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「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
マルチバースオブマッドネス.jpg
マーベル・コミックの大河ドラマ的ヒーロー物の1作として、
ドクター・ストレンジを主人公に遊び尽くした、
という感じの怪作が今公開されています。

マルチバースの扉が開いてしまい、
何でもありの多元世界を舞台に、
過去作のパロディや引用を交えた、
万華鏡的な闘争の連続が、
毒々しくも絢爛豪華に展開されます。

「ドクター・ストレンジ」は独立した作品として、
非常に良く出来ていましたし、
空間が複雑に折り畳まれるようなビジュアルも、
とても完成度が高くて興奮させられました。
この作品はドクター・ストレンジものとしては2作目となり、
流れ的には「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」の後日談なので、
サム・ライミとしても相手に不足はない、
というところで気合が入っていました。

ただ、ちょっと物足りない感じがするのは、
物語が主に1人の魔女との対決となっているのですが、
その魔女が別の世界での子供への愛から、
そうしたことをしているのが、
最初から明らかになっているんですね。
これだと結局最後には魔女は改心するだろう、
ということが誰でも想定出来るので、
それほど「先がどうなるかしら」というワクワクを、
感じることが出来ないのですね。
それで、結局その予想の通りになってしまうので、
結構脱力してしまいました。

それと「ドクター・ストレンジ」のビジュアルとして、
最も魅力的だった空間折り畳みを、
今回は殆どやらないんですね。
空間に穴が開いて2つの世界が繋がるような凡庸な演出より、
空間折り畳みで繋がる方が、
絶対良いと思うのですが、
何か出来ない理由があるのかも知れません。

そんな訳で今ひとつ乗り切れない部分はあったのですが、
久しぶりに怪人サム・ライミが大暴れ、
という感じの面白さはあって、
彼の過去作のファンであれば、
これはもう必見であることは間違いのない一作ではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「死刑にいたる病」(白石和彌監督映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
死刑にいたる病.jpg
白石和彌監督によるサイコスリラーで、
櫛木理宇さんによる同題の小説の映画化です。

阿部サダヲさんが猟奇的連続殺人の犯人を演じ、
過去に因縁のある岡田健史さん演じる大学生が、
たった1件の冤罪を調べて欲しいと阿部さんから依頼され、
そこから闇の世界に足を踏み入れてゆく、
という物語です。

原作を先に読んだのですが、
正直それほどではないな、という印象で、
連続殺人鬼が1件のみを冤罪と主張して、
過去に少し知り合いであっただけの大学生に、
その調査を依頼するというプロット自体に、
かなり無理があるなあ、という感じがあって、
そこには勿論裏があるのですが、
それが分かった上でも、
説得力は薄いという感じがします。

映画はほぼほぼ原作通りなのですが、
これだったら、オリジナルで組み上げた方が、
より映画的な作品になったように思いますし、
何故この原作を、というのが最後まで疑問でした。

白石監督はどちらかと言うと、
オリジナルより原作ものの方が出来が良いのですが、
今回は定常運転で可もなく不可もなくという感じでした。
岡田さんが雨の中で混乱するところと、
ラストは監督の趣味が出た感じで、
見ごたえのある場面に仕上がっていましたが、
それが映画全体を押し上げるという感じではなくて、
細部にちょっと個性を出した、
というレベルに留まっていました。
阿部さんの不気味さはなかなかで、
新境地という芝居でしたが、
爆発するような部分はなく、
ほぼ全て面会室のみの芝居なので、
こちらも食い足りない印象が最後まで残りました。

そんな訳で、
キャストも演出も手練れを揃えた割には、
平均点のサイコスリラーで、
白石監督の個性が、
十全に発揮されたようなものではありませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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免疫性血小板減少症とインフルエンザワクチン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザワクチンと血小板減少.jpg
2022年4月のJAMA Internal Medicine誌に掲載されたレターですが、
インフルエンザワクチン接種後の血小板減少の頻度についての検証です。

免疫性血小板減少症(Immune Thrombocytopenia)というのは、
血小板に対する自己抗体によって、
血液中の血小板が減少する病気のことで、
僕が大学で習った時には、
特発性血小板減少性紫斑病と呼ばれていましたが、
今はこのように名前が変わっています。

血小板に対する自己抗体が、
何故産生されるのかは不明ですが、
この病気はウイルス感染やワクチン接種後に発症することが多く、
ワクチンでは特にインフルエンザワクチンでの、
発症事例が多く報告されています。

ドイツの疫学データでは、
インフルエンザワクチン接種後の免疫性血小板減少症は、
未接種と比較して3.8倍リスクが増加した、
というように報告されています。
その一方で、特にリスク増加は見られなかった、
と言う報告も複数存在しています。

今回の検証はフランスの医療統計を解析したもので、
2009年から2018年における65歳以上の、
ほぼ全ての事例が包括されています。
年齢が65歳以上となっているのは、
フランスではその年齢層が、
インフルエンザワクチン推奨となっているためです。

トータルで4394例の免疫性血小板減少症が診断されており、
そのうちの3245例は、
少なくとも1回のインフルエンザワクチン接種を経験しています。
ここでワクチン接種後6週間以内の発症を、
ワクチンとの関連性が否定出来ないとすると、
7.1%に当たる231例がその時期に発症しています。

複数の統計手法により、
インフルエンザワクチン未接種と比較して、
ワクチン接種後の発症リスクを比較しましたが、
そのリスクは未接種の0.81から0.91倍で、
ワクチン接種と関連した、
有意な増加は認められませんでした。

確かに事例の取り方によっては、
インフルエンザワクチンと血小板減少症との間には、
関連が認められるのですが、
ワクチン接種の時期は、
他のウイルス感染の流行時期でもあり、
厳密な検証においては、
明確にワクチンが関連すると判断される血小板減少症は、
それほど多いものではないようです。

つまり、感染やワクチンなど、
多くの抗原刺激で血小板減少症は発症する可能性があり、
インフルエンザワクチン接種もその刺激の1つですが、
他の抗原刺激と比較して、
明らかにその危険性が高い、
というようなものではないと理解しておくのが、
現状では妥当な判断だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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中年期の歩数と生命予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療や事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら
歩数と生命予後.jpg
JAMA Network Open誌に、
2021年9月3日ウェブ掲載された、
中年期の歩数が生命予後に与える影響についての論文です。

健康のためにはよく歩くのが良い、
というのは健康の専門家かそうでないかに関わらず、
多くの人が言っていることです。

最近ではスマホやアップルウォッチなどの、
所謂ウェアラブル端末が普及して、
簡単に毎日の歩数が計れるようになり、
よりその健康効果が一般に広まりを見せています。

そこで問題となるのは目標とするべき歩数です。

馴染みのあるのが1日1万歩歩きましょう、という基準で、
皆さんも何度もお聞きになったことがあると思います。

海外たとえばアメリカにおいても同様の基準がポピュラーで、
意外にもその元になっているのは、
日本の万歩計の会社の宣伝にあったようです。

ただ、実際にはその根拠は、
あまり精度の高い研究に裏付けられたものではありません。

最近の研究結果は2019年に海外で発表されたものでも、
日本の中之条研究の報告においても、
もう少し少ない1日7000から8000歩程度が、
最も健康への有効性が高い、
という結果になっています。
更に最近指摘されることが多いのが歩行の速度で、
日本の研究では20分程度の「早歩き」を入れると、
より効果が高いというデータが得られていました。

ただ、こうしたデータの多くは、高齢者がその対象となっていて、
心血管疾患などの病気の予防効果が、
健康効果の主体として検証されていました。

それでは、もっと年齢の若い中年の時期に歩くことの、
長期的な生命予後への影響はどうなのでしょうか?

今回の研究はアメリカで施行された、
虚血性心疾患のリスクについての大規模な疫学研究のデータを活用して、
中年期の歩数や歩行の速さと、
生命予後との関連を検証しているものです。

38から50歳の2110名の一般住民を、
平均で10.8年という長期間観察したところ、
1日7000歩未満しか歩いていない人と比較して、
1日7000から9999歩歩いている人は、
観察期間中の総死亡のリスクが、
72%(95%CI:0.15から0.54)有意に低下していました。
1日1万歩以上歩いている人では、
55%(95%CI:0.25から0.81)の総死亡リスクの低下が認められました。
1分間に100歩以上歩くような早歩きをしても、
そうでない場合と比較して総死亡のリスクには変わりはありませんでした。

このように、
中年期の歩数が7000歩を超えることで、
その後10年の早期死亡のリスクの低下が確認されました。
その一方で1万歩を超える歩行は、
7000歩から9999歩の歩行を超えるような効果はなく、
早歩きをしても、
明確な死亡リスクの差は認められませんでした。

これは勿論体力を付けることなどとは、
全く別の視点からの分析ですが、
中年の時期に7000歩から1万歩を超えないくらいの歩数を確保することは、
その後10年の早期死亡の予防に、
かなりの効果が期待出来るという言い方はして間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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