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インフルエンザ感染と急性心筋梗塞との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザと急性心筋梗塞.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
インフルエンザなどのウイルス感染の後に、
急性心筋梗塞の発症リスクが増加する、
という興味深い現象を解析した論文です。

インフルエンザがやや終息する傾向はあるものの、
まだまだ流行が続いています。

インフルエンザのような呼吸器感染症の後に、
急性心筋梗塞が発症しやすいという知見は、
以前から複数報告されています。

ただ、インフルエンザに限って言うと、
その診断は症状のみから行われているものが多く、
インフルエンザウイルスによる感染で、
急性心筋梗塞のリスクが本当に高まるかどうかは、
まだ確定的ではありません。

そこで今回の研究では、
一定期間内に呼吸器感染症で原因ウイルスが同定された患者さんのうち、
インフルエンザ感染が確定した患者さんと、
その前後の急性心筋梗塞の発症との関連を検証しています。
具体的にはウイルス同定のための検体採取後7日間以内に発症した心筋梗塞と、
その前後1年間の期間に発症した心筋梗塞の事例を集積し、
感染後1週間程度に発症するリスクと、
ウイルスの種別との関連を検証しています。

インフルエンザウイルスの感染が同定された前後1年間に、
急性心筋梗塞を発症して入院した事例を364例抽出したところ、
検査後1週間を除いた期間と比較して、
検査後1週間に急性心筋梗塞で入院するリスクは、
6.05倍(95%CI: 3.86 から9.50)有意に増加していました。

このリスクをインフルエンザB型ウイルス、
インフルエンザA型ウイルス、RSウイルス、
その他のウイルス毎に見てみると、
インフルエンザB型が10.11倍(95%CI: 4.37から23.38)、
インフルエンザA型が5.17倍(95%CI: 3.02 から8.84)、
RSウイルスが3.51倍(95%CI: 1.11 から11.12)、
その他のウイルスが2.77倍(95%CI: 1.23から6.24)、
とそれぞれ有意に増加していました。

つまり、呼吸器のウイルス感染後1週間以内には、
急性心筋梗塞の発症リスクが増加していることは事実で、
他のウイルスと比較して、
インフルエンザウイルス、特にB型インフルエンザウイルスの感染が、
今回のデータでは最も高くなっていました。

ただ、これはまだ比較的少数例の検証に過ぎないものなので、
今後そのメカニズムも含めて、
より詳細で規模の大きな検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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