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体温の正常値とそれに影響を与える因子について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
体温の基準値は?.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年9月5日付で掲載された、
体温の個人差についての論文です。

体温というのは非常に一般的な健康指標で、
特に感染症の診断や治療においては、
今でもその数値が重要な指標として活用されています。

最近では新型コロナウイルス感染症において、
感染の疑いがあるかを振り分けるトリアージの指標として、
体温37.5℃以上という数値が使用されています。

体温測定には多くの方法があり、
日本で主に使用されているのは脇の下などで測る表面温ですが、
これは汗を沢山かいていたりすれば、
熱があっても簡単に低い数値が出てしまうなどの欠点があります。
39℃の高熱が続いています、と連絡を受け、
外来を受診してもらった患者さんが、
体温を改めて測ると正常、
ということもしばしばあります。

より安定した体温測定として、
欧米では主に使用されていて、
日本でも基礎体温のチェックなどには使用されているのが、
口の中に温度計を入れて測る口腔温です。

口腔温の正常値は37.0℃とされていますが、
これは1851年にドイツで行われた研究データを元にして確立された、
非常に古い知見で、
その後しっかりと再検証されていないのが実際です。

今回の研究はアメリカの単独施設の外来患者において、
618306件の診療データの分析を行い、
測定された口腔温の基準値と、
それに影響を与える因子を検証しています。

その結果病気などによる体温異常を除外して解析した平均体温は、
36.64℃と算出されました。
体温は年齢が高いほど低くなり、また身長が高いほど低く、
体重は重いほど高くなっていました。
こうした因子を勘案した正常体温の基準値は、
全体の95%が35.96℃から37.32℃に分布していました。
全体の1%の高い温度と低い温度を切り捨てると、
最高体温は身長が低く太った20代の女性が、
午後2時に測定した場合で37.88℃、
最低体温は高身長で痩せた80代の男性が、
午前8時に測定した場合で36.81℃でした。

このように古いドイツのデータと比較して、
口腔温はやや低めに分布していて、
実際にはかなりのばらつきが認められました。
今後は身長や測定時間などの因子を補正した、
より正確な体温測定が、
臨床でも簡便に使用されることが求められるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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