アスピリン使用によるCOPDの予後改善効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のChest誌に掲載された、
慢性の肺疾患に対するアスピリン使用の効果についての論文です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、
主に喫煙に伴って、
肺に慢性気管支炎などの肺の炎症が起こり、
それが気道の細菌感染などをきっかけとした急逝増悪を繰り返し、
肺気腫へと進行して呼吸不全に至る、
という病気です。
このCOPDに対しては、禁煙に加えて、
抗コリン剤や気管支拡張剤、ステロイド剤などの吸入が、
呼吸機能の改善や急性増悪の予防目的で使用されています。
ただ、COPDは全身の炎症性疾患という側面があるのですが、
現行の治療は気道の局所の炎症を抑えるには有効でも、
全身の炎症に対しては有効ではありません。
そのために、
全身の炎症への対応として、
マクロライド系の抗菌剤の継続使用や、
スタチンの使用が試みられていますが、
抗菌剤には耐性の問題や聴力低下などの有害事象の問題があり、
スタチンの有効性は、
精度の高い臨床試験にておいては確認されていません。
低用量のアスピリンには抗血小板作用や抗炎症作用があり、
COPDにアスピリンを使用すると、
未使用と比較して生命予後が改善することを、
示唆する疫学データが存在しています。
しかし、データは限られていてその詳細も不明です。
そのため今回の研究では、
COPDの患者さんの疫学データを活用して、
503組のアスピリン未使用と使用のペアにより、
アスピリンの使用がCOPDの予後に与える影響を検証しています。
その結果、
アスピリンの使用により、
COPDの急性増悪のリスクは22%(95%CI: 0.65から0.94)
有意に低下していました。
ただ、救急外来受診や入院を要するような、
重症の事例に限って解析した場合には、
そのリスクの低下は有意ではなくなりました。
また患者さんの呼吸困難度やQOLについても、
アスピリン使用群で改善する傾向を示しました。
このように今回の解析では、
アスピリン使用がCOPDの予後に、
一定の改善をもたらす可能性が示唆されました。
アスピリンには出血系の合併症などの有害事象もあり、
今後より精度の高い介入試験を実施して、
患者さんにとって有効性と安全性のバランスの問題が、
解決されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のChest誌に掲載された、
慢性の肺疾患に対するアスピリン使用の効果についての論文です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、
主に喫煙に伴って、
肺に慢性気管支炎などの肺の炎症が起こり、
それが気道の細菌感染などをきっかけとした急逝増悪を繰り返し、
肺気腫へと進行して呼吸不全に至る、
という病気です。
このCOPDに対しては、禁煙に加えて、
抗コリン剤や気管支拡張剤、ステロイド剤などの吸入が、
呼吸機能の改善や急性増悪の予防目的で使用されています。
ただ、COPDは全身の炎症性疾患という側面があるのですが、
現行の治療は気道の局所の炎症を抑えるには有効でも、
全身の炎症に対しては有効ではありません。
そのために、
全身の炎症への対応として、
マクロライド系の抗菌剤の継続使用や、
スタチンの使用が試みられていますが、
抗菌剤には耐性の問題や聴力低下などの有害事象の問題があり、
スタチンの有効性は、
精度の高い臨床試験にておいては確認されていません。
低用量のアスピリンには抗血小板作用や抗炎症作用があり、
COPDにアスピリンを使用すると、
未使用と比較して生命予後が改善することを、
示唆する疫学データが存在しています。
しかし、データは限られていてその詳細も不明です。
そのため今回の研究では、
COPDの患者さんの疫学データを活用して、
503組のアスピリン未使用と使用のペアにより、
アスピリンの使用がCOPDの予後に与える影響を検証しています。
その結果、
アスピリンの使用により、
COPDの急性増悪のリスクは22%(95%CI: 0.65から0.94)
有意に低下していました。
ただ、救急外来受診や入院を要するような、
重症の事例に限って解析した場合には、
そのリスクの低下は有意ではなくなりました。
また患者さんの呼吸困難度やQOLについても、
アスピリン使用群で改善する傾向を示しました。
このように今回の解析では、
アスピリン使用がCOPDの予後に、
一定の改善をもたらす可能性が示唆されました。
アスピリンには出血系の合併症などの有害事象もあり、
今後より精度の高い介入試験を実施して、
患者さんにとって有効性と安全性のバランスの問題が、
解決されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。