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ロスバスタチンとアトルバスタチンの直接比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの直接効果比較.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年10月18日付で掲載された、
コレステロール降下剤2剤の有効性と安全性を比較した論文です。

これは一般の臨床に有用な情報を提供してくれる研究だと思います。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
強力なコレステロール降下作用と共に、
抗炎症作用なども併せ持ち、
今では動脈硬化の予防薬的な位置づけとして、
幅広く使用されている薬です。

その有効性は特に狭心症や心筋梗塞などの、
心臓の血管の病気を持っている人の、
再発予防や予後の改善において最も認められています。

スタチンには多くの種類があり、
基本的な性質は同じですが、
個々の薬剤でその強さや副作用、有害事象には差がある、
という見解もあります。

そこで今回の研究では、
代表的なスタチンである、
アトルバスタチン(商品名リピトールなど)と、
ロスバスタチン(商品名クレストールなど)の2種類の薬剤を、
虚血性心疾患の患者さんに使用した際の、
その予防効果と安全性を比較検証しています。

アトルバスタチンは脂溶性、
ロスバスタチンは親水性のスタチンで、
両者とも世界的に広く使用されているので、
この2剤を比較することは意義のあることなのです。

韓国の12の専門施設において、
19歳以上で虚血性心疾患を発症した4400名の患者を対象とし、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はアトルバスタチンを使用し、
もう一方はロスバスタチンを使用して、
その経過を3年間観察しています。

これは別の目的で施行された臨床試験の二次解析で、
スタチンは高強度で使用するか、中強度で使用するかで区分され、
中強度治療では、
アトルバスタチンは1日20㎎、ロスバスタチンは1日10㎎が、
高強度治療では、
アトルバスタチンは1日40㎎、ロスバスタチンは1日20㎎が、
初期量として使用され、
コレステロールの目標値に合わせて調整されています。

その結果、
観察期間中の総死亡、心筋梗塞、脳卒中、
心臓カテーテル治療を併せたリスクには、
2種のスタチンの間で有意な差はありませんでした。
同じプロトコールの中では、
アトルバスタチンよりロスバスタチンの方が、
そのLDLコレステロール低下作用は強く認められましたが、
経過中の新規糖尿病発症リスクについてみると、
アトルバスタチン群が5.3%に対して、
ロスバスタチン群は7.2%で、
ロスバスタチンの糖尿病発症リスクは、
アトルバスタチンの1.39倍(95%CI:1.03から3.87)、
白内障の手術のリスクも、
1.66倍(95%CI:1.07から2.58)有意に増加していました。

このように今回の検証では、
アトルバスタチンとロスバスタチンの、
虚血性心疾患患者における予後改善と再発予防効果には、
明確な差はない一方で、
新規糖尿病発症リスクと白内障のリスクについては、
ロスバスタチンがやや多い、
という結果が得られました。

この検証は今後の臨床に直結する有意義なもので、
今後これが脂溶性と親水性の差によるものなのか、
それとも他の因子が関連しているかなど、
より詳細な検証がなされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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