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アルコールとタバコの癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコールと癌リスク.jpg
2019年のBMC Public Health誌に掲載された、
アルコールとタバコの癌リスクを、
男女で比較した、
一般向けとしては受けそうな内容の論文です。

タバコが食道癌や肺癌など、
多くの癌の発症リスクであることは、
一般の方にも広く知られている事実です。
上記文献の記載によれば、
癌による死亡の22%は、
タバコが原因と推定されるそうです。

一方でアルコールについては、
適正な範囲の飲酒習慣は、
健康を大きく害することはない、
という考え方が一般的です。
その適正量にも色々な意見がありますが、
概ね1日に20グラム以下のアルコールであれば、
大きな問題は生じないと言って良いと思います。

ただし、癌についてはそのニュアンスは少し異なります。
アルコールに明確な関連のある癌のうち、
喉頭癌、食道癌、乳癌などについては、
より少ないアルコール量でも、
そのリスクの増加に繋がるというデータが存在しています。

今回の研究はイギリスの疫学データを元にして、
アルコールとタバコの癌リスクに与える影響を、
一般への啓蒙目的に算出しているものです。

その結果、
1週間にボトル1本のワインを飲むと、
その生涯における癌発症リスクは、
絶対リスクで男性では1.0%、女性では1.4%増加すると算出されました。

この男女差は、
主に乳癌のリスクが絶対リスクで0.8%増加することから、
生じていました。

そして、
1週間にボトル1本のワインを飲むことの癌発症リスクは、
男性では1週間に5本の喫煙に相当し、
女性では1週間に10本の喫煙に相当すると算出されました。

これはかなり単純化されたものなので、
リスクを分かり易く示すための目安に過ぎませんが、
女性の飲酒のリスクに一般の警鐘を鳴らすという意味で、
一定の意義があるものではないかと思います。

アルコールも時には、
タバコに匹敵するリスクになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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