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「花筐」(檀一雄原作・大林宜彦監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
花筐.jpg
大林宜彦監督が以前から温めていた企画を映画化した新作が、
今ロードショー公開されています。

原作は檀一雄の短編小説ですが、
ほぼ設定を借りているだけで、
大林ワールドが濃厚かつ長大に展開されています。

僕は大林監督は大好きで、
1977年の「HOUSE ハウス」はロードショーで観ています。
予告編が驚くほど奇怪でポップで壮絶だったので、
一体どんな映画なのかとワクワクしながら劇場に足を運んだのですが、
本編自体も予告編のようなダイジェスト感で、
「あれあれ、何だこれは…」と思っているうちに、
1時間余りで終わってしまい、
呆然としたことを覚えています。
ただ、ラスト血の海になった邸宅の中を、
大場久美子が戸板の筏で突き進み、
化け猫の池上季実子と抱き合う場面の、
表現の出来ない切ない抒情のような物には、
当時からたまらない魅力を感じました。

その後、
「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作に、
大学時代に出逢い、魅了されて本当の意味で虜になりました。

ただ、その一方で大林監督は、
「ねらわれた学園」や「漂流教室」のような、
スクリーンに物を投げつけたくなるような、
三池崇監督に匹敵するような「Z級映画」も沢山撮っていますし、
「異人たちとの夏」のように、
鶴太郎の場面は素晴らしいのに、
最後の女幽霊は最悪で苦笑するだけ、
というようなアンバランスな変な映画や、
「はるか、ノスタルジィ」のような、
観ると恥ずかしくて具合の悪くなるような、
最悪の変態自意識過剰映画も撮っています。

真の藝術家でありながら、
商業主義の権化のようでもある、
一筋縄ではいかない奇怪な巨人だと思います。

さて、今回の「花筐」ですが、
一応反戦物のような体裁ですが、
殆ど筋らしい筋はなく、
おもちゃ箱をひっくり返して、
お菓子を食べておもちゃをベタベタにしたような、
大林映画のガジェットが氾濫する世界が、
3時間弱特に起伏なく展開されるというマニア向けの作品です。

そもそも40くらいの役者さんが、
10代の若者を演じたリしているので、
それ自体でもう真面目に見ていいのか、
ただ笑うべきなのか訳が分からないのですが、
戦時中の筈なのに豪華な食事に豪華なお祭りなど、
これもファンタジーとして楽しむべきなのか、
ツッコミをするべきなのかも良く分かりません。

「血とバラ」のオマージュで、
昔から大林映画で定番の、
血が白いドレスに盛大にf流れたリ、
薔薇の花びらが血に変化したり、
粉々になった鏡に顔がバラバラに映ったり、
部屋から水に飛び込むような幻想シーンなど、
大林映画を昔から観ている人には、
懐かしいイメージが山のように出て来ますが、
映像がビットレートの低いDVDのようで美しくないのと、
同じ構図の場面が多すぎるので、
次第に疲れて退屈してしまいます。

他の大林映画の多くでも言えることですが、
もう少し上映時間の短い、
密度の濃い映画にして欲しかったと思います。

そんな訳で、
病に倒れながらこの作品を完成させた大林監督の執念には、
最大の敬意を表したいとは思いながら、
マニア以外にはあまりお薦め出来ず、
劇場で観ても映像の精度はあまり高いものではないので、
大変失礼ですがテレビの画面で観れば充分かな、
という印象を個人的には持ちました。

一般の方にはあまりお薦めは出来ません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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