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乳製品の摂取と大腿骨骨折リスク(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
牛乳の骨折リスク.jpg
Journal of Nutritional Science誌に、
2023年9月11日付で掲載された、
乳製品の摂取量と骨折リスクについての論文です。

乳製品の健康への影響という問題については、
これまでに相反するデータがあり、
まだ結論に至ってはいません。

乳製品は吸収の良いカルシウムが豊富で、
リンやビタミンDも含んでいるため、
骨粗鬆症の予防に良いとかつては言われていましたが、
最近の疫学データにおいては、
乳製品の摂取で骨粗鬆症のリスクが、
明確に低下するというような結果は得られていません。

一方で乳製品は動物性脂肪を主体とする食品ですから、
脂質代謝に悪影響を与える可能性があり、
その摂取によりコレステロールが増加した、
というようなデータもあります。
このため心血管疾患の予防という観点からは、
現行のガイドラインにおいて、
その摂取の一定の制限が推奨されています。

チーズやヨーグルトなどの乳製品由来の発酵食品は、
生乳とは異なって動脈硬化に悪影響を与えず、
認知症予防にも良い効果が期待できるのでは、
というような報告もあります。

今回の研究はこれまでの主だった臨床データをまとめて解析する、
メタ解析の手法を用いて、
乳製品の種類別の摂取量と、
寝たきりの原因として重要な、
大腿骨頸部骨折のリスクとの関連を検証しているものです。

13の精度の高い臨床研究より、
トータルで486950人のデータが解析されています。

その結果、
牛乳を全く飲まない人と比較して、
牛乳の摂取量が400グラムまでの用量において、
牛乳の摂取量が多いほど大腿骨頸部骨折のリスクは増加していて、
その影響は1日200グラム当たり、
7%(95%CI:1.05から1.10)と算出されました。
その骨折リスクは、
1日400グラムで15%(95%CI:1.09から1.21)と最大となり、
それを超えると頭打ちになりますが、
750グラムまでは牛乳を飲まない人より、
リスクの高い状態となっていました。

一方でヨーグルトについての5つの臨床データの解析では、
ヨーグルト1日250グラム当たり、
大腿骨頸部骨折のリスクは、
15%(95%CI:0.82から0.89)有意に低下していて、
チーズに関する5つの臨床データの解析でも、
1日43グラム当たり19%(95%CI:0.72から0.92)、
大腿骨頸部骨折のリスクは有意に低下していました。

そして、牛乳にチーズ、ヨーグルトを併せた、
乳製品のトータルな摂取量と大腿骨頸部骨折のリスクとの間には、
有意な関連は認められませんでした。

このように、
今回の最新のメタ解析においても、
これまでの主な報告と同様、
牛乳の摂取は骨折リスクを、
低下させないばかりか、
増加させる可能性が高く、
ヨーグルトやチーズの摂取は、
そのリスクを低下させる可能性が高い、
という結果が得られました。

1日750ミリリットルを超えるとリスク増加がなくなる、
というのは解釈の難しいデータですが、
それだけ沢山の牛乳を毎日飲んでいる人は、
人数としてはかなり少なく、
アスリートなども含まれている可能性がありますから、
そうしたバイアスが掛かっている可能性は想定されます。

ただ、その牛乳によるリスク上昇は、
それほど顕著なものではなく、
特に高齢者においては、
手軽な蛋白の補充に有用性は高いとする報告もあるので、
1日200ミリリットルを超えない程度の摂取には、
大きな問題はないと考えて良いではないかと思います。

従って、牛乳好きの方は、
無理にそれを控える必要はないと思いますが、
乳製品のトータルな健康影響という観点から考えると、
生乳よりもヨーグルトやチーズの方が、
健康への良い影響が明確であるという知見のあることは、
確認しておいた方が良いように思います。

乳製品は賢く活用するのが吉と思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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