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テストステロンと心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
テストステロン治療と心血管疾患リスク.jpg
Lancet Healthy Longevity誌に、
2022年6月1日ウェブ掲載された、
男性ホルモン治療と心血管疾患リスクについての論文です。

男性ホルモンであるテストステロンは、
男性の性機能や筋肉などの体力の維持に必要なホルモンで、
その高度の欠乏による性腺機能低下症では、
性欲低下や筋萎縮、骨粗鬆症などが起こり、
生活の質の低下に至ります。

ただ、男性ホルモンと心血管疾患との関連については、
相反する知見があり一定した結論に至っていません。
男性ホルモンは内臓脂肪を減少させてインスリン抵抗性を改善しますから、
その意味では心血管疾患のリスクの低下に結び付きそうです。
その一方で男性ホルモンによる治療を行なうと、
血液の比重は増加し、
善玉コレステロールと呼ばれることのある、
HDLコレステロールは低下し、
心血管疾患のリスクも増加したとする、
臨床データも報告されています。

男性ホルモンの使用は、
男性更年期と呼ばれるような、
比較的軽度の男性ホルモンの低下においても、
最近は行なわれることが多く、
その有効性が指摘されることがある一方で、
心血管疾患のリスクが危惧されることもあります。

今回の研究は、
これまでの主な臨床試験データを、
まとめて解析したメタ解析とシステマティックレビューですが、
これまでの35の精度の高い臨床試験に含まれる、
5601名のデータをまとめて解析したところ、
平均で9.5ヶ月の観察期間における心血管疾患のリスクには、
男性ホルモン治療群と偽薬群との間で、
有意な差は認められませんでした。

このように、
今回のメタ解析においては、
1年未満くらいの期間における心血管疾患リスクを、
男性ホルモン治療が増加させることはありませんでした。

ただ、これは敢くまで短期の結果で、
男性ホルモンと心血管疾患との関連についての、
長期の影響はまだ不明だということは、
男性ホルモン治療を受けるに当たって、
押さえて置かなければいけないポイントではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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