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三谷幸喜「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シャーロック・ホームズ.jpg
三谷幸喜さんの新作公演が、
今三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演されています。

これは翻訳劇的なスタイルのもので、
ミステリー好きの三谷さんとしては、
その原点の1つと言うべき、
シャーロック・ホームズを取り上げています。

と言っても勿論正攻法のものではなく、
作品として残されているホームズが生まれる前の、
名探偵ホームズの誕生に繋がった一夜の出来事を、
兄マイクロフトとの確執を軸に、
一種の家庭劇として描いた2幕劇です。

登場人物は7人で、
ホームズ役はミュージカルで活躍する柿沢勇人さんですが、
裏の主役と言って良いのは、
ワトソン役の佐藤二朗さんで、
お茶目な感じは残しつつも、
後半になるとシリアスな展開を担います。

問題はその役柄が佐藤二朗さんのキャラと、
フィットしていたかどうか、ということと、
ミステリーの古典をしょぼい家庭劇にしてしまった、
という変化球が、
果たして成功していたかどうか、
と言う点にあるのだと思います。

個人的な感想としては、
両方ともあまり成功ではなかったですね。

佐藤二朗さんは頑張っていたと思いますが、
その持ち味の軽快さや飄逸さが、
却って損なわれたしまった感じがありました。
福田雄一さんの作品に出演する時と比べると、
何か窮屈そうでしたね。

何より問題と思うのがストーリー展開で、
あまりにしょぼくないですか?
お菓子が1つ盗まれただけの事件とか、
クライマックスが延々とカードゲームをするだけ、
というのも、
わざわざ映像まで駆使して何やってるの、
と脱力するような感じがありました。

推理クイズの答えを延々と考える警部とか、
ディテールもあまり弾まないですし、
三谷さんがホームズ談を読み込んでいるのは勿論分かるのですが、
「踊る靴紐」とか、ちょっとセンスを疑います。

最近の三谷さんの作品の傾向として、
今の日本の状況に結び付いた舞台を、
というところはあると思うのです。

今度の如何にも詰まらなそうな(失礼)映画もそうですし、
この作品も主人公のホームズを引き込もりのニートにして、
如何にして引きこもりのニートが、
周囲の協力の元に社会復帰するか、
という物語になっています。

最近三谷さんの作品に、
かつてのようなすれ違いだけで見せる底抜けの笑いや、
ラストになって全てが腑に落ちるような快感がないのは、
そして何より新作のヒットがないのは、
そうした啓蒙的な意識が、
本来の藝術の自由度を、
狭めてしまっているからかも知れません。

それでも、ここまで弾まない詰まらない舞台(あくまで私見です)なのに、
観客は極めて好意的で全てを受け止めて反応し笑い、
客席は大入り満員でチケット入手も困難で、
退場する時の様子を見ても、
「面白かったね」と互いに言い合っているので、
このある種の三谷ブランドの魔法が、
いつまで続くのかには興味が沸くのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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