力です。
最後は主催のDrエクアドルさんに、
即席の演技指導までしてもらえるのですから、
これ以上のご褒美はありません。

そんな訳で語り出したらなかなか止まらない感じなのですが、
キャスト、スタッフのご苦労は並大抵のものではないと思いますが、
是非次回も巡回演劇の、
傑作を見せて欲しいと、
切に願ってやみません。

疲弊した日常の中で、
少しだけ元気をもらいました。

ありがとうございます。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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