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鼻ポリープではインフルエンザ感染が促進される [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザと鼻ポリープ.jpg
2010年のPLOS ONE誌に掲載された、
鼻の炎症性ポリープのインフルエンザ感染に対する感受性を、
検証した論文です。

昨日はアレルギー性鼻炎とインフルエンザ感染との関連を、
話題として取り上げましたが、
今日はそれに関連して、
今度は炎症性の鼻粘膜への、
インフルエンザウイルスの接着についての論文をご紹介します。

インフルエンザウイルスは主に鼻の粘膜にある、
シアル酸という一種の受容体に結合して、
それから細胞の中に入り感染が成立します。

この時通常の季節性インフルエンザウイルスと、
人間に感染すると重症化する鳥インフルエンザウイルスでは、
結合するシアル酸受容体の種類が違っていて、
鳥インフルエンザウイルスが感染しやすいシアル酸受容体は、
人間の上気道の細胞には殆ど存在していないので、
今のところ人間での鳥インフルエンザの感染は、
成立しづらいと考えられています。

ところが…

鼻や咽頭の粘膜が、
アレルギー性もしくは感染による炎症を起こすと、
シアル酸の受容体が増加する可能性が、
これまでの研究から示唆されています。

今回の研究では切除した人間の鼻ポリープ(炎症性ポリープ)の組織と、
通常の鼻粘膜組織を使用して、
それを季節性インフルエンザウイルスと、
鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に感染させ、
シアル酸受容体への結合を比較しています。

その結果、
健常な粘膜と比較して、
炎症性ポリープの粘膜では、
2種類のシアル酸受容体の数がいずれも増加していて、
季節性インフルエンザ、鳥インフルエンザ、
いずれのウイルスの感染への感受性も、
高まっていることが確認されました。

つまり、
アレルギー性鼻炎や鼻ポリープのある患者さんは、
そうでない人よりも季節性インフルエンザのみならず、
鳥インフルエンザの感染もより起こりやすい、
というちょっとショッキングな結果です。

これはまだ実験レベルの知見ですが、
今後臨床的にもこうした検証が行われ、
どのような人にどれだけ感染が起こりやすいのか、
検証が積み重ねられ、
臨床応用に結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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