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低糖質ダイエットと心房細動リスクとの関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは本日より通常通りの診療に戻ります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
低糖質ダイエットと心房細動リスク.jpg
2019年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
糖質制限のダイエットと心房細動という不整脈との関連についての論文です。

2018年のLancet Public Health誌に掲載された、
食事の糖質の比率と生命予後との関連についての論文です。

少なくとも短期的には、
低糖質のダイエットが、
体重の減少や血糖値の低下などにおいて、
良い影響を与えることは間違いがありません。

ただ、その長期的な影響については、
問題なく持続可能という意見がある一方で、
長期継続することはリスクがある、
という報告も複数見られます。

問題は糖質制限に伴い、
増加する蛋白質のカロリーと、
増加する動物性脂質と植物性脂質のカロリーとの、
バランスをどう考えるかという点にあります。

2017年のPURE研究という大規模疫学データの解析では、
カロリーにおける糖質の比率が高いほど、
総死亡のリスクは高くなっていましたが、
心血管疾患を発症するリスクや心血管疾患による死亡リスクについては、
そうした関連は認められませんでした。

2018年のLancet Public Health誌に掲載された、
大規模な疫学データとメタ解析を併用した論文では、
総カロリーにおける糖質の比率が、
50から55%が最も総死亡のリスクが低く、
糖質のカロリーが40%未満であるか、
70%を超えていると、
有意に総死亡のリスクが増加することが確認されました。

こうしたデータは食事の内容を細かく比較したものではないので、
糖質制限の全てにそうしたリスクがある、
というようには言えませんが、
一般の方があまり知識の裏打ちなく行うのであれば、
カロリーの40%を切るような糖質制限は、
生命予後に長期的に悪影響を与える可能性がある、
というようには考えておいた方が良さそうです。

今回のデータはこの2018年論文の元になっている、
ARICと名付けられたアメリカの一般住民13385名の疫学データのサブ解析で、
新規の心房細動という不整脈の発症リスクと、
カロリーに占める糖質量との関連を見たものです。

その結果、
カロリーに占める糖質の割合を4つの群に分けて見ると、
最も糖質の比率が低い群(平均で37.2%)と比較して、
最も糖質の比率が高い群(平均で60.8%)では、
心房細動の発症リスクは36%(95%CI: 0.49から0.84)
有意に低下していました。

つまり、この範囲においては、
糖質が低いことが心房細動発症リスクの増加に繋がると、
言っても良いような結果となっています。
このリスクの増加は、
糖質の低下に伴って増加した、
脂質や蛋白質の組成にはよらない変化でした。

このように今回の疫学データの解析では、
糖質制限が心房細動のの新規発症リスクの増加と関連していたのですが、
この問題はより詳細な検証が必要であると思いますし、
また別の疫学データにおいても、
同様の検証が積み重ねられることによって、
心血管疾患のリスクと糖質制限との関連が、
より明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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