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新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの有効性(介入試験の最終報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
レムデシビル完全版.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年10月8日ウェブ掲載された、
抗ウイルス剤レムデシビルの、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する、
臨床試験結果をまとめた論文です。

これは5月に暫定的な結果が同紙面に論文化されています。
その時点でブログ記事でもご紹介しています。
今回のデータは同じ臨床試験の最終的な結果のまとめになります。

レムデシビルはDNAの原料となる核酸の誘導体で、
ウイルスが細胞内で核酸(RNA)の合成を行う、
RNAポリメラーゼの阻害剤です。

これはアビガン(ファビピラビル)と同様のメカニズムです。

この薬はアメリカの製薬会社ギリアドサイエンシズ社の開発品です。

新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルへの期待は、
この薬の新型コロナウイルスに対するEC50という、
ウイルスの感染細胞での増殖を50%抑制する濃度が、
0.77μMという低さであることが影響しています。

実験的にはここまで効果の高い薬は他にないからです。

その実際の有効性はどうなのでしょうか?

今回の大規模介入試験は、
中国以外の世界各地で行われており、
日本も1施設で参加しています。
国立国際医療研究センター病院であるようです。
施設はアメリカが多く、
イギリス、デンマーク、ドイツ、韓国、
メキシコ、スぺイン、シンガポールが参加しています。

この臨床試験以前に中国国内で介入試験が行われていて、
その結果は有効性が確認されるものではありませんでした。
今度は中国抜きの介入試験がより大規模に施行された、
という流れです。

登録された新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の患者は、
トータル1062名で、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はレムデシビルを初日は200ミリグラム、
2日目以降は100ミリグラムの静注を10日目まで継続し、
もう一方は偽の注射を行います。

そして、
効果判定は治癒にて退院か、
もしくは病状は治癒し、
感染予防目的のみでの入院と判断されるまでの期間を、
両群で比較しています。

レムデシビル群の回復までの期間の中間値は10日に対して、
偽薬群のそれは15日で、
偽薬群ではレムデシビル群と比較して、
回復までの期間が1.29倍(95%CI: 1.12から1.49)、
有意に延長していました。
治療開始29日の時点で、
レムデシビル群の死亡率が6.7%に対して偽薬群は11.9%で、
レムデシビルは29日時点の死亡リスクを、
27%(95%CI: 0.52 から1.03)、
有意ではないものの低下させる傾向を示しました。

今回の結果は色々と制限や限界のある中では、
かなり画期的なもので、
入院を要するような新型コロナウイルス感染症の治療においては、
現時点ではレムデシビルが、
最も有効性を期待出来る薬剤、
と言って良いように思います。

ただ、その効果は決して満足のゆくレベルのものではなく、
このウイルス感染症の克服のためには、
より有効な治療薬が必要であることは、
また間違いのないことなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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