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シャワーヘッドの汚染による非結核性抗酸菌症のリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは1月5日から、
いつも通りの診療を行っています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シャワーヘッドの汚染.jpg
2018年のmBio誌に掲載された、
シャワーヘッドの細菌汚染が身体に与える影響についての論文です。

シャワーや入浴は身体を清潔にして、
感染症の予防効果もあると一般的には考えられています。

実際入浴の温熱による免疫力の賦活作用や、
サウナによる肺炎予防効果などが報告はされています。

一方で浴室やシャワールームは、
感染のリスクのある場所でもあります。

循環系の浴槽では、
クラミジアのような特殊な細菌が繁殖し、
難治性の肺炎などの原因となることがあります。
浴室は湿気が多く、
カビなどが繁殖することにより、
その吸入により気管支炎や肺炎などを起こすこともあります。
病原体が微小な水滴と一緒に吸引されると、
より肺の奥まで病原体が吸引されるので、
感染のリスクが高いと考えられています。

シャワーは塩素消毒された水道水が、
勢いよく噴出して身体を洗うもので、
それだけ考えると清潔で、
感染症の問題などはないように思えます。

ただ、実際にはシャワーヘッドの部分などには、
澱などが溜まりやすい死角があり、
そこにムコ多糖などと一緒になった形で、
細菌がバイオフィルムという構造を形成すると、
消毒薬などにも抵抗性となり、
それが予期せぬ病気の原因となることもあるのです。

今回の研究ではアメリカやヨーロッパにおいて、
656家庭のシャワーヘッドを調査したところ、
高率に細菌のバイオフィルムが見つかり、
塩素消毒した水道水においては、
塩素に抵抗性の強い、
非結核性抗酸菌症という慢性気道感染を起こす細菌が、
高率に検出されました。

そこで非結核性抗酸菌症の罹患率と、
シャワーヘッドの培養結果との関連を見たところ、
シャワーヘッドで非結核性抗酸菌が検出された地域で、
非結核性抗酸菌症の罹患率が高い、
という傾向が認められました。

これはまだ間接的なデータに過ぎないので、
シャワーヘッドの感染が、
非結核性抗酸菌症の原因であるとは言い切れませんが、
身近なところに意外な危険が潜んでいる可能性がある、
という点については、
心に留めておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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