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ヒドロキシクロロキンの新型コロナウイルス感染症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヒドロキシクロロキンの予防効果.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年9月30日ウェブ掲載された、
ヒドロキシクロロキンの、
新型コロナウイルス感染症予防投与の有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
現状軽症の事例が多く、
家族内感染や施設内感染が、
感染拡大の大きな要因となっています。

従って、重症の事例における治療薬以外に、
濃厚接触者や施設職員や医療従事者など、
感染リスクの高い人が、
その時点で予防のために使用するような薬剤が、
強く求められています。

ヒドロキシクロロキンはマラリア治療薬ですが、
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用があるとされ、
治療薬として使用されている薬剤の1つです。
ただ、現状厳密な臨床試験では明らかな有効性が示されておらず、
その使用には懐疑的な見解もあります。
日本では正式な承認薬とはなっていません。
しかし、その予防的投与の有効性はまだ検証されています。
6月20日のNew England…誌に掲載された、
濃厚接触者に対する感染予防の臨床試験結果では、
その予防効果は確認されませんでした。

今回の研究は今度は患者の接触する機会の多い、
病院の医療従事者への投与で、
その感染予防効果を検証したものです。

アメリカ、ペンシルバニア州の、
新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている、
2つの病院の常勤の職員で、
新型コロナウイルス感染症の既往はなく、
感染を疑わせる症状も直近2週間見られない医療従事者を対象とし、
本人にも実施者にも分からないように、
対象を2つの群に分けると、
一方はヒドロキシクロロキンを1日600㎎、
8週間継続的に使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
観察期間中の新型コロナウイルス感染症の発症を、
定期的検査や症状の聞き取りによって比較検証しています。

当初は200名以上を登録する予定でしたが、
有効性が確認出来ないことが中途で確定したため、
132名が登録されてクジ引きされています。

結果としては観察期間中に、
ヒドロキシクロロキン使用群の6.3%が感染したのに対して、
偽薬群の6.6%が感染していて、
その差は統計的に有意ではありませんでした。
このまま登録者を増やしても、
結果が変わることはないという判断から、
途中で試験は中止されたのです。

副作用や有害事象については、
それまでの臨床試験で危惧された、
心電図のQT間隔の異常については両群で差はなく、
吐気や下痢が主な副作用として、
ヒドロキシクロロキン群で多く認められました。

このように今回の検証においては、
ヒドロキシクロロキンは健康成人で、
比較的安全に継続使用が可能であることは確認出来ましたが、
その感染予防としての有効性は、
少なくとも1日600㎎という用量では、
あまり明確ではないという結果に終わりました。

新型コロナウイルス感染症は予防薬についても、
なかなか一筋縄ではいかないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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