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幻覚剤シロシビンの持続性抗うつ効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や保育園の健診で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シロシビンの抗鬱作用.jpg
JAMA誌に2023年8月31日ウェブ掲載された、
幻覚剤の成分であるシロシビンに、
安定して持続した抗うつ作用があるとする報告です。

うつ病の治療薬である抗うつ剤は、
その有効性は確認されている一方で、
長期の継続的な服用が必要となることが多く、
有害事象や副作用も少なからず存在している、
という欠点があります。

そのため薬物を使用しないうつ病の治療についても、
研究が進められていますが、
現時点で抗うつ剤の必要性がなくなるような、
安定した有効性のある代替治療は確認されていません。

マジックマッシュルームと呼ばれる、
特殊な幻覚作用のあるキノコ類があり、
それを乾燥させたものが幻覚剤として使用されることがあります。
麻薬と同じ取り扱いとなり、
違法薬物として規制されています。
この幻覚作用のある成分がシロシビン(Psilocybin)です。

2016年にこのシロシビンに、
うつ病に対する持続的な有効性があるとする研究結果が発表され、
話題を集めました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27210031/
シロシビンはセロトニン受容体を刺激するような作用があり、
その意味ではうつ病に有効であってもおかしくはないのですが、
他のうつ病治療薬に見られるような副作用がなく、
一度の服用で1か月を超える長期間、
その効力が持続するという効果は、
それだけでは説明が出来ないものです。

ただ、これまでのシロシビンの臨床的な有効性の報告は、
症例報告やせいぜい数十人の少数例の検証が殆どでした。

今回の研究ではシロシビンの臨床使用に向けた、
第2相の臨床試験として、
アメリカの11か所の専門施設において、
年齢が21から65歳で60日以上持続するうつ病症状があり、
投薬治療をしていないか、
していても減量中止が可能な104名のうつ病患者を、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はシロシビンを1回25㎎で単回使用し、
もう一方はビタミン剤のナイアシンを100㎎偽薬として単回使用して、
その後6週間の経過を観察しています。

その結果、
シロシビン使用群ではナイアシン使用群と比較して、
臨床的なうつ病尺度が有意に改善を示し、
その有効性は6週間持続していました。
シロシビン内服群では幻視などの幻覚症状が、
44%に認められましたが、
一時的なものでその後の治療経過には、
大きな影響を与えていませんでした。

シロシビンは幻覚剤で一定の常習性があり、
他のより健康に害のある薬剤依存のリスクも、
高める可能性があります。

従って、そのうつ病に対する使用には、
通常の薬剤以上に慎重である必要がありますが、
この薬の長期持続する有効性と、
一時的幻覚以外に目立った有害事象の見られない安全性は、
これまでの抗うつ剤にはない性質のもので、
今後の慎重な検証の結果に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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