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サル痘臨床事例のまとめ(イギリスの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療とレセプトの事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サル痘イギリス論文.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年7月28日ウェブ掲載された、
サル痘の事例をまとめた論文です。

日本でも症例が報告され、
世界的な広がりを見せているサル痘ですが、
この論文ではイギリスで遺伝子検査により診断された、
197の事例をまとめて解析しています。

年齢の中間値は38歳で、事例は全て男性、
197例中196例については、
ゲイかバイセクシャルであるか、
男性同士の性交渉の既往が確認されています。

全ての事例で皮膚粘膜病変があり、
最も多いのは性器の病変で56.3%に認められ、
続いて肛門周囲が41.6%と続いています。

86.3%では全身症状を伴っていて、
発熱が61.9%、リンパ節腫脹が57.9%、
筋肉痛が31.5%に認められ、
全身症状は皮膚粘膜病変出現前に見られるものが61.5%で、
皮膚粘膜病変出現後に見られるケースも38.5%で認められています。

事例の35.9%ではHIV感染症が併存しています。

病状はトータルには比較的軽症で、
全体の10.2%に当たる20例が入院していますが、
主に肛門周囲の痛みや陰茎の腫脹が原因となっていました。

元論文には陰茎などの多くの画像が添付されていますが、
かなり刺激の強いものなので、
紹介は控えさせて頂きます。

まだ病態など不明の点の多くサル痘ですが、
今の状況ではクリニックでも、
いつ患者さんに遭遇するか予測は出来ず、
取り敢えず最低限の鑑別は、
可能な状態にしておきたいとは思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス感染症の味覚嗅覚障害の回復率 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の味覚嗅覚障害.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年7月27日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の味覚嗅覚障害について、
その回復率を検証したメタ解析の論文です。

味がしなくなる、匂いが分からない、
というような味覚嗅覚障害は、
通常の感冒においても認められることはありますが、
新型コロナウイルス感染症において、
非常に多く認められることが指摘されています。

ただ、その詳細についてはまだ明らかでない点が多く、
オミクロン株の流行以降は、
味覚嗅覚障害の発症頻度は減っているという報告もあり、
確かに診療においてもそうした印象は持っていますが、
実証された事項ではありません。

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、
メタ解析によるものですが、
味覚嗅覚障害それぞれの頻度と、
その回復に掛かる時間を検証しています。

18の臨床研究に含まれる3699名の患者情報を解析したところ、
嗅覚障害は感染者の5.6%に、
味覚障害は4.4%に認められました。
その30日後、60日後、90日後、180日後の回復率は、
嗅覚障害が74%、86%、90%、96%で、
味覚障害が79%、88%、90%、98%でした。

どのような患者が回復しづいらいのかを見てみると、
女性、障害の程度が重い場合、鼻閉を伴う場合に、
回復しづらい傾向が認められました。

このように、味覚嗅覚障害の多くは経過と共に回復しますが、
半年経過後も回復が見られないケースもあり、
今後その有効な治療法の開発を含めて、
対応が急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビタミンD補充の骨折予防への有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンDの骨折予防効果2022.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年7月28日掲載された、
サプリメントとしてのビタミンDの、
骨折予防効果についての論文です。

ビタミンDはカルシウムの腸管からの吸収を促進し、
骨の代謝にも多くの影響を与えて、
骨の健康には必要不可欠な栄養素です。

その欠乏が骨代謝に悪影響を与えることも分かっています。

そのために、骨折予防などの謳い文句で、
ビタミンDのサプリメントは、
単独もしくはカルシウムなどとの抱き合わせで、
市販もされ多くの人が利用しています。

ただ、サプリメントを使用される方の殆どは、
ビタミンDの高度な欠乏などはない人です。

そうした一般の人がビタミンDを食事以外に摂ることで、
骨折予防などの効果が得られるのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
ビタミンDとオメガ3系脂肪酸の健康効果を調査した、
臨床研究のデータを活用して、
偽薬と比較した、
ビタミンD(1日2000IU)の骨折予防効果を検証しています。

対象はビタミンDの欠乏や骨量の減少、
骨粗鬆症などのない、
50歳以上の男性と55歳以上の女性、トータル25871名です。
中間値で5.3年の観察期間中に、
1991件の骨折が確認されています。
そして、ビタミンDのサプリメントは偽薬と比較して、
トータルな骨折のリスクについても、
個別の部位の骨折のリスクについても、
明確な予防効果を示していませんでした。

これは最近の同種の複数の研究とも一致する結果で、
明確なビタミンDの欠乏のない人では、
ビタミンDのサプリメントを使用しても、
骨折を予防する効果はないと、
もうそう言い切っても誤りではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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