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飲み薬でインスリン、は可能となるか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SOMAの論文.jpg
2019年のScience誌に掲載された、
これまで注射でしか使用出来なかった薬を、
飲み薬で可能とする器具についての論文です。

薬というのは色々は方法で使用されますが、
矢張り一番簡単で馴染みがあるのは、
錠剤や粉などの形で口から飲み込む、
内服というタイプの薬です。

しかし、たとえば糖尿病の治療薬では、
飲み薬で使用出来るものがある一方、
インスリンのように、
注射でなければ使用出来ないものもあります。

何故インスリンが注射でしか使用出来ないのかと言うと、
アミノ酸が幾つかくっついただけの構造をしているので、
飲み薬の形で使用すると、
消化酵素などの働きで簡単に分解されてしまい、
そのままの形で血液の中に入ることが出来ないからです。

それでは、こうしたすぐに分解されてしまう成分を、
飲み薬の形で、
そのまま血液に届けるような方法はないのでしょうか?

色々な方法が考案はされていますが、
まだ決め手となるものはありません。

今回の開発品は数ミリの小さなカプセルで、
中に薬が入っていて、
それが胃の粘膜に結合することにより、
薬剤を直接血液に届けることを可能としたものです。

その解説記事にある図がこちらです。
SOMAの図.jpg

このような小さな針とスプリングが内臓されたカプセルを、
口から飲み込むと、
蠕動運動で自然と胃の内側に装着され、
そこで内側から針が出て、
それを通して粘膜筋層に薬剤が注入されます。
そして一定の時間が経つと自然にカプセルは粘膜から外れ、
そのまま便に交じって排泄されるのです。

インスリンを装填したカプセルでの実験では、
ラットや豚において、
皮下注射でインスリンを使用するのとほぼ同等の効果が、
カプセルを飲み込むことで達成されました。

これは人間での検証はまだなので、
すぐに実用化されるという段階ではありません。

原理的にも食道や他の場所で引っ掛かったらどうするのかしら、
など気になる点はあります。

それでも今後を期待させる発明であることは確かで、
研究の進捗やその発表を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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