「斬、」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鬼才塚本晋也監督の新作で時代劇の「斬、」を観て来ました。
幕末を舞台にした80分くらいの短い作品ですが、
画面は暗く全編異常な緊張感で、
救いの欠片もないダークな物語が展開され、
ラストは3人のメインキャストが、
泥と雨と血に塗れて殺し合いを演じるという、
観終わると気分がどん底になること必定の、
イヤな映画です。
何となく「鉄男」にも似たところのある物語なのですが、
活劇の面白みやビジュアルの遊びなど、
息の抜けるような要素はこの作品には微塵もないので、
娯楽性という面では天と地ほどの開きがあります。
暴力を憎み、平和を希求するような思想が、
根底にはあってこうした映画が作られたのだと理解は出来ますが、
それなら「たそがれ清兵衛」みたいな作品であっても、
充分その役目は果たしたと思うのです。
ここまで無残で残酷で暗い映画を、
作る必要はなかったのではないかと思いますし、
監督の心の中では、
こうまでしなければ暴力の本質を描けない、
という思いがあったのではないかとも思いますが、
仮にそうだとすれば、
それはかなり病的でそれ自体平和や非暴力とは、
距離のある思想ではないでしょうか。
作品は「七人の侍」の反歌のような構成を取っています。
貧しい村に暴力で強奪する夜盗の集団がやってくるのですが、
官兵衛を彷彿とさせる坊主頭の剣豪は、
夜盗の多くを斬り殺してしまい、
復讐に再来した夜盗の残党によって、
村人は更に殺されるなど悲惨な目に遭ってしまいます。
つまり、「七人の侍」の方法論では、
暴力の連鎖を生むだけで村人は幸福にはなれない、
と言っている訳です。
そんなにひねくれなくてもいいのに、
と思わなくはありませんが、
そこまではまあ発想を理解は出来ます。
しかし、それならそれに変わる方法論を、
映画は提示してくれるのかと思っていると、
平和主義者の侍は、
ただ苦悩するだけで何の助けにもならず、
結局仲間内で殺し合いをして終わり、
というような感じになってしまいます。
蒼井優の演じる女性も、
人間というより獣のように暴力的で淫乱なので、
なおさら意図が分からなくなってしまいます。
そんな訳で勘弁してよ、と言いたくなるような怪作で、
映画を見て気分が落ち込むのが大好き、
という変わった嗜好をお持ちの方以外には、
お薦めはしにくい作品のように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
鬼才塚本晋也監督の新作で時代劇の「斬、」を観て来ました。
幕末を舞台にした80分くらいの短い作品ですが、
画面は暗く全編異常な緊張感で、
救いの欠片もないダークな物語が展開され、
ラストは3人のメインキャストが、
泥と雨と血に塗れて殺し合いを演じるという、
観終わると気分がどん底になること必定の、
イヤな映画です。
何となく「鉄男」にも似たところのある物語なのですが、
活劇の面白みやビジュアルの遊びなど、
息の抜けるような要素はこの作品には微塵もないので、
娯楽性という面では天と地ほどの開きがあります。
暴力を憎み、平和を希求するような思想が、
根底にはあってこうした映画が作られたのだと理解は出来ますが、
それなら「たそがれ清兵衛」みたいな作品であっても、
充分その役目は果たしたと思うのです。
ここまで無残で残酷で暗い映画を、
作る必要はなかったのではないかと思いますし、
監督の心の中では、
こうまでしなければ暴力の本質を描けない、
という思いがあったのではないかとも思いますが、
仮にそうだとすれば、
それはかなり病的でそれ自体平和や非暴力とは、
距離のある思想ではないでしょうか。
作品は「七人の侍」の反歌のような構成を取っています。
貧しい村に暴力で強奪する夜盗の集団がやってくるのですが、
官兵衛を彷彿とさせる坊主頭の剣豪は、
夜盗の多くを斬り殺してしまい、
復讐に再来した夜盗の残党によって、
村人は更に殺されるなど悲惨な目に遭ってしまいます。
つまり、「七人の侍」の方法論では、
暴力の連鎖を生むだけで村人は幸福にはなれない、
と言っている訳です。
そんなにひねくれなくてもいいのに、
と思わなくはありませんが、
そこまではまあ発想を理解は出来ます。
しかし、それならそれに変わる方法論を、
映画は提示してくれるのかと思っていると、
平和主義者の侍は、
ただ苦悩するだけで何の助けにもならず、
結局仲間内で殺し合いをして終わり、
というような感じになってしまいます。
蒼井優の演じる女性も、
人間というより獣のように暴力的で淫乱なので、
なおさら意図が分からなくなってしまいます。
そんな訳で勘弁してよ、と言いたくなるような怪作で、
映画を見て気分が落ち込むのが大好き、
という変わった嗜好をお持ちの方以外には、
お薦めはしにくい作品のように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。