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鉄欠乏性貧血へのプライマリケアの対応 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
鉄欠乏性貧血の診断.jpg
JAMA Network Open誌に、
2021年10月1日ウェブ掲載された、
鉄欠乏性貧血のプライマリケアでの診断についての論文です。

鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍の、
早期の兆候の1つとして認識されています。
ただ、プライマリケアにおいて、
必ず検査をするような疾患ではなく、
その二次検査の基準も多くの学会や専門機関が独自に作成しているので、
必ずしも統一性がなく、
そのため医師の判断も分かれるところがあるのが実際です。

今回の研究はアメリカにおいて、
プライマリケアに携わる医師325名にアンケート調査を行い、
通常の診療で鉄欠乏性貧血の検査をどのように行い、
どのように診断し、二次検査を行うのかを集計しています。

その結果、
貧血のスクリーニングを施行していたのは、
全体の76.9%に当たる250名でした。
鉄欠乏性貧血の診断は、
貯蔵鉄の指標であるフェリチン値と、
トランスフェリン飽和度で行うのがアメリカの標準的考え方ですが、
個々の数字を提示して診断を求める質問において、
最も正解率が低かったのは、
フェリチン値が40ng/mLとやや低めのレベルで、
トランスフェリン飽和度が2%と低下していた場合で、
フェリチンは炎症などでも上昇するので、
トランスフェリン飽和度から鉄欠乏性貧血と診断して問題ないのですが、
26.5%に当たる86名のプライマリケアの医師は、
これは鉄欠乏性貧血ではない、と、
誤った診断を下していました。

65歳以上で初めて鉄欠乏性貧血が診断された場合、
上記論文の著者らの見解では、
上部下部両方の内視鏡検査を行うことが適切な対応ですが、
それが適切と回答した医師は、
女性の場合54.5%、男性の場合55.1%でした。

上記分の著者らの解析としては、
プライマリケアの医師はスクリーニングの検査は、
やや過剰に行う傾向があるが、
その診断は適切ではない場合があり、
内視鏡検査は実際にはもっと施行されるべきであるのに、
医師の判断で施行されないケースが多い、
という結論になっています。

プライマリケアの医師の端くれとしては、
かなり耳の痛い指摘が多いのですが、
その通り機械的に処理するのが正解なのかと、
疑問に思うところもあります。
ただ、良くも悪くもこうした一般的な病気の診断と原因検索のアルゴリズムは、
近い将来AI頼みに移行してゆくようには思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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