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DPP4阻害剤と胆嚢疾患リスク(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
DPP4阻害剤と胆のう疾患リスク.jpg
British Medical Journal誌に2022年6月28日掲載された、
糖尿病の治療薬と胆嚢や胆道の病気のリスクとの、
関連についての論文です。

DPP4-阻害剤とGLP-1アナログは、
まとめてインクレチン関連薬と呼ばれ、
低血糖症状を起こしにくく安全に使用可能なため、
2型糖尿病の治療において、
広く使用されている薬剤です。

特にDPP-4阻害剤は、
発売当初から内服薬で使いやすく、
日本では糖尿病治療の第一選択薬の1つとなっています。

DPP-4阻害剤は前述のように、
副作用や有害事象の少ない薬剤ですが、
臨床試験の段階から胆嚢炎や胆石症などの、
胆道系疾患のリスク増加が指摘されていました。

今回の研究は、
これまでの介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験のデータを、
まとめて解析する、
システマティックレビューとネットワークメタ解析という手法で、
この問題の検証を行ったものです。

これまでの82の介入試験に含まれる、
トータルで104833名の患者データをまとめて解析したところ、
非インクレチン薬もしくは偽薬を使用した場合と比較して、
DPP-4阻害剤の継続的使用は、
胆嚢と胆道疾患のリスクを1.22倍(95%CI:1.04から1.43)、
有意に増加していました。
その差は年間1万人当たり11件と算出されました。

疾患毎のリスクを算出してみると、
胆嚢炎のリスクは1.43倍(95%CI:1.14から1.79)と、
より高く認められましたが、
胆石症やそれ以外の胆道疾患のリスクについては、
有意な増加は認められませんでした。

このDPP-4阻害剤による胆嚢と胆道疾患のリスク増加は、
薬剤の26週以上の長期の継続使用により、
有意な差となっていました。

薬剤毎のリスクを比較したネットワークメタ解析では、
DPP-4阻害剤はSGLT2阻害剤より、
胆嚢と胆道疾患のリスクは増加していましたが、
GLP-1アナログとの比較では、
有意な差は認められませんでした。

つまり、
DPP-4阻害剤には、
主に半年以上の継続使用において、
胆嚢炎のリスクを増加させる可能性があり、
GLP-1アナログとのリスクの違いはないことより、
それはインクレチン関連薬そのものの、
特質である可能性が高い、
ということになります。

その原因は正確には不明ですが、
インクレチンのGLP-1自体に、
胆嚢の働きやその収縮能を、
抑制するような働きがあることが指摘されていて、
それが長期の使用継続により、
胆嚢の炎症に結び付く可能性が想定されています。

これはおそらくは、
薬剤使用開始以前の、
胆嚢の状態とも関連のある現象と考えられ、
インクレチン関連薬を継続使用する際には、
胆嚢炎のリスクを若干ながら増加させることを認識して、
定期的に胆嚢の状態を確認して、
そのリスクに備える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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