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過敏性腸症候群に対する抗うつ剤少量投与の有効性(2023年プライマリケアのデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
過敏性腸症候群に対する抗うつ剤の有効性.jpg
Lancet誌に2023年10月16日付で掲載された、
過敏性腸症候群に対する抗うつ剤少量使用の有効性についての論文です。

過敏性腸症候群は世界的に、
人口の5から10%が生涯で罹患する、
と言われるほど多い病気です。

主に自律神経系の調節の乱れにより、
腸の運動のバランスが崩れて、
下痢や便秘、腹満、腹痛、便の性状の異常などの症状が、
慢性的に持続するのです。

上記文献での記載によれば、
イギリスにおいては過敏性腸症候群の治療は、
主に専門医療機関ではなく、
一般のプライマリケア医で施行されていて、
ガイドラインにおけるスタンダードな治療は、
バランスの良い食事や生活改善、
食物繊維の摂取や鎮痙剤、便秘治療薬などの使用です。

こうした治療により改善が見られない場合に、
補助的に検討される治療の1つは、
抗うつ剤、特に古典的な三環系抗うつ剤の少量投与です。

ただ、そのプライマリケアにおける有効性は、
現時点であまり確認されていません。

そこで今回の研究では、
イギリスの55か所のプライマリケアの医療機関で、
通常の生活改善や鎮痙剤などの治療で改善の見られない、
過敏性腸症候群の患者トータル463名を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は抗うつ剤のアミトリプチリン(商品名トリプタノールなど)を、
1日10㎎で開始して30㎎まで増量し、
もう一方は偽薬を使用して、
6か月の治療効果を比較検証しています。

その結果、
偽薬と比較してアミトリプチリン使用群では、
治療半年の時点での過敏性腸症候群の症状スコアが、
有意に改善していました。
有害事象には両群で明確な差は認められませんでした。

この治療は使用量は少量のため、
比較的使用継続し易く、
その有効性が厳密な臨床試験において確認されたことの、
プライマリケアにおける意義は大きなものだと思います。

ただ、過敏性腸症候群と一口に言っても、
実際にはかなり幅のある疾患概念なので、
今後そのサブタイプと抗うつ剤の有効性との関連など、
より詳細な解析がされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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