SSブログ

免疫性血小板減少症とインフルエンザワクチン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザワクチンと血小板減少.jpg
2022年4月のJAMA Internal Medicine誌に掲載されたレターですが、
インフルエンザワクチン接種後の血小板減少の頻度についての検証です。

免疫性血小板減少症(Immune Thrombocytopenia)というのは、
血小板に対する自己抗体によって、
血液中の血小板が減少する病気のことで、
僕が大学で習った時には、
特発性血小板減少性紫斑病と呼ばれていましたが、
今はこのように名前が変わっています。

血小板に対する自己抗体が、
何故産生されるのかは不明ですが、
この病気はウイルス感染やワクチン接種後に発症することが多く、
ワクチンでは特にインフルエンザワクチンでの、
発症事例が多く報告されています。

ドイツの疫学データでは、
インフルエンザワクチン接種後の免疫性血小板減少症は、
未接種と比較して3.8倍リスクが増加した、
というように報告されています。
その一方で、特にリスク増加は見られなかった、
と言う報告も複数存在しています。

今回の検証はフランスの医療統計を解析したもので、
2009年から2018年における65歳以上の、
ほぼ全ての事例が包括されています。
年齢が65歳以上となっているのは、
フランスではその年齢層が、
インフルエンザワクチン推奨となっているためです。

トータルで4394例の免疫性血小板減少症が診断されており、
そのうちの3245例は、
少なくとも1回のインフルエンザワクチン接種を経験しています。
ここでワクチン接種後6週間以内の発症を、
ワクチンとの関連性が否定出来ないとすると、
7.1%に当たる231例がその時期に発症しています。

複数の統計手法により、
インフルエンザワクチン未接種と比較して、
ワクチン接種後の発症リスクを比較しましたが、
そのリスクは未接種の0.81から0.91倍で、
ワクチン接種と関連した、
有意な増加は認められませんでした。

確かに事例の取り方によっては、
インフルエンザワクチンと血小板減少症との間には、
関連が認められるのですが、
ワクチン接種の時期は、
他のウイルス感染の流行時期でもあり、
厳密な検証においては、
明確にワクチンが関連すると判断される血小板減少症は、
それほど多いものではないようです。

つまり、感染やワクチンなど、
多くの抗原刺激で血小板減少症は発症する可能性があり、
インフルエンザワクチン接種もその刺激の1つですが、
他の抗原刺激と比較して、
明らかにその危険性が高い、
というようなものではないと理解しておくのが、
現状では妥当な判断だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0)