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コーヒーによる脈拍低下作用 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーと脈拍.jpg
2019年のHeart and Vessels誌に掲載された、
コーヒーの脈拍への影響についての論文です。

コーヒーの健康効果については、
世界中の大規模疫学データにおいて、
総死亡のリスクや心血管疾患のリスクを低下させる、
と言う点においてはその結果はほぼ一致しています。

この意味ではコーヒーの健康効果は、
ほぼ実証されたと言って良いのです。

ただ、それではコーヒーのどの成分が、
その健康効果の原因になっているのか、
という点についてはまだ明確な結論が出ていません。

その候補の1つはカフェインですが、
カフェインやコーヒー以外にも、
緑茶や紅茶などにも含まれているの対して、
同じ量のカフェインの摂取で比較しても、
コーヒーと同じような効果が、
お茶では得られていないと言う点が、
疑問として残るのです。

心血管疾患のリスクの1つとして脈拍数があります。

これまでにも何度かご紹介しているように、
安静時の脈拍数が早い(概ね1分間に75回以上)と、
高血圧や心血管疾患のリスクが高まることが報告されています。

それでは、コーヒーは脈拍にどのような影響を与えるのでしょうか?

今回の研究は久留米大学医学部の研究グループによるもので、
世界7カ国共同研究という疫学研究の日本での対象地である、
久留米市田主丸町(たぬしまるまち)の住民データを活用して、
コーヒーの摂取量と生命予後、そして脈拍数との関連を検証しています。

筆頭筆者の方の名前が、
Yume Nohara-Shitamaと書かれているので、
「ゆめ、のはら、したま?」
これは何かペンネームのようなものなのかしら、
とても人の名前のようにも思えないぞ、
と思ったのですが、
ちゃんとした人の名前でした。
ご興味のある方はお調べ下さい。

検診を受けた40歳以上の町民1902人(町の人口が3463人)
を対象として15年の経過観察を行った結果、
観察期間中に343名が死亡をされました。
ここでコーヒーの1日摂取量を、
1日0から10ミリリットルから1日151ミリリットル以上の4群に分けて比較したところ、
総死亡のリスクはコーヒーの摂取量が最も少ない群と比較して、
多い群では有意に低下していました。

コーヒーの生命予後改善効果が、
ここでも確認されたことになります。

ここでのコーヒーの摂取量と安静時脈拍数との関係をみてみると、
コーヒーの摂取量が多いほど脈拍数は低下していました。

そして、
コーヒーの摂取量が最も少ない群では、
脈拍が70回を超える群では55以下の群と比較して、
総死亡のリスクは2倍以上となっていましたが、
コーヒーの摂取量の多い群では、
脈拍と死亡リスクとのそうした関連は認められませんでした。

要するにコーヒーによる脈拍数の低下が、
高血圧や心血管疾患のリスクを下げ、
そのことによって死亡リスクの低下に繋がっていることを、
想定させる結果です。

それでは、何故コーヒーで脈拍数が低下するのでしょうか?

コーヒーはカフェインを含んでいて、
カフェインには交感神経の刺激作用がありますから、
その点だけを考えると、
脈拍はむしろ多くなっておかしくはありません。

ただ、これは敢くまで短期の効果で、
長期間カフェインを持続的に摂取すると、
むしろ脈拍は低下するという可能性があります。
また、コーヒーに含まれるポリフェノールの代表であるクロロゲン酸が、
脈拍の低下に結び付いているという可能性も、
上記文献の考察には記載されています。

このように、
意外にもコーヒーを飲んだ方が脈拍は低下しており、
それがコーヒーの健康効果にも、
関連している可能性がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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