東野圭吾「沈黙のパレード」(ネタバレ注意) [ミステリー]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
東野圭吾さんのガリレオシリーズの新作長編で、
書き下ろしで昨年刊行されると、
主なミステリーのベストテンで、
1位を獲得するなど抜群の評価を得ている作品です。
ガリレオのシリーズは東野さんの作品の中では、
新本格に近いミステリーのスタイルで、
元々森博嗣さんの作品をパクったような感じがあり、
当初は違和感を感じたのですが、
シリーズ初の長編である「容疑者Xの献身」が直木賞を取り、
その後は独立した特徴も生まれて、
東野さんの本格ミステリー畑の作品としては、
代表的なシリーズとなっています。
その作品のほぼ全てが、
福山雅治さんの主演で映像化されていて、
福山さんが断らなければ、
この新作も同じように映画化される可能性が高いと思います。
短編や中編には、
オヤオヤと感じるようなものも多いのですが、
これまでに刊行された長編は、
「容疑者Xの献身」「聖女の救済」「真夏の方程式」と、
いずれも力の入った優れたミステリーになっていて、
東野さんの多くの作品の中でも読み応えがありますし、
東野さん自身も力を入れて書いていることが分かります。
今回の作品も、如何にもガリレオシリーズという感じで、
舞台を用意して主人公の名探偵をその場に居合わせ、
その目の前で不可解な事件を起こすという構成は、
クリスティーやカーの黄金時代の本格ミステリーの構成そのものです。
クリスティーやカー、
スラデックなどの古典ミステリーのトリックを、
一部明かしているようなところがあるので、
「オリエント急行殺人事件」や「ユダの窓」、
「見えないグリーン」については、
是非原典を読んでから、
この作品を読まれることをお薦めします。
つまり、割合とミステリーマニア向けに、
書いているようなところのある作品なのです。
またガリレオシリーズの旧作や新参者シリーズの作品も、
先に読んでおいた方が良いと思います。
東野さんは結構過去作のトリックや設定を、
流用して再構成することが多いからです。
以下勿論ネタバレはしませんが、
内容を類推出来るような表現がありますので、
先入観なくこの作品をお読みになりたい方は、
本作読了後に以下はお読み下さい。
よろしいでしょうか。
それでは続けます。
リーダビリティもクオリティも高いので、
読んでガッカリするような作品ではありません。
ただ、個人的には過去作の焼き直し的な趣向が多く、
目新しさはないな、というのが正直なところです。
全体の構成は「真夏の方程式」に非常に良く似ていて、
主人公の関わり方もそっくりなのですが、
比較すると「真夏の方程式」の方が、
その切なさや余韻の面で、
優れていたように思います。
最後のひねりは、
ちょっとわざとらしすぎるという気がします。
それに最終的な解決は、
ほぼ想像に近い推測で、
何ら根拠はありませんよね。
犯人でありながら司法で裁かれない人物の設定には、
「検察側の罪人」の影響が、
かなりあるのではないかと感じました。
事件自体も全員のアリバイが、
それほどしっかり確認されるという感じではないので、
事件自体のワクワク感も乏しいように思いました。
パレードの活用のされ方も、
意外に詰まらないですよね。
もう一工夫欲しかったと思います。
計画犯罪が途中でアクシデントがあることで、
より不可解な事件になるというのは、
クイーンのスタイルで、
日本では有栖川有栖さんなどが得意とするところですが、
こういうのは東野さんはあまり上手ではないと思います。
ある人物の設定などは、
切なくて東野さん好みなのですが、
これもある旧作の焼き直しで、
旧作の方がインパクトは大きかったと思いますし、
過去作を読んでいると、
何となく構造は分かってしまって、
それほど驚けないのもつらいところです。
そんな訳で東野さんの本格ミステリーとしては、
高いレベルの水準作という感じで、
あまり飛び抜けた印象や、
独自性は感じにくいように思いました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
東野圭吾さんのガリレオシリーズの新作長編で、
書き下ろしで昨年刊行されると、
主なミステリーのベストテンで、
1位を獲得するなど抜群の評価を得ている作品です。
ガリレオのシリーズは東野さんの作品の中では、
新本格に近いミステリーのスタイルで、
元々森博嗣さんの作品をパクったような感じがあり、
当初は違和感を感じたのですが、
シリーズ初の長編である「容疑者Xの献身」が直木賞を取り、
その後は独立した特徴も生まれて、
東野さんの本格ミステリー畑の作品としては、
代表的なシリーズとなっています。
その作品のほぼ全てが、
福山雅治さんの主演で映像化されていて、
福山さんが断らなければ、
この新作も同じように映画化される可能性が高いと思います。
短編や中編には、
オヤオヤと感じるようなものも多いのですが、
これまでに刊行された長編は、
「容疑者Xの献身」「聖女の救済」「真夏の方程式」と、
いずれも力の入った優れたミステリーになっていて、
東野さんの多くの作品の中でも読み応えがありますし、
東野さん自身も力を入れて書いていることが分かります。
今回の作品も、如何にもガリレオシリーズという感じで、
舞台を用意して主人公の名探偵をその場に居合わせ、
その目の前で不可解な事件を起こすという構成は、
クリスティーやカーの黄金時代の本格ミステリーの構成そのものです。
クリスティーやカー、
スラデックなどの古典ミステリーのトリックを、
一部明かしているようなところがあるので、
「オリエント急行殺人事件」や「ユダの窓」、
「見えないグリーン」については、
是非原典を読んでから、
この作品を読まれることをお薦めします。
つまり、割合とミステリーマニア向けに、
書いているようなところのある作品なのです。
またガリレオシリーズの旧作や新参者シリーズの作品も、
先に読んでおいた方が良いと思います。
東野さんは結構過去作のトリックや設定を、
流用して再構成することが多いからです。
以下勿論ネタバレはしませんが、
内容を類推出来るような表現がありますので、
先入観なくこの作品をお読みになりたい方は、
本作読了後に以下はお読み下さい。
よろしいでしょうか。
それでは続けます。
リーダビリティもクオリティも高いので、
読んでガッカリするような作品ではありません。
ただ、個人的には過去作の焼き直し的な趣向が多く、
目新しさはないな、というのが正直なところです。
全体の構成は「真夏の方程式」に非常に良く似ていて、
主人公の関わり方もそっくりなのですが、
比較すると「真夏の方程式」の方が、
その切なさや余韻の面で、
優れていたように思います。
最後のひねりは、
ちょっとわざとらしすぎるという気がします。
それに最終的な解決は、
ほぼ想像に近い推測で、
何ら根拠はありませんよね。
犯人でありながら司法で裁かれない人物の設定には、
「検察側の罪人」の影響が、
かなりあるのではないかと感じました。
事件自体も全員のアリバイが、
それほどしっかり確認されるという感じではないので、
事件自体のワクワク感も乏しいように思いました。
パレードの活用のされ方も、
意外に詰まらないですよね。
もう一工夫欲しかったと思います。
計画犯罪が途中でアクシデントがあることで、
より不可解な事件になるというのは、
クイーンのスタイルで、
日本では有栖川有栖さんなどが得意とするところですが、
こういうのは東野さんはあまり上手ではないと思います。
ある人物の設定などは、
切なくて東野さん好みなのですが、
これもある旧作の焼き直しで、
旧作の方がインパクトは大きかったと思いますし、
過去作を読んでいると、
何となく構造は分かってしまって、
それほど驚けないのもつらいところです。
そんな訳で東野さんの本格ミステリーとしては、
高いレベルの水準作という感じで、
あまり飛び抜けた印象や、
独自性は感じにくいように思いました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。