SSブログ

ビタミンDのサプリメントと死亡リスク(2019年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDと癌死亡.jpg
2019年のBritish Medicl Journal誌に掲載された、
ビタミンDのサプリメントの使用と、
各種病気の死亡リスクとの関連を検証した、
メタ解析の論文です。

基礎実験や動物実験のレベルでは、
ビタミンDは細胞の成長や分化を調節し、
癌の発症を抑制するような効果があると報告されています。

ただ、実際にビタミンD濃度が高いことが、
癌の発症を抑制するかどうかは、
まだ明確ではありません。

観察研究のメタ解析のデータによると、
25(OH)D濃度が高いと大腸癌のリスクが低い、
という結果が報告されています。
乳癌と前立腺癌についても、
それを示唆するデータが報告されています。
ただ、癌になって消耗した状態では。
血液のビタミンD濃度も低くはなることが想定されるので、
これが本当にビタミンDが高いことの影響であるとは、
これだけでは言えません。

2017年に大規模な遺伝子解析のデータを活用した、
メンデル無作為化解析という手法による、
ビタミンD濃度と癌リスクとの関連を検証した研究が、
British medical journal誌に掲載されました。
前立腺癌、乳癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌、膵臓癌、神経芽細胞腫の、
7種類の癌での検証において、
ビタミンDが低下する遺伝子変異と、
癌のリスクとの間には明確な関連は認められませんでした。
弱い関連のある可能性は残るものの、
現時点でビタミンD濃度を測定して癌のリスクを判断したり、
ビタミンDの補充を癌予防のために行うという治療の妥当性は、
現時点では低い、という結果です。

今回の研究は、
これまでで最新のシステマティックレビューとメタ解析で、
2018年末までの主だった臨床データがまとめて解析されています。

これまでの52の臨床研究の、
トータルで75454名のデータをまとめて解析したところ、
ビタミンDのサプリメントは、
総死亡のリスクにも、心血管疾患による死亡のリスクにも、
有意な影響を与えていませんでした。
一方で癌による死亡リスクについては、
16%(95%CI: 0.74から0.95)有意に低下させていました。

今回のデータでは、
ビタミンDのサプリメントの効果は、
癌による死亡リスクの低下についてのみ示されていました。

ただ、実際にはこれまで複数回報告されているメタ解析において、
それぞれ異なった結果が得られているということもあり、
この問題はこうした方法で簡単に白黒が付く、
というものではなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(8)  コメント(0)