新型コロナウイルス感染症の集団免疫 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はインフルエンザワクチン接種などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2020年10月19日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の集団免疫についての解説記事です。
新型コロナウイルスに限らず、
全ての感染症はある集団において、
一定の比率以上の人が免疫を獲得している状態では、
少なくともクラスターと呼ばれるような、
大規模な感染を起こすことはありません。
これを極端な言い方で言えば、
「感染症を集束させるには、みんなで罹ってしまえばいいのだ」
ということになります。
確かにそれが殆どの人で軽く終わる病気であり、
感染力もそれほど強くないと仮定すれば、
それも一理ある考え方であるということは言えます。
ワクチンというのは主にその目的のために接種するものです。
病原体を弱めたり、その一部分のみを使用したりすることにより、
その感染症の症状を強く発現することなく、
免疫を獲得することを目的とした予防法です。
これは端的に言えば、
「その病気に軽く罹る」ということを、
科学的に達成しようとしたものです。
新型コロナウイルス感染症が、
欧米で急激な感染拡大を示した時期に、
感染拡大を防ぐのではなく、
健常な人はむしろ積極的に接触を繰り返して、
集団の抗体保有率を高めれば、
結果として集団免疫が成立して感染は集束する、
という考え方が一部で広がり、
スウェーデンではそれに似た試みが、
国家レベルで行われましたが、
現状では通常に近い感染対策に変更されているようです。
集団免疫が成立するかどうかは、
その病気の感染の広がりの強さで決まります。
その指標として通常使用されるのが、
それは基礎再生産数(R0)という指標です。
R0というのは、
その時点で1人の患者が何人に感染を広げるのかを、
示す数値です。
新型コロナウイルス感染症のR0は、
これまでのところ2から3と推測されています。
この数値が1を上回っている限り感染は拡大します。
従って、感染を封じ込めるためには、
感染者を隔離するなどして、
この数値を1に近づけ、それより低下させる、
という必要がある訳です。
ここで集団免疫により感染を集束させるためには、
人口の50から67%が感染して免疫を獲得しないといけない、
と計算されます。
これをアメリカの例で考えると、
現状の抗体保有率はまだ10%に満たないため、
それを約60%にするためには、
今後数十万人以上の追加死亡を発生させないと、
達成は出来ないということになります。
これはどう考えても現実的な対策とは言えません。
当面集団免疫という考え方は、
現実的な感染集束法とは言えませんが、
今後ワクチンが使用可能となった場合には、
その有効性の1つの指標として、
議論されるようになるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はインフルエンザワクチン接種などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2020年10月19日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の集団免疫についての解説記事です。
新型コロナウイルスに限らず、
全ての感染症はある集団において、
一定の比率以上の人が免疫を獲得している状態では、
少なくともクラスターと呼ばれるような、
大規模な感染を起こすことはありません。
これを極端な言い方で言えば、
「感染症を集束させるには、みんなで罹ってしまえばいいのだ」
ということになります。
確かにそれが殆どの人で軽く終わる病気であり、
感染力もそれほど強くないと仮定すれば、
それも一理ある考え方であるということは言えます。
ワクチンというのは主にその目的のために接種するものです。
病原体を弱めたり、その一部分のみを使用したりすることにより、
その感染症の症状を強く発現することなく、
免疫を獲得することを目的とした予防法です。
これは端的に言えば、
「その病気に軽く罹る」ということを、
科学的に達成しようとしたものです。
新型コロナウイルス感染症が、
欧米で急激な感染拡大を示した時期に、
感染拡大を防ぐのではなく、
健常な人はむしろ積極的に接触を繰り返して、
集団の抗体保有率を高めれば、
結果として集団免疫が成立して感染は集束する、
という考え方が一部で広がり、
スウェーデンではそれに似た試みが、
国家レベルで行われましたが、
現状では通常に近い感染対策に変更されているようです。
集団免疫が成立するかどうかは、
その病気の感染の広がりの強さで決まります。
その指標として通常使用されるのが、
それは基礎再生産数(R0)という指標です。
R0というのは、
その時点で1人の患者が何人に感染を広げるのかを、
示す数値です。
新型コロナウイルス感染症のR0は、
これまでのところ2から3と推測されています。
この数値が1を上回っている限り感染は拡大します。
従って、感染を封じ込めるためには、
感染者を隔離するなどして、
この数値を1に近づけ、それより低下させる、
という必要がある訳です。
ここで集団免疫により感染を集束させるためには、
人口の50から67%が感染して免疫を獲得しないといけない、
と計算されます。
これをアメリカの例で考えると、
現状の抗体保有率はまだ10%に満たないため、
それを約60%にするためには、
今後数十万人以上の追加死亡を発生させないと、
達成は出来ないということになります。
これはどう考えても現実的な対策とは言えません。
当面集団免疫という考え方は、
現実的な感染集束法とは言えませんが、
今後ワクチンが使用可能となった場合には、
その有効性の1つの指標として、
議論されるようになるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。