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「犬王」 [映画]

こんにちは
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
犬王.jpg
古川日出男さんの小説をもとにして、
湯浅政明監督がアニメ映画を作りました。

室町時代に実在した能楽師で鬼才とも言われた犬王を、
異形の肉体を持つ若者として描いて、
友魚という盲目の琵琶法師の少年と共に、
全く新しい音楽を創造する友情と夢と挫折と怨念の物語が、
アニメならでの自由自在の映像表現で、
映像詩のように描かれた意欲作です。

これはひょっとしたら傑作なのかしらと思い、
結構期待して観に行ったのですが、
映画館は閑散としていたので、おやおやと思い、
観てみるとかなり微妙でした。

映像のクオリティはとても高いですよね。
それも、日本のアニメというより、
東欧の神秘的なアニメーションという感じのタッチです。

ただ、多くの人が言っていることですが、
室町時代の話なのに、犬王の音楽がロックで、
クライマックスの楽曲はもろクイーンというのが、
矢張りちょっと変梃りんなんですよね。

これはね、世界観として、
能楽師の対決をポップスターの対決として描く、
ということならいいんですよね。
たとえば、「グレーテストショーマン」の音楽は、
設定当時の音楽では全くないですし、
「ムーランルージュ」は現代のポップスが流れますが、
それはそれで音楽トータルとしては、
時代設定は滅茶苦茶でも、
統一感があるからそれでいいんですよね。
でも、この映画は犬王以外の音楽は、
割とその通りの能楽や琵琶法師の音曲が使われているんですね。
それなのに犬王の音楽だけが、
ロックになっているというところがおかしいのです。
とてもそれでは能楽師同士の対決、
ということにはならないのがおかしいのです。

犬王のキャラも何処か変なんですね。
能楽師の父親が呪いの仮面と契約して、
息子の犬王の身体を悪魔に売り渡してしまうので、
異形の姿で生まれて来てしまうのですね。
それが徐々に人間の姿に、
能楽を学ぶに連れて変貌してゆくのですが、
これ、設定は明らかに「どろろ」なんですね。
そういうお化け物語のような設定なのに、
途中からは普通の芸能ものになってゆくんですね。
観ている側としては、
途中で作品の根幹の部分がすり替わってしまうようで、
とても落ち着かない気分になるんですね。
普通の人間になってしまった犬王が、
割と淡泊にあっけらかんとして描かれているので、
更に釈然としない感じがするのです。

平家の怨霊の話があって、
亡霊みたいなものは沢山出て来るのですが、
呪いの仮面の話もあるので、
異なるベクトルの超常現象があって、
その相互の関連も不明なので、
話がゴタゴタなんですね。
琵琶法師の父親の復讐の話はどうなったの、
というように、
話の交通整理が出来ていないという印象です。

そんな訳で今一つではあったのですが、
カルト的な魅力もある映画であることは間違いがなく、
ブルーレイ化されたらエンドレスで、
作業中に流しておくと結構快適な気分になるような、
そんな1本ではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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