1型糖尿病は子供の病気ではないのか?(中国の疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
中国での最近の1型糖尿病の疫学調査の論文です。
糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。
1型糖尿病というのは、
身体がブドウ糖を利用するために必要なインスリンが、
何らかの理由により高度に欠乏して、
インスリンを注射しないと生きて行けないような状態となる糖尿病で、
お子さんに発症することが多いので、
小児糖尿病のように言われていたこともあります。
一度発症すれば治るということはなく、
膵臓移植などの特殊な治療以外は、
生涯インスリンの注射を打ち続ける必要があります。
その原因はまだ不明ですが、
特定の国や地域によってその罹患率に大きな差があることや、
ウイルス感染などのきっかけが見られることなどから、
遺伝的な素因と自己免疫による関与などが、
発症メカニズムとして想定されています。
ちなみに日本での発症率は、
上記文献の中国よりは多くて、
年間10万人当たり1人から2人くらいですが、
フィンランドは10万人当たり64.9人と、
非常に高い発症率を示しています。
以前には小児期の発症が殆どと考えられていましたが、
最近成人で発症する劇症型の糖尿病が、
1型糖尿病の成人型と考えられるようになり、
成人の1型糖尿病は世界的にその報告が増えています。
一方で2型糖尿病は、
日本では糖尿病の患者さん全体の99%を占め、
生活習慣病としての糖尿病と言う時には、
ほぼこの2型糖尿病のことを指しています。
通常肥満が先行することが多く、
遺伝要因(糖尿病の生まれつきのなりやすさ)と、
環境要因(暴飲暴食、肥満などの生活習慣)が、
合わさって発症すると考えられています。
インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性と、
1型糖尿病と同じインスリン不足の、
両方が関連して血糖が上がるのですが、
1型糖尿病と比較するとインスリンの不足は軽く、
特に初期にはインスリン抵抗性が主な原因となることが多いのです。
ただ、日本人の糖尿病は、
当初からインスリン不足が原因となり、
あまり太らないケースが多い、
という見解もあります。
今回の疫学データは、
世界的にみると1型糖尿病の発症率の低い中国において、
地域毎の発症率を比較検証したものです。
調査は2010年から2013年の期間において、
中国全土の13の地域の糖尿病の診療を行う505の病院で、
新たに診断されて治療が開始された全ての1型糖尿病の患者を、
その対象としています。
年間1億3000万人、中国の人口の10%が対象に含まれている、
と記載がされています。
登録期間中に、
トータルで5018名の1型糖尿病の患者さんが、
新たに診断をされています。
このうち15歳未満での発症は1239名、
15歳から29歳の発症が1799名、
30 歳以上の発症が1980名となっています。
20歳以上、要するに成人となってから診断されるケースが、
全体の65.3%となっていて、
1型糖尿病が小児発症という考え方が、
実際には正しくはない、ということが分かります。
日本での小児糖尿病の患者さんは、
少し古い統計だと思いますが、
年間5000から6000人発症と推計されていますから、
日本人の発症率の方が、
中国よりかなり多いということが分かります。
1985年から94年の報告では、
今回と算出の方法は異なっていますが、
中国の小児1型糖尿病の発症率は、
年間人口10万人当り0.51人となっていて、
今回の統計では、
全年齢の1型糖尿病の発症率が、
年間10万人当り1.01人、
0から14歳の年齢層の発症率が10万人当り1.93人、
15から29歳が10万人当り1.28人、
30歳以上が0.69人となっていますから、
最近小児の1型糖尿病の発症率は、
増えているということも推察されます。
興味深いのは緯度との関連で、
0から14歳では北の地域ほど発症率は高くなっていましたが、
15歳以上ではそうした傾向は認められませんでした。
ウイルス感染の罹りやすさや、
食生活などの違い、
また人種差や遺伝子のタイプの差など、
色々な可能性はありますが、
特定の原因は判明していません。
1型糖尿病には2型とは異なる多くの特徴があり、
世界的に増加していることや、
成人発症例が以前想定されていたより遙かに多いことなど、
興味深い点は多く、
今後もこうした地域毎の特徴や傾向が、
その病態の解明には重要な手がかりになりそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
中国での最近の1型糖尿病の疫学調査の論文です。
糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。
1型糖尿病というのは、
身体がブドウ糖を利用するために必要なインスリンが、
何らかの理由により高度に欠乏して、
インスリンを注射しないと生きて行けないような状態となる糖尿病で、
お子さんに発症することが多いので、
小児糖尿病のように言われていたこともあります。
一度発症すれば治るということはなく、
膵臓移植などの特殊な治療以外は、
生涯インスリンの注射を打ち続ける必要があります。
その原因はまだ不明ですが、
特定の国や地域によってその罹患率に大きな差があることや、
ウイルス感染などのきっかけが見られることなどから、
遺伝的な素因と自己免疫による関与などが、
発症メカニズムとして想定されています。
ちなみに日本での発症率は、
上記文献の中国よりは多くて、
年間10万人当たり1人から2人くらいですが、
フィンランドは10万人当たり64.9人と、
非常に高い発症率を示しています。
以前には小児期の発症が殆どと考えられていましたが、
最近成人で発症する劇症型の糖尿病が、
1型糖尿病の成人型と考えられるようになり、
成人の1型糖尿病は世界的にその報告が増えています。
一方で2型糖尿病は、
日本では糖尿病の患者さん全体の99%を占め、
生活習慣病としての糖尿病と言う時には、
ほぼこの2型糖尿病のことを指しています。
通常肥満が先行することが多く、
遺伝要因(糖尿病の生まれつきのなりやすさ)と、
環境要因(暴飲暴食、肥満などの生活習慣)が、
合わさって発症すると考えられています。
インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性と、
1型糖尿病と同じインスリン不足の、
両方が関連して血糖が上がるのですが、
1型糖尿病と比較するとインスリンの不足は軽く、
特に初期にはインスリン抵抗性が主な原因となることが多いのです。
ただ、日本人の糖尿病は、
当初からインスリン不足が原因となり、
あまり太らないケースが多い、
という見解もあります。
今回の疫学データは、
世界的にみると1型糖尿病の発症率の低い中国において、
地域毎の発症率を比較検証したものです。
調査は2010年から2013年の期間において、
中国全土の13の地域の糖尿病の診療を行う505の病院で、
新たに診断されて治療が開始された全ての1型糖尿病の患者を、
その対象としています。
年間1億3000万人、中国の人口の10%が対象に含まれている、
と記載がされています。
登録期間中に、
トータルで5018名の1型糖尿病の患者さんが、
新たに診断をされています。
このうち15歳未満での発症は1239名、
15歳から29歳の発症が1799名、
30 歳以上の発症が1980名となっています。
20歳以上、要するに成人となってから診断されるケースが、
全体の65.3%となっていて、
1型糖尿病が小児発症という考え方が、
実際には正しくはない、ということが分かります。
日本での小児糖尿病の患者さんは、
少し古い統計だと思いますが、
年間5000から6000人発症と推計されていますから、
日本人の発症率の方が、
中国よりかなり多いということが分かります。
1985年から94年の報告では、
今回と算出の方法は異なっていますが、
中国の小児1型糖尿病の発症率は、
年間人口10万人当り0.51人となっていて、
今回の統計では、
全年齢の1型糖尿病の発症率が、
年間10万人当り1.01人、
0から14歳の年齢層の発症率が10万人当り1.93人、
15から29歳が10万人当り1.28人、
30歳以上が0.69人となっていますから、
最近小児の1型糖尿病の発症率は、
増えているということも推察されます。
興味深いのは緯度との関連で、
0から14歳では北の地域ほど発症率は高くなっていましたが、
15歳以上ではそうした傾向は認められませんでした。
ウイルス感染の罹りやすさや、
食生活などの違い、
また人種差や遺伝子のタイプの差など、
色々な可能性はありますが、
特定の原因は判明していません。
1型糖尿病には2型とは異なる多くの特徴があり、
世界的に増加していることや、
成人発症例が以前想定されていたより遙かに多いことなど、
興味深い点は多く、
今後もこうした地域毎の特徴や傾向が、
その病態の解明には重要な手がかりになりそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。