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コーヒーとお茶の健康効果の差(イランの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーとお茶の比較.jpg
2019年のNutrition & Metabolism誌に掲載された、
コーヒーとお茶の健康効果を比較したイラン発の論文です。

コーヒーを1日3から4杯くらいまでの範囲で飲む習慣が、
健康に概ね良い影響をもたらし、
生命予後や心血管疾患リスクにも良い影響を与えることは、
多くの国内外の疫学データにより、
ほぼ確定した事実です。

ただ、その原因が何であるかについては、
明確な結論が得られていません。

コーヒーに含まれている生理活性物質では、
カフェインがその代表です。

従って、1つの仮説としては、
適度にカフェインを摂取するという習慣が、
メタボなどを予防して生命予後にも良い影響を与える、
という推測が可能です。

仮にそうであるとすると、
同じようにカフェインを多く含む飲み物である、
緑茶や紅茶などのお茶でも、
同じような健康効果があっておかしくはありません。

実際お茶の摂取量が多いことも、
コーヒーと同じような健康効果があっておかしくはありません。

実際にお茶の摂取量が多いことで、
同様の健康効果が見られたとする報告は複数存在しています。
しかし、コーヒーと比較するとそのデータの精度にはやや問題があり、
関連がないという報告もあってその評価はまだ一定していません。

今回の研究は、
概ねコーヒーよりお茶を多く飲む地域であるイランのもので、
心血管疾患に関わる別個の疫学データを解析することにより、
お茶とコーヒーの摂取量と心血管疾患リスクとの関連を検証しています。

15000人余りの住民を中間値で6年観察した結果として、
お茶の摂取量が1日250ミリリットル未満と比較して、
1日750ミリリットルを超えて飲んでいると、
心血管疾患のリスクは2.45倍(95%CI: 1.40から4.29)、
有意に増加していました。

これをカフェインの摂取量で見てみると、
1日60.25ミリグラム未満(コーヒー1杯分くらい)と比較して、
1日1514ミリグラムを超える摂取量では、
心血管疾患のリスクは2.22倍(95%CI: 1.23から4.01)と、
有意に増加していました。

その一方でコーヒーの摂取量においては、
飲まない場合と比較して飲む習慣のある人は、
心血管疾患のリスクが43%(95%CI: 0.36から0.91)、
こちらは有意に低下していました。

コーヒーは心血管疾患のリスクを低下させるものの、
お茶はむしろ増加させ、
それはカフェインの増加とほぼ一致している、
という意外な結果です。

この現象をどう考えるかは難しいところで、
イランでのお茶は紅茶が主で、
そこに砂糖や香辛料、乳製品などを入れて飲むことが多いので、
それが影響している可能性は否定出来ません。

ここでリスクが高くなっているカフェインの摂取量は、
通常のコーヒーであれば20杯分以上ですからかなり多く、
このデータはかなり過量にカフェインを摂取した、
特殊な状況を反映しているようにも思われます。

いずれにしてもカフェインの1日の上限は、
矢張り500ミリグラム程度と考えるのが現状では適切であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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