「ダンスウィズミー」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら、
娯楽映画の名人矢口史靖監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
多分「ラ・ラ・ランド」が発想の原点と思われますが、
等身大の人間味のあるミュージカルを、
これまでにない切り口で娯楽映画にしよう、
というような方向性の作品です。
よくミュージカル映画の悪口として、
「普通にお芝居をしているのに、急に歌ったり踊ったりするのは、変だよね」
というパターン化された発言がありますが、
それを逆手に取って、
過去にミュージカルへのトラウマのある主人公が、
催眠術によって、
「音楽が聞こえると、どこでもいつでも歌って踊り出す」
という状態になり、
そのために人生の危機が訪れるので、
催眠術を解いてもらおうと、
借金で姿をくらましている催眠術師を追いかけて、
全国を旅するというロードムービーにしています。
主人公は三吉彩花さん演じる若いOLなので、
女性主人公の自分探しという定番の女性映画の要素に、
楽しいミュージカルの要素と、
これも定番のロードムービーの要素を、
一緒にしてしまえばヒットするだろう、
というそれだけ聞いても、
ちょっと安易だな、大丈夫かしら、
と思ってしまうような企画です。
観た感想としては、
予想をはるかに下回る詰まらなさで、
今年一番と言っていいくらい、
落胆して劇場を後にしました。
ネットで良い感想をいくつか読んだので見ることにしたのですが、
…騙されました。
いわゆるステマであったようです。
勿論個人的感想ですので、
面白かったと思われる方もあれば、
意外に悪くなかった、と思われる方もあるかと思います。
個人的な感想ですのでご容赦下さい。
以下少し悪口になります。
ご不快な方は飛ばして下さい。
これね、そもそも企画として成立していないと思うのです。
催眠術で音楽が聞こえると歌って踊るんでしょ。
でも周囲の人は催眠術には掛かっていないので、
おそらく呆れて見ているだけになる筈です。
それじゃミュージカルにならないので、
最初の2つくらいの場面については、
周囲の人も歌って踊るという、
一生の「妄想シーン」にしているのです。
ただ、妄想ではこれまでのミュージカル映画と変わらないので、
音楽が終わってみると、
みんなは呆れていて、辺りは散らかり放題、
という感じになっています。
でも、結局実際に行われたことはどうだったのかしら。
その辺が胡麻化されているのでよく分かりません。
主人公はレストランで歌って踊った時に、
シャンデリアや高価な食器やワインなどを、
大量に破壊してしまうので、
それで一文無しになってしまう、という設定です。
そこまで破壊的な言動をしているのに、
その後の歌唱シーンは至って穏当で、
ストリートミュージシャンとキャンディーズを歌うところなど、
別に普通の人の歌や踊りと何ら変わるところはありません。
こうした部分を見ると、
凶悪な催眠術で歌わされているというより、
もっと周囲を理解しつつ理性を持って歌っているとしか、
思えないんですよね。
催眠術による歌と踊りというのが、
どういうものなのか、
ただ、普通に歌って踊るだけなのか、
それとも「ジキルとハイド」のように、
別人格が浮かび上がって、
秘められていた力が解放されて、
超人的な身体能力を発揮するものなのか、
その辺りも不明です。
レストランの時はアクロバティックな大暴れをしているので、
超人的な能力が発揮されたようにも思います。
その一方でダンスも歌もお世辞にも上手いように見えませんし、
レストラン以外の場面では、
普通のカラオケか、それ以下のクオリティなので、
とても超人的とは思えません。
この辺りもまるで整合性がないのです。
実際ミュージカル映画という割には、
ミュージカルの場面は極めて少なく、
予告編で流れているのがほぼ全て、と言って、
言い過ぎではないくらいです。
後半のロードムービーの部分では、
もう設定自体をあきらめたのかしら、
と思ってしまうくらいです。
人間ドラマもかなりお寒い感じで、
ちょっと背伸びをして良い会社に入ったOL、
という設定ですが、
仕事や職場の描写にリアリティがないので、
ラストに主人公のする決断にも、
何ら説得力がありません。
やしろ優の役柄もありきたりですし、
「ウェディングベル」を歌って、
不実な男性の結婚式に殴り込むなど、
あまりに捻りのない設定には開いた口が塞がりませんでした。
総じてノスタルジックでベタな感じを売りにしているのですが、
そもそも日本にミュージカルの伝統などはなく、
仮にあるとすれば、
劇団四季と東宝ミュージカルでしょうから、
パロディにするならそうした部分に切り込むべきで、
今回題材になっているのは、
歌謡曲が全盛の時代の「歌謡ショー」ですよね。
歌謡ショーがテーマであるなら、
それをもっと前面に打ち出すべきではなかったのかな、
というように感じました。
今回の作品で描かれているミュージカル部分は、
歌謡ショーなのかミュージカルなのかが不明瞭で、
その点が一番の計算違いであったように思います。
多分企画の時点で迷走したのでしょうが、
設定が思いつきの域を出ないままに作品化され、
最後まであいまいなまま終わってしまった、
という作品であったように思います。
テレビで見る価値もないかな、というようには思いますが、
勿論三吉彩花さんのファンであれば、
必見とは思います。
でも、どこかのCMの三吉さんの方が、
正直100倍良かったですね。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら、
娯楽映画の名人矢口史靖監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
多分「ラ・ラ・ランド」が発想の原点と思われますが、
等身大の人間味のあるミュージカルを、
これまでにない切り口で娯楽映画にしよう、
というような方向性の作品です。
よくミュージカル映画の悪口として、
「普通にお芝居をしているのに、急に歌ったり踊ったりするのは、変だよね」
というパターン化された発言がありますが、
それを逆手に取って、
過去にミュージカルへのトラウマのある主人公が、
催眠術によって、
「音楽が聞こえると、どこでもいつでも歌って踊り出す」
という状態になり、
そのために人生の危機が訪れるので、
催眠術を解いてもらおうと、
借金で姿をくらましている催眠術師を追いかけて、
全国を旅するというロードムービーにしています。
主人公は三吉彩花さん演じる若いOLなので、
女性主人公の自分探しという定番の女性映画の要素に、
楽しいミュージカルの要素と、
これも定番のロードムービーの要素を、
一緒にしてしまえばヒットするだろう、
というそれだけ聞いても、
ちょっと安易だな、大丈夫かしら、
と思ってしまうような企画です。
観た感想としては、
予想をはるかに下回る詰まらなさで、
今年一番と言っていいくらい、
落胆して劇場を後にしました。
ネットで良い感想をいくつか読んだので見ることにしたのですが、
…騙されました。
いわゆるステマであったようです。
勿論個人的感想ですので、
面白かったと思われる方もあれば、
意外に悪くなかった、と思われる方もあるかと思います。
個人的な感想ですのでご容赦下さい。
以下少し悪口になります。
ご不快な方は飛ばして下さい。
これね、そもそも企画として成立していないと思うのです。
催眠術で音楽が聞こえると歌って踊るんでしょ。
でも周囲の人は催眠術には掛かっていないので、
おそらく呆れて見ているだけになる筈です。
それじゃミュージカルにならないので、
最初の2つくらいの場面については、
周囲の人も歌って踊るという、
一生の「妄想シーン」にしているのです。
ただ、妄想ではこれまでのミュージカル映画と変わらないので、
音楽が終わってみると、
みんなは呆れていて、辺りは散らかり放題、
という感じになっています。
でも、結局実際に行われたことはどうだったのかしら。
その辺が胡麻化されているのでよく分かりません。
主人公はレストランで歌って踊った時に、
シャンデリアや高価な食器やワインなどを、
大量に破壊してしまうので、
それで一文無しになってしまう、という設定です。
そこまで破壊的な言動をしているのに、
その後の歌唱シーンは至って穏当で、
ストリートミュージシャンとキャンディーズを歌うところなど、
別に普通の人の歌や踊りと何ら変わるところはありません。
こうした部分を見ると、
凶悪な催眠術で歌わされているというより、
もっと周囲を理解しつつ理性を持って歌っているとしか、
思えないんですよね。
催眠術による歌と踊りというのが、
どういうものなのか、
ただ、普通に歌って踊るだけなのか、
それとも「ジキルとハイド」のように、
別人格が浮かび上がって、
秘められていた力が解放されて、
超人的な身体能力を発揮するものなのか、
その辺りも不明です。
レストランの時はアクロバティックな大暴れをしているので、
超人的な能力が発揮されたようにも思います。
その一方でダンスも歌もお世辞にも上手いように見えませんし、
レストラン以外の場面では、
普通のカラオケか、それ以下のクオリティなので、
とても超人的とは思えません。
この辺りもまるで整合性がないのです。
実際ミュージカル映画という割には、
ミュージカルの場面は極めて少なく、
予告編で流れているのがほぼ全て、と言って、
言い過ぎではないくらいです。
後半のロードムービーの部分では、
もう設定自体をあきらめたのかしら、
と思ってしまうくらいです。
人間ドラマもかなりお寒い感じで、
ちょっと背伸びをして良い会社に入ったOL、
という設定ですが、
仕事や職場の描写にリアリティがないので、
ラストに主人公のする決断にも、
何ら説得力がありません。
やしろ優の役柄もありきたりですし、
「ウェディングベル」を歌って、
不実な男性の結婚式に殴り込むなど、
あまりに捻りのない設定には開いた口が塞がりませんでした。
総じてノスタルジックでベタな感じを売りにしているのですが、
そもそも日本にミュージカルの伝統などはなく、
仮にあるとすれば、
劇団四季と東宝ミュージカルでしょうから、
パロディにするならそうした部分に切り込むべきで、
今回題材になっているのは、
歌謡曲が全盛の時代の「歌謡ショー」ですよね。
歌謡ショーがテーマであるなら、
それをもっと前面に打ち出すべきではなかったのかな、
というように感じました。
今回の作品で描かれているミュージカル部分は、
歌謡ショーなのかミュージカルなのかが不明瞭で、
その点が一番の計算違いであったように思います。
多分企画の時点で迷走したのでしょうが、
設定が思いつきの域を出ないままに作品化され、
最後まであいまいなまま終わってしまった、
という作品であったように思います。
テレビで見る価値もないかな、というようには思いますが、
勿論三吉彩花さんのファンであれば、
必見とは思います。
でも、どこかのCMの三吉さんの方が、
正直100倍良かったですね。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。