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花粉症とインフルエンザの関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザとアレルギーとインターフェロン.jpg
2018年のClin Exp Allergy誌に掲載された、
花粉症(アレルギー性鼻炎)とインフルエンザとの関連についての、
ちょっと興味深い研究報告です。

インフルエンザはまだまだ流行が続いていますが、
その一方で花粉症の症状が出始めた方も、
そろそろ増えて来ています。

この時期になると、
鼻水やだるさや咳が出て、
それが花粉症であるのかインフルエンザを含むかぜであるのか、
区別が付かないというような話を、
患者さんから聞くことが良くあります。

花粉症(アレルギー性鼻炎)は、
鼻や目の粘膜に起こるアレルギー性の炎症ですから、
鼻や咽頭の粘膜にウイルスが感染して起こるかぜとは、
基本的に全く別の病気ですが、
どちらも鼻の粘膜には炎症性の変化が起こる訳ですから、
その症状には同じ部分があります。

また風邪をひくと、
アレルギー症状が悪化して、
鼻づまりなどが酷くなることもありますし、
どこまでがどちらの症状であるのか、
判断が難しいケースも往々にしてあるように思います。

ここで1つの疑問は、
花粉症になっている人は、
インフルエンザや風邪にも罹りやすいのではないか、
ということです。

インフルエンザウイルスや、
ライノウイルスのような風邪の原因ウイルスは、
鼻の粘膜に付着してそこから身体に侵入しますから、
その粘膜での防御機能が、
まずかぜに罹らないためには重要な要素となります。

その肝心の防御機能が、
アレルギー性の炎症で障害されていれば、
おのずとかぜにも罹りやすく、
重症化しやすいのではないか、
という推測が可能です。

それは本当でしょうか?

アレルギー性鼻炎を含む慢性の呼吸器の病気では、
ウイルス感染に対する免疫機能が低下している、
というデータが複数報告されています。
ただ、ウイルス感染に対する身体の免疫の最前線である、
鼻粘膜の防御機能が、
どのように障害されるのかについては、
あまり明確なことが分かっていませんでした。

最近の研究により、
免疫細胞の武器とも言うべきインターフェロンという物質のうち、
3型インターフェロンが粘膜の免疫において、
大きな役割を果たしていることが、
徐々に明らかとなりました。

そこで今回の研究では、
鼻中隔の手術により採取された、
人間の鼻粘膜の細胞を利用して、
A型インフルエンザウイルスに感染させ、
粘膜でのインターフェロンの産生能を、
アレルギー性鼻炎の粘膜と健常な粘膜とで比較したところ、
感染させたA 型インフルエンザウイルスの遺伝子量は、
健常粘膜と比較してアレルギー性鼻炎では多く、
その一方で3型インターフェロンの産生量は、
アレルギー性鼻炎では低くなっていました。
そして、3型インターフェロンの投与により、
インフルエンザウイルスの遺伝子量は減少が認められました。

このように、
花粉症などのアレルギー性鼻炎においては、
粘膜の感染に伴う3型インターフェロンの産生が低下し、
それによりA型インフルエンザウイルスの感染が、
起こりやすくなることが、
粘膜細胞を培養した実験ではほぼ実証されました。
アレルギー性鼻炎では、
その重症化も起こりやすくなることが、
ウイルス量の増加からは推測されます。

花粉症では風邪に罹りやすくなり、
風邪が重くなる可能性が高くなることが、
実験からは示されているのですが、
それがインターフェロン治療で改善する、
という知見は興味深く、
それがすぐに風邪の予防に結び付く、
という訳ではありませんが、
今後の研究の進歩によっては、
それに近いことが近い将来可能となるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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