高齢者への長期の運動習慣の健康効果(2018年のメタ解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
高齢者が定期的に運動することの効果についてのメタ解析の論文です。
定期的に運動の習慣を持つことが、
筋肉量を維持して骨折を予防し、
心血管疾患や認知症の予防にもなることは、
これまでの多くの疫学データや観察研究により、
ほぼ確立された事実です。
ただ、1年以上の長期の運動習慣が、
高齢者に与える影響というように限定すると、
それほど裏打ちとなるデータが豊富にある訳ではありません。
2014年のJAMA誌に掲載された、
LIFE(ライフ)研究は、
その数少ない介入試験のデータです。
それがこちらです。
ここでは70歳から89歳の一般住民1635名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は健康維持の指導のみを行ない、
もう一方は週に2回(家庭では3から4回)の運動を行なって、
平均で2.6年の経過観察を行なっています。
その結果、
400メートルの歩行が困難となるような身体機能低下は、
運動療法群で28%有意に予防されていました。
しかし、その一方で病気での入院や死亡は、
むしろ運動療法群で多い傾向が認められました。
高齢者の身体機能の低下は様々ですから、
画一的に運動を強制するようなことを行なっても、
かならずしも高齢者のトータルな予後を、
改善することには結び付かない可能性もある、
という問題を示唆する結果です。
今回の研究はその後に発表されたデータも含めて、
60歳以上の高齢者を対象に、
1年以上の運動療法の効果を検証した臨床データを、
まとめて解析する、スステマティック・レビューとメタ解析という手法で、
この問題の現時点でのまとめを行なっています。
これまでの46の臨床研究における、
22709名のデータをまとめて解析した結果として、
概ね週に3回程度のエアロビックやバランス体操を取り入れた運動療法は、
転倒のリスクを12%、
外傷性転倒のリスクを26%、それぞれ有意に低下させ、
有意ではないものの骨折のリスクも低下させる傾向を示しました。
ただ、頻回の骨折や入院のリスク、
また生命予後の改善効果は有意には見られませんでした。
つまり、高齢者の長期の運動療法は、
ライフ研究単独と同様、
今回のメタ解析においても、
骨折や転倒のリスクの予防にはなっても、
明確に患者さんの生命予後や、
健康寿命の延長には結び付くとは言えないようです。
運動習慣は確かに高齢者においても、
転倒予防や筋力の維持などには有効ですが、
それ自体身体に負荷を掛ける行為ではあるので、
個々の高齢者の状態に応じて、
画一的ではなく、
きめ細かい個別の対応が必要な事項であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
高齢者が定期的に運動することの効果についてのメタ解析の論文です。
定期的に運動の習慣を持つことが、
筋肉量を維持して骨折を予防し、
心血管疾患や認知症の予防にもなることは、
これまでの多くの疫学データや観察研究により、
ほぼ確立された事実です。
ただ、1年以上の長期の運動習慣が、
高齢者に与える影響というように限定すると、
それほど裏打ちとなるデータが豊富にある訳ではありません。
2014年のJAMA誌に掲載された、
LIFE(ライフ)研究は、
その数少ない介入試験のデータです。
それがこちらです。
ここでは70歳から89歳の一般住民1635名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は健康維持の指導のみを行ない、
もう一方は週に2回(家庭では3から4回)の運動を行なって、
平均で2.6年の経過観察を行なっています。
その結果、
400メートルの歩行が困難となるような身体機能低下は、
運動療法群で28%有意に予防されていました。
しかし、その一方で病気での入院や死亡は、
むしろ運動療法群で多い傾向が認められました。
高齢者の身体機能の低下は様々ですから、
画一的に運動を強制するようなことを行なっても、
かならずしも高齢者のトータルな予後を、
改善することには結び付かない可能性もある、
という問題を示唆する結果です。
今回の研究はその後に発表されたデータも含めて、
60歳以上の高齢者を対象に、
1年以上の運動療法の効果を検証した臨床データを、
まとめて解析する、スステマティック・レビューとメタ解析という手法で、
この問題の現時点でのまとめを行なっています。
これまでの46の臨床研究における、
22709名のデータをまとめて解析した結果として、
概ね週に3回程度のエアロビックやバランス体操を取り入れた運動療法は、
転倒のリスクを12%、
外傷性転倒のリスクを26%、それぞれ有意に低下させ、
有意ではないものの骨折のリスクも低下させる傾向を示しました。
ただ、頻回の骨折や入院のリスク、
また生命予後の改善効果は有意には見られませんでした。
つまり、高齢者の長期の運動療法は、
ライフ研究単独と同様、
今回のメタ解析においても、
骨折や転倒のリスクの予防にはなっても、
明確に患者さんの生命予後や、
健康寿命の延長には結び付くとは言えないようです。
運動習慣は確かに高齢者においても、
転倒予防や筋力の維持などには有効ですが、
それ自体身体に負荷を掛ける行為ではあるので、
個々の高齢者の状態に応じて、
画一的ではなく、
きめ細かい個別の対応が必要な事項であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。