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中性脂肪高値に伴う急性膵炎とその予防 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
トリグリセリドと膵炎.jpg
BMJ誌に2020年10月12日ウェブ掲載された、
中性脂肪の高値に伴う健康障害と、
その治療についてのレビューです。

脂質異常症のうち、
コレステロールの高値が動脈硬化に係わることは、
実証されていて、
その治療により動脈硬化性疾患の予防になることも、
ほぼ確立された科学的事実です。

ただ、コレステロールとともに血液の脂の成分である、
中性脂肪については、
その病的意義や治療の有効性が、
確立されているとは言い難い側面があります。

血液の中性脂肪の正常値を、
150mg/dL未満として、
それ以上を高トリグリセリド血症とすることについては、
国内外のガイドラインにおいて一致していますが、
中性脂肪は食事の影響が大きく、
その数値は大きく変動するので、
どのレベル以上を治療域とするかは、
個々のガイドラインにおいて異なっています。

中性脂肪の高値が心血管疾患のリスクになることは、
ほぼ確立した所見ですが、
どのレベル以上を治療の対象とするかについては明確ではありません。
コレステロールを低下させるスタチンのように、
強力に中性脂肪を低下させる薬剤はなく、
薬により中性脂肪を低下させることにより、
明確に心血管疾患のリスクが低下したとする知見も、
コレステロールのそれと比べると充分ではないからです。

中性脂肪が高度に増加していることは、
急性膵炎のリスクになります。
概ね中性脂肪が500mg/dLを超えると膵炎のリスクが高まる、
という疫学データがあるので、
それを超える高トリグリセリド血症については、
薬物治療の対象とすることが多いのですが、
臨床研究のメタ解析においては、
中性脂肪を薬剤で低下させることにより、
膵炎のリスクが低下することは確認されませんでした。

こうした知見を元にして、
上記文献においては次のようなアルゴリズムを提唱しています。
トリグリセリドの治療アルゴリズム.jpg
中性脂肪が高値である場合には、
アルコールなど膵炎のリスクと、
高血圧や糖尿病など心血管疾患のリスクの有無を確認し、
肥満であれば体重減少、
糖質制限や砂糖の摂取制限、
アルコールの摂取量の低下などの生活改善を、
一定期間行います。
中性脂肪が500mg/dLを超える状態が、
生活改善で改善しない場合には、
フィブラートやω3系脂肪酸製剤の投与が検討されます。

今日は中性脂肪高値への対応についてのまとめでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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