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リウマチ性多発筋痛症に対するインターロイキン6受容体抗体の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
リウマチ性多発筋痛症に対するインターロイキン6抑制の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年10月5日付で掲載された、
リウマチ性多発筋痛症の新しい治療についての論文です。

リウマチ性多発筋痛症というのは、
50歳以上の高齢者に多い、
原因不明の炎症性の病気です。

熱が出て、全身特に首や肩の後ろ側や腰に強い、
筋肉痛のような痛みと、
関節リウマチを思わせる朝のこわばりがあるのですが、
関節リウマチの診断のための検査では、
リウマチとは診断されません。

クリニックでも時々遭遇する、
筋肉痛を伴う発熱症状では、
比較的多い病気です。

治療はステロイド(糖質コルチコイド)で、
通常プレドニンで1日15から20㎎くらいを使用し、
それが数日以内に劇的な効果を示します。

ただ、問題はステロイドの減量に伴って、
痛みや熱などの症状が再燃することで、
上記文献の記載では患者さんの半数以上は、
ステロイドを完全に中止することが困難であるとされています。

クリニックでも概ね1日5㎎程度のステロイドを、
止むを得ず継続している患者さんがいます。

リウマチ性多発筋痛症は、
関節リウマチではありませんが、
リウマチでも関節炎の原因となっている、
炎症性のサイトカインが、
重要な役割を果たしていると考えられています。
その代表はインターロイキン6です。

関節リウマチの治療においては、
既にインターロイキン6に結合して、
その働きを低下させる抗体製剤が、
一般の臨床で使用されています。

それでは、リウマチ性多発筋痛症に、
こうした抗体製剤を活用することは有用なのでしょうか?

今回の研究は世界17か国の60の専門施設において、
リウマチ性多発筋痛症でプレドニンの治療を受け、
1日7.5㎎以上の用量で再燃の見られた、
トータル118名の患者さんをくじ引きで2つの群に分けると、
一方はインターロイキン6の抗体製剤である、
サリルマブを月2回200㎎皮下注射し、
もう一方には偽薬を使用して、
その経過を52週に渡り観察しています。

プレドニンは最初2週間1日15㎎で使用し、
その後はサリルマブ群では14週掛けて減量中止を図り、
偽薬群では52週掛けてゆっくりと減量し中止を図ります。
(44週以降は1日1㎎の使用です)

その結果、
52週の時点で症状も検査値も改善が持続しており、
プレドニンも予定通りの減量が継続されている寛解は、
サリルマブ群の28%、偽薬群の10%に認められ、
寛解率はサリルマブの使用により、
18ポイント有意に改善していました。
52週の時点での累積のプレドニン使用量は、
中央値でサリルマブ群777㎎に対して、
偽薬群では2044㎎で、
サリルマブの使用により、
ステロイドの使用量が抑制されることが確認されました。

サリルマブ群では白血球減少などの有害事象は認められ、
薬価も非常に高額ですから、
臨床的に使用するべきとまでは、
言い切れる結果ではありませんが、
ステロイド治療でなかなか減量が困難な患者さんにとっては、
有用な選択肢であることは間違いがなく、
今後その適応の絞り込みなど、
更なる研究の蓄積に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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