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ウェスト/ヒップ比の有効性(2023年再評価データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ウェストヒップ比と健康.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年9月5日付で掲載された、
肥満の指標を生命予後で比較した論文です。

肥満の指標として、
世界的に最も広く使用されているのは、
BMIという数値です。

これはキログラム単位の体重を、
メートル単位の身長で2回割り算した数値で、
WHOはこの数値が18.5から24.5であることを、
基準値として設定していて、
この数値が25.0以上を過体重、
30.0以上が肥満と定義しています。
日本においては、基準値の設定はほぼ同じですが、
25.0以上を肥満として設定しています。

ただ、このBMIを肥満の指標とする考え方については、
色々な議論があります。

肥満の基準値を設定しているのは、
それを超えれば健康面でのリスクが高まり、
生命予後にも悪影響を与えることが分かっているからです。

端的に言えば、
肥満は健康寿命を縮めるからです。

しかし、BMIによる肥満の判定は、
常に正しいとは言えない側面があります。
特に指摘されるのは人種などの影響で、
以前ご紹介した論文では、
人種によりかなりの差があると報告されています。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-05-20

更には同じBMIであっても、
健康リスクを高める内臓脂肪の量にはかなりの差があって、
その健康リスクにも差があるという指摘もあります。

それでは、BMIより肥満の指標として、
有用な測定値はないのでしょうか?

これまでに同様に使用されていた内臓脂肪の指標として、
体脂肪指数(Body Fat Index)があり、
これはインピーダンス法(市販の体重計などで用いられている技術)
で測定されたキログラム単位の体脂肪量を、
メートル単位の身長で割り算したものです。
また、お尻よりお腹の周りが大きい場合に、
より腹部の内臓脂肪が増加していて健康リスクが高い、
という考え方があり、
それを分類する指標がウエスト/ヒップ比(WHR)で、
単純にウエスト径をヒップ径で割り算した数値です。
この数値を元にして、
リンゴ型肥満と洋ナシ形肥満という、
分類が行われることがあります。

今回の研究では、
UKバイオバンクという、
遺伝情報を含む大規模な医療データを活用して、
BMI、体脂肪指数、ウエスト/ヒップ比の3つの指標と、
生命予後との関連を検証しています。

その結果意外なことに、
BMIや体脂肪指数よりも、
ウエスト/ヒップ比の増加と総死亡リスクとが、
より強く直線的に関連していました。
更にその関連はBMIとは独立に認められました。

つまり、今回の信頼のおける医療データの解析では、
生命予後に限ったものですが、
BMIや体脂肪指数の増加よりも、
ウエスト/ヒップ比の増加の方が、
より強く健康リスクの悪化と関連していたのです。

今後死亡リスクのみではなく、
糖尿病などの個々の疾患のリスクとの関連も、
検証される必要がありますが、
肥満のリスクをBMIのみで評価するという考え方は、
再検討をする必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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