「アス」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
「ゲット・アウト」というSFホラーの快作で、
鮮やかなデビューを飾った鬼才ジョーダン・ピールの、
長編劇映画第2作「アス」が今ロードショー公開されています。
今回も前作に負けず劣らず面白い映画でした。
個人的には最高と言って良いくらい。
ホラー色のあるSFミステリーというジャンルなのですが、
このジャンルの作品としては、
歴史的に見ても最上の部類の作品です。
小児期のトラウマを抱えて成長した女性が、
家族と共に生まれ故郷に戻ると、
そこで奇怪な事件に遭遇します。
闇から現れた自分達そっくりの化け物じみた家族が、
自分達に成り代わろうと襲って来るのです。
自分達そっくりの怪物の正体は、
一体何なのでしょうか?
怪物は何の目的で、何処から現れたのでしょうか?
謎をはらみながら過激に物語は展開し、
意外に奥の深い謎の答えと、
予想外の展開が観客を待っています。
前作「ゲット・アウト」と同じように、
今の時代の空気を反映している作品ではあるのです。
ただ、何かを比ゆ的に表現したり揶揄したり、
社会批評的なことはしていません。
つまり、フィクションとしてしっかり完結していて、
現実の要素を必要とするような作品ではないのです。
その点がまずとても好印象です。
これは骨格は古典的なミステリーの、
使い古されたワンアイデアなのですが、
それを仰々しくも荒唐無稽で大袈裟な設定に覆い隠すことによって、
先が読めないスリラーに仕立てている点がとても巧みです。
SFミステリーはこうでなくちゃな、という感じです。
これはイギリスのミステリー作家、
ジョン・ブラックバーンやピーター・ディキンスンが得意とした手法で、
それを巧みにオリジナルの脚本に取り入れています。
これだけで思わず踊り出したくなるほど歓喜します。
演出もとても巧みで、
それほど予算を掛けているという訳ではないのですが、
パニック描写やアクションシーンに、
様々な別種のパターンを織り込んでいて、
物語ではなく演出技巧だけでも楽しめるという、
マニアックな世界を出現させています。
この辺りはヒッチコックを彷彿とさせます。
ヒッチコックの作品は色々な形で使われていますが、
特に「鳥」が今回はモチーフとなっていて、
最初にはそっくりのカットもありますし、
鳥の恐怖が伝染しつつ拡大するタッチを、
巧みにこの物語に取り入れています。
ネットなどの感想では、
設定が辻褄が合わない、とか、
説明されない部分がある、というような点が、
この作品の欠点として語られていますが、
個人的な意見としてはそれはナンセンスで、
こうしたSFスリラーでは、
半分くらいだけ理屈で説明して、
残り半分は意味不明のまま宙吊りにしておくのが、
1つのセオリーで、
全て説明してしまうと理が勝ちすぎて、
作品の怖さはなくなってしまうのです。
今回の映画に関しては、
その説明する部分としない部分とのバランス、
辻褄の合う部分と合わない部分とのバランスは、
こうしたジャンル作としては絶妙であったと思います。
これでいいのです。
そんな訳で個人的にはとてもとてもお気に入りの1本で、
同じ趣味の方には「絶対に見逃すな!」と強く言いたい作品です。
こうした映画を大スクリーンで観る機会は、
とても貴重なものだからです。
シャマラン監督にも昔は同様の期待をしたのですが、
今になってみると彼は偽物でした。
その点ジョーダン・ピールは、
間違いのない本物です。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
「ゲット・アウト」というSFホラーの快作で、
鮮やかなデビューを飾った鬼才ジョーダン・ピールの、
長編劇映画第2作「アス」が今ロードショー公開されています。
今回も前作に負けず劣らず面白い映画でした。
個人的には最高と言って良いくらい。
ホラー色のあるSFミステリーというジャンルなのですが、
このジャンルの作品としては、
歴史的に見ても最上の部類の作品です。
小児期のトラウマを抱えて成長した女性が、
家族と共に生まれ故郷に戻ると、
そこで奇怪な事件に遭遇します。
闇から現れた自分達そっくりの化け物じみた家族が、
自分達に成り代わろうと襲って来るのです。
自分達そっくりの怪物の正体は、
一体何なのでしょうか?
怪物は何の目的で、何処から現れたのでしょうか?
謎をはらみながら過激に物語は展開し、
意外に奥の深い謎の答えと、
予想外の展開が観客を待っています。
前作「ゲット・アウト」と同じように、
今の時代の空気を反映している作品ではあるのです。
ただ、何かを比ゆ的に表現したり揶揄したり、
社会批評的なことはしていません。
つまり、フィクションとしてしっかり完結していて、
現実の要素を必要とするような作品ではないのです。
その点がまずとても好印象です。
これは骨格は古典的なミステリーの、
使い古されたワンアイデアなのですが、
それを仰々しくも荒唐無稽で大袈裟な設定に覆い隠すことによって、
先が読めないスリラーに仕立てている点がとても巧みです。
SFミステリーはこうでなくちゃな、という感じです。
これはイギリスのミステリー作家、
ジョン・ブラックバーンやピーター・ディキンスンが得意とした手法で、
それを巧みにオリジナルの脚本に取り入れています。
これだけで思わず踊り出したくなるほど歓喜します。
演出もとても巧みで、
それほど予算を掛けているという訳ではないのですが、
パニック描写やアクションシーンに、
様々な別種のパターンを織り込んでいて、
物語ではなく演出技巧だけでも楽しめるという、
マニアックな世界を出現させています。
この辺りはヒッチコックを彷彿とさせます。
ヒッチコックの作品は色々な形で使われていますが、
特に「鳥」が今回はモチーフとなっていて、
最初にはそっくりのカットもありますし、
鳥の恐怖が伝染しつつ拡大するタッチを、
巧みにこの物語に取り入れています。
ネットなどの感想では、
設定が辻褄が合わない、とか、
説明されない部分がある、というような点が、
この作品の欠点として語られていますが、
個人的な意見としてはそれはナンセンスで、
こうしたSFスリラーでは、
半分くらいだけ理屈で説明して、
残り半分は意味不明のまま宙吊りにしておくのが、
1つのセオリーで、
全て説明してしまうと理が勝ちすぎて、
作品の怖さはなくなってしまうのです。
今回の映画に関しては、
その説明する部分としない部分とのバランス、
辻褄の合う部分と合わない部分とのバランスは、
こうしたジャンル作としては絶妙であったと思います。
これでいいのです。
そんな訳で個人的にはとてもとてもお気に入りの1本で、
同じ趣味の方には「絶対に見逃すな!」と強く言いたい作品です。
こうした映画を大スクリーンで観る機会は、
とても貴重なものだからです。
シャマラン監督にも昔は同様の期待をしたのですが、
今になってみると彼は偽物でした。
その点ジョーダン・ピールは、
間違いのない本物です。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。