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認知機能低下と睡眠時間 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
認知機能低下と睡眠時間.jpg
JAMA Network Open誌に、
2020年9月21日ウェブ掲載された、
認知機能低下と睡眠時間についての論文です。

睡眠と認知症との関連についてはこれまでにも多くの報告があります。

昼間の眠気や居眠りについては、
認知症のリスクや認知機能低下のリスクと、
関連があるという報告が複数あり、
これは脳の覚醒機能の低下によるものと考えられています。

睡眠時間と認知機能との関連についても複数の報告がありますが、
睡眠時間が長い方が認知機能の低下と関連がある、
と言う報告がある一方で、
睡眠時間と認知機能との間には関連はない、
という報告もあってその見解は割れています。

2017年のNeuroapidemiology誌に掲載されたメタ解析では、
20の疫学研究における、
トータルで53942名(平均年齢66.9歳)のデータをまとめて解析した結果、
7から8時間未満という平均の睡眠時間と比較して、
8時間から10時間以上という長時間の睡眠は、
認知機能低下のリスクを1.42倍(95%CI:1.27から1.59)、
軽度認知機能障害のリスクを1.38倍(95%CI;1.23から1.56)、
認知症のリスクを1.42倍(95%CI:1.15から1.77)、
それぞれ有意に増加させていました。

これは睡眠時間が長い方が、
認知症のその後の発症リスクは高い、
という結果です。

日本の代表的な疫学データの1つである、
九州の久山町研究のデータの解析では、
登録の時点で60歳以上で認知症のない、
トータル1517名の一般住民を対象として、
中央値で8.8年間の経過観察を行い、
睡眠時間と認知症の発症、および生命予後との関連を検証。
その結果、睡眠時間が5時間未満と少なくても、
10時間以上と多くても、
いずれも認知症のリスクも総死亡のリスクも、
有意に増加していました。

今回の研究はイギリスと中国の2つの大規模疫学データを、
まとめて解析したもので、
トータルで20065名を長期間経過観察した結果、
1日7時間の睡眠時間を基準とした時、
4時間以下と短くても、10時間以上と長くても、
いずれも認知機能低下のリスクは高くなっていました。

これは久山町研究と一致する結果です。

ただ、これはそうした睡眠の習慣自体がリスクであるのか、
それとも睡眠時間を短くしたり長くしたりするような、
病気や薬などの影響がそうした結果をもたらしているのか、
そうした点は分からない、ということには注意が必要です。

また今回の睡眠時間のデータは、
あくまで本人の申告によるものですが、
眠れない、と主張する人に限って、
実際には意外に多く寝ている、
というようなことも経験しているので、
それをそのまま鵜呑みにしてデータ化することにも、
問題はあるように思います。

いずれにしても、
レビー小体型認知症における、
レム睡眠行動異常(夜に夢を見て実際に暴れたりする)は、
認知症に先行にしてかなり早い時期から出現している、
という知見もありますし、
認知症と睡眠というものは、
かなり関連の深いものであることは確かなようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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