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大腸内視鏡検査はどのくらいの間隔でするべきか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸ファイバーの至適間隔.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
大腸癌検診の至適間隔についての論文です。

最近国立がん研究センターが、
日本の癌統計を発表しましたが、
それによると男女トータルで最も多く診断された癌は大腸癌で、
その生涯(0から74歳)累積の罹患率は4.7%となっていました。

上記文献の記載では、
アメリカの癌を原因とする死亡で、
2番目に多いのが大腸癌である、
となっています。

このように国内外を問わず多い癌である大腸癌ですが、
その多くは腺腫性のポリープから段階的に癌になるので、
早期発見と早期治療により、
その予後を改善することが明らかになっている癌でもあります。

つまり、
癌検診が有効であることが証明されている癌なのです。

概ねこれまでに、
便潜血検査と症状などの問診の検査を行って、
所見があれば大腸内視鏡検査を施行する、という方法と、
最初から標準的なリスクのある一般住民に、
1回だけ大腸内視鏡検査を施行して、
その結果によりその後の方針を決定する、
という方法があります。

日本においては通常この前者による方法が行われていて、
アメリカなどでは、
後者の方法がより広く施行されています。

ただ、問題となる事項の1つは、
1回大腸内視鏡検査を行って、
特にポリープなどの異常が見つからなかった場合、
その後の内視鏡検査はどのくらいの間隔で行うべきなのか、
ということです。

通常日本においては、
5年に1回くらいが勧められることが多いと思います。
一方でアメリカのガイドラインでは、
10年に一度というのが1つの指標として記載されています。
欧米ではより間隔を空けても良いのではないか、
という意見も多くあります。

現状そのうちのどれが良いのかを、
実証的に示すようなデータは限られているのです。

そこで今回の研究では、
アメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
カリフォルニア州において年齢がから50から75歳で、
大腸癌やポリープ、炎症性腸疾患の既往がなく、
家族歴もない1251318名を対象として、
大腸内視鏡検査を施行していない場合と、
1回施行して結果が所見なしであった場合の、
長期予後を比較検証しています。

その結果、
大腸内視鏡検査を1回施行して、
その結果が所見なしであると、
検査をしなかった場合と比較して、
内視鏡検査後10年の時点で、
大腸癌になるリスクを46%(95%CI: 0.31から0.94)、
大腸癌により死亡するリスクを88%(95%CI: 0.02から0.82)、
それぞれ有意に低下させる効果が確認されました。

年数が経てば経つほど、
そのリスクの差は当然縮まってゆくので、
現状のアメリカのガイドラインにおける、
10年という検査間隔の目安は、
一定の妥当性があると判断されたのです。

日本においても、
今後癌検診の内容や検査間隔においては、
より科学的な検証が行われる必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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