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菜食主義は健康的なのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
菜食主義と心血管疾患リスク.jpg
2019年のBritishMedicl Journal誌に掲載された、
菜食主義などの食事パターンと心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

食事が生活習慣病と関連が強いことは、
これまでの多くの疫学データにおいて確認された事実です。

ただ、病気によってはある食事習慣が、
そのリスクを増やしたり減らしたり、
ということはあるものの、
その個別のデータは結構食い違っているので、
ある食品はAという病気の予防にはなるけれど、
Bという病気にはむしろリスクになる、
というようなこともあって、
その解釈はそう単純ではありません。

代表的な食事習慣として、
菜食主義があります。

菜食主義のダイエットは肉や魚のような、
生き物の肉を食べないというもので、
宗教的なバックボーンなどのあるものもありますし、
単純に趣味嗜好の問題、という性質のものもあります。

また、ヴィーガンダイエット(vegan diet)というダイエットがあり、
これは一種の菜食主義なのですが、
より厳密な考えによっていて、
肉、魚、卵、乳製品は一切摂らない、というものです。
そうなると、蛋白源の主体は、
豆類ということになり、
脂質は植物系の油やナッツから、
ということになります。

こうしたダイエットは純粋に医学的な観点から見た時、
どのような影響や効果があるのでしょうか?

今回の研究はイギリスにおいて、
心血管疾患の既往のない一般住民トータル48188名を、
その食習慣から3つのグループに分けています。

第1群は肉を食べる習慣のある24428名、
第2群は魚は食べるが肉は一切食べない7506名、
そして第3群はヴィーガンダイエットを含む菜食主義者で、
肉も魚も一切食べない16254名です。

18.1年を超える長期の経過観察期間において、
肉を食べるダイエットと比較して、
魚を食べるが肉は食べないダイエット群では13%
(95%CI:0.77から0.99)、
菜食主義群では22%(95%CI: 0.70から0.87)、
虚血性心疾患のリスクは有意に低下していました。

その一方で脳卒中に関してみると、
肉を食べるダイエットと比較して、
菜食主義群では20%(95%CI: 1.02から1.40)、
脳卒中の発症リスクは有意に増加していました。
その大部分は出血性梗塞によるものでした。

このように菜食主義は虚血性心疾患のリスクは低下させる一方、
脳卒中特に出血性梗塞のリスクは増加させる可能性があり、
純粋に医学的見地から考えると、
少し動物性の蛋白も取り入れた食事をした方が、
トータルには健康上のメリットに繋がりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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