SSブログ

脳卒中から間もない時期の運動療法のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中後の運動の効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
脳卒中から間もない時期に運動をすることの、
病気の予後への効果を検証した論文です。

脳卒中を起こすと、
回復しても身体の麻痺などの後遺症が残り、
生活の質が大きく低下することが稀ではありません。

同じ動脈硬化に関わる血管の病気である心筋梗塞においては、
受傷後の早期から運動を開始し、
徐々に身体に負荷を掛けてゆくことが、
その後の回復をサポートする上で重要であると考えられています。

その一方で脳卒中においては、
通常のリハビリテーションに加えて、
受傷後の早期から有酸素運動を行なうことで、
より患者さんの予後が改善するかどうかは、
明確な結論が出ていません。

そこで今回の検証では、
ドイツの複数施設において、
中等度以上の重症度の脳卒中を起こしてから、
5日から45日の間という亜急性期の患者さん、
200名をくじ引きで2つの群に分けると、
通常のリハビリテーションに加えて、
一方は自立訓練法のようなリラクゼーションのプログラムを行ない、
もう一方は積極的な運動療法のトレーニングを、
いずれも週に5日25分ずつ行い、
3か月後の状態を比較検証しています。

その結果、
運動耐容能の指標や患者さんの症状には両群で差がなく、
脳卒中の再発や入院などの頻度は、
有意ではないものの積極的な運動療法群で高くなっていました。

つまり、
積極的な運動は、
必ずしも脳卒中の患者さんの予後を改善しなかった、
という結果です。

この問題は今後より詳細な検証が必要と思いますが、
現時点では脳卒中発症から45日以内という時期に、
積極的な運動療法は危険な可能性の方が高い、
と考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0)