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GLP-1アナログの消化器系有害事象(肥満治療に使用した場合の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
GLP1アナログの消化器系有害事象.jpg
JAMA誌に2023年10月6日付で掲載されたレターですが、
GLP-1アナログと肥満治療に使用した場合の、
消化器系の有害事象の頻度についての内容です。

GLP-1アナログは、
人間の消化管から分泌されるホルモンである、
GLP-1と同じ作用を持つ薬剤で、
その膵臓を刺激してインスリン分泌を促し、
血糖を降下させる作用から、
糖尿病の治療薬として開発されて使用され、
その臨床データで体重減少効果が認められたことより、
最近では肥満症の治療薬としても注目されている薬剤です。

もともとは注射の製剤しかなかったのですが、
最近になって内服薬も開発され、
その使用のハードルはグッと下がりました。

アメリカでは、
セマグルチドとリラグルチドの2種類のGLP-1アナログが、
肥満症の治療薬として使用されています。
日本ではセマグルチドが2023年に承認されましたが、
その使用が始まる前に、
多くの自費のクリニックなどで、
糖尿病治療薬のGLP-1アナログが、
ダイエットや減量目的で使用されている、
というかなり無秩序な状態が、
生じているような気がします。

しかし、GLP-1アナログには、
主に消化器系の有害事象のリスクがあります。
それは、胆道系疾患、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺、
などの発症増加です。
ただ、このデータは糖尿病の治療に施行した場合のもので、
肥満症の治療に対して使用した場合にも、
同じようなリスク増加があるとは限りません。

そこで今回の研究では、
アメリカの大規模な処方のデータベースを活用して、
セマグルチドとリラグルチドの2種類のGLP-1アナログの、
肥満に対する処方を、
それ以前の肥満症のアメリカの治療薬である、
ブプロピオン・ナルトレキソン併用療法と比較して、
消化器系有害事象のリスクを比較検証しています。

その結果、
GLP-1アナログの使用は、
ブプロピオン・ナルトレキソン併用療法と比較して、
膵炎のリスクを9.09倍(95%ci:1.25から66.0)、
腸閉塞のリスクを4.22倍(95%CI:1.02から17.40)、
胃不全麻痺のリスクを3.67倍(95%CI:1.15から11.90)、
それぞれ有意に増加させていました。
胆道系疾患のリスクについては、
有意な増加はありませんでした。

このように、
肥満症に対する治療においても、
糖尿病の治療と同様に膵炎などのリスク増加は認められていて、
GLP-1アナログの使用時には、
常に消化器系の疾患の発症に、
留意をする必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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